著者:大杉 宏美
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「先生、私の残業代は、本当にこれで合っているんですか!?」
「前にいたクリニックではパートの私にも有休があったのに、ここではないんですか!?」
「先生に言われてわざわざ研修を受けたのに、どうして時給が出ないんですか!?」

ああ、そんなに院長先生へ詰め寄らないで。
スタッフさんに責められ、あわてる先生。どうしよう、何と答えてよいか分からない。
「これまでのスタッフは、そんなこと聞いてこなかったよ!」
「昔からそれでやってきたんだし、うちはうち!ごちゃごちゃ言わず働いてよ!」
なんていう心の声は、まさか口に出して言えないし。

残業代の計算、年次有給休暇の管理、どこからどこまでが労働時間で、何に賃金を払わなければいけないのか。「やってはいけない」こととはつゆ知らず、労務管理の間違い・勘違いが放置されているクリニック。実のところ、とても多くお見受けします。

クリニックを開業すると、院長先生は医師でありながら、経営者となります。人を雇用した瞬間から、法律上の義務が発生します。使用者として、労働基準法や労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法など、労働関連法規を守ることが求められます。

ところが、院長先生には日々の診療に加えて集患や財務など、やらなければならないことが盛りだくさん。労務の問題はまたいつか、落ち着いてから。法令違反があっても、スタッフの様子がおかしくても、後回しになりがちです。

放置された労務問題は、火種の残る吸い殻のよう。じわじわと炎を上げずに燃え続け、長い時間を経て一気に発炎します。スタッフが院長先生に感じる、小さな不安。それは数を増やし、大きくなって、いつか炎上するかもしれません。

冒頭のようにスタッフが直接、声を上げてくれるのはまだ良いほうです。本当に怖いのは、声を上げず黙って去っていく人もいるということ。院長先生が気づかないうちに他のスタッフをまとめ上げて一斉離職、なんていうことも珍しくありません。

あなたのクリニックでは、オープニングスタッフが何人残っていらっしゃいますか?

この本では、院長先生が日々の労務管理でやってしまいがちな間違いについて、実際の事例をもとに、「どこがいけないのか」「今後どうすればよいか」を解説していきます。

知らなかったではすまされない、クリニック労務管理「やってはいけない」お話のはじまりです。

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