著者:鈴村智久
ページ数:269

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【内容紹介】

「あたかも、ひとはこれまで常に、そうとは知らずに映画を作ってきたかのようだ…」
――ベルナール・スティグレールが『技術と時間』でさり気なく綴ったこの言葉を核にして、ヨーロッパを中心に78本の恋愛映画をひとつの「生きられた実在」として読む評論集。
イザベル・アジャーニの演技における「憑依」の問題を筆頭に、カトリーヌ・ドヌーヴ、アラン・ドロン、ジャン=ルイ・トランテニャン、レア・セドゥといった女優・俳優陣から、ジェームズ・アイヴォリー、フランコ・ゼフィレッリ、ミケランジェロ・アントニオーニ、レオス・カラックスにまで至る恋愛映画の名作に触れる。(装幀:門倉ユカ)

【目次】

第一部 女優・俳優別セレクション

第一章 イザベル・アジャーニ

・精神の黄昏――フランソワ・トリュフォー『アデルの恋の物語』
・憑依と燃焼――アンジェイ・ズラウスキー『ポゼッション』
・マルグリット・ド・ヴァロワの悲劇――パトリス・シェロー『王妃マルゴ』
・破滅的な愛のかたち――ブリュノ・ニュイッテン『カミーユ・クローデル』

第二章 カトリーヌ・ドヌーヴ

・パリジェンヌたちの恋の行方――マルク・アングレ他『パリジェンヌ』
・愛の逃避行――フランソワ・トリュフォー『暗くなるまでこの恋を』
・存在論的孤独――ロマン・ポランスキー『反撥』
・「夢」の「現実」への貫入――ルイス・ブニュエル『昼顔』
・今そこにはいない家族について――アルノー・デプレシャン『クリスマス・ストーリー』

第三章 レア・セドゥ

・ガラス仕掛けの新婚生活――アモス・ギタイ『幻の薔薇』
・アデルのハートはブルーじゃない――アブデラティフ・ケシシュ『アデル、ブルーは熱い色』
・貧しい雪国で生きる少年と若き母の絆――ウルスラ・メイエ『シモンの空』

第四章 アラン・ドロン

・愛とヴァニタス――ミケランジェロ・アントニオーニ『太陽はひとりぼっち』
・真夏の強烈な生の躍動――ルネ・クレマン『太陽がいっぱい』
・タンクレディ、あるいはファルコネーリ公爵家の「亡霊」――ルキノ・ヴィスコンティ『山猫』

第五章 ジャン=ルイ・トランテニャン

・愛と悲哀の海ドーヴィル――クロード・ルルーシュ『男と女』
・カトリックであることの孤独――エリック・ロメール『モード家の一夜』
・ジャズ、あるいは恋愛至上主義――ロジェ・ヴァディム『スウェーデンの城』
・「鳩」の象徴的表現について――ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』

第二部 監督別セレクション

第一章 ジェームズ・アイヴォリー 

・ダニエル・デイ・ルイスにおけるノブレス・オブリーシュ――ジェームズ・アイヴォリー『眺めのいい部屋』
・なぜこれほど「ギリシア人の悪習」は美しいのか?――ジェームズ・アイヴォリー『モーリス』
・紳士の作法――ジェームズ・アイヴォリー『日の名残り』

第二章 フランコ・ゼフィレッリ

・「薔薇の名を変えても甘い香りに変わりはない」――フランコ・ゼフィレッリ『ロミオとジュリエット』
・小鳥の洗礼――フランコ・ゼフィレッリ『ブラザー・サン・シスター・ムーン』
・ジェーンはいかに伯爵の心を溶かしたか――フランコ・ゼフィレッリ『ジェーン・エア』

第三章 ミケランジェロ・アントニオーニ

・都市からの「逃走」――ミケランジェロ・アントニオーニ『砂丘』
・眼差しとしての愛のかたち――ミケランジェロ・アントニオーニ『愛のめぐりあい』
・海辺の少女は何を見たのか?――ミケランジェロ・アントニオーニ『赤い砂漠』

第四章 レオス・カラックス

・なぜ二人は沈黙するのか――レオス・カラックス『ボーイ・ミーツ・ガール』
・幻の「もうひとつの結末案」――レオス・カラックス『ポンヌフの恋人』
・ピエールにおけるメタバシス――レオス・カラックス『ポーラX』

第三部 その他の恋愛映画

第一章「一途な愛」

・忘れられない最愛のひとの記憶――クシシュトフ・キェシロフスキ『終わりなし』
・「眠る民」になるための二つの方法――フィリップ・ガレル『愛の残像』
・二人の姉妹をめぐる恋の三角関係――フランソワ・トリュフォー『恋のエチュード』
・互いの傷に巻かれる包帯――ファティ・アーキン『愛より強く』
・恋と芸術のジレンマ――マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー『赤い靴』
・遊び心の効いたヌーヴェル・ヴァーグの恋愛コメディ――リュック・ムレ『カップルの解剖学』
・二人はいつか再びあの夏の故郷に還ってくる――ヤツェク・ボルツフ『愛の原罪』
・夫婦愛の行末――デレク・シアンフランス『ブルーバレンタイン』
・北極圏の森の小屋で恋人を待ち続ける女――フリオ・メデム『アナとオットー』
・《トスカーナのモナリザ》の微笑――アッバス・キアロスタミ『トスカーナの贋作』
・終わりなき対話、そのエレガンス――リチャード・リンクレイター『ビフォア・サンライズ』
・映像における「意識の流れ」――リチャード・リンクレイター『ビフォア・サンセット』
・あの眩しい陽光を浴びながら君は窓辺で髪をとく――ピーター・ウェーバー『真珠の耳飾りの少女』
・ 一つの詩のスフィアのように――スティーブン・ダルドリー『愛を読むひと』
・奇蹟としか表現できないような何か――ヤノット・シュワルツ『ある日どこかで』
・「X卿」との駆け落ち――ビリー・ワイルダー『あなただけ今晩は』
・「愛」の予定調和について――ニック・カサヴェテス『きみに読む物語』
・無人島での愛の結末――ガイ・リッチー『スウェプト・アウェイ』
・妻に尽くしたいタイプ――ルイス・マンドーキ『男が女を愛する時』
・愛のアレゴリー――ロマン・ポランスキー『赤い航路』
・繊細な皮膜、審美的な埃――マックス・オフュルス『輪舞』
・なぜジェイムズは映画化されるのか?――ジェーン・カンピオン『ある貴婦人の肖像』

第二章「昼下がりの情事」

・「不倫」の本質とは何なのか――ジャン=パスカル・アトゥ『待つ女』
・倦怠期についての省察――フィリップ・ガレル『灼熱の肌』
・n度目の情事にまつわるバロック的イリュージョニズム――クリストファー・ボー『恋に落ちる確率』
・捏造されたセックス――アンヌ・フォンテーヌ『恍惚』
・どのようにして汗を流すべきか?――ハンナ・フィデル『女教師』
・半透明化すること、性的機械になること――スティーヴ・マックイーン『シェイム』
・エクスタシーについての省察――シャイアン・キャロン『バスティーユ』
・パリで生きる性依存症の少女たちの孤独――M・ズモウスカ『ラヴァーズ・ダイアリー』
・会議中の「ロココ的落描き」の謎――ルイ・マル『ダメージ』
・ 追い詰められる男、秘密を共有する女――カトリーヌ・コルシニ『黒いスーツを着た男』
・フランシス・ベーコンへの不穏なるオマージュ――ベルナルド・ベルトルッチ『ラストタンゴ・イン・パリ』
・権力への意志とエロティシズム――デクラン・ドネラン、ニック・オーメロッド『ベラミ』
・社長夫人の恐ろしい日常――ロベルト・ロッセリーニ『不安』

第三章「恋と哲学」

・スタイナーの死――フェデリコ・フェリーニ『甘い生活』
・ナナ・クランフランケンハイムの憂鬱――ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』
・アシェンバッハとタージオの残り香――トム・フォード『シングルマン』
・スパイの恋愛術――スタンリー・ドーネン『シャレード』
・シャネルを支えた一人の貴族――アンヌ・フォンテーヌ『ココ・アヴァン・シャネル』
・ナイフはなぜ海に沈んだのか?――ロマン・ポランスキー『水の中のナイフ』
・ 漆黒と臙脂――フランシス・フォード・コッポラ『ドラキュラ』
・ 「魔女化」のためのイニシエーション――エヴァ・イオネスコ『ヴィオレッタ』
・プルースト的ナラティブへの新たな挑戦――ラウル・ルイス『ミステリーズ 運命のリスボン』
・足を引っ張る妹と姉の絆――ファビアンヌ・ベルトー『晴れ、ときどきリリー』
・ホテル滞在中の彼の名は「スワン」――ピエール・トレットン『イヴ・サンローラン』

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