【無料で読める】チェーホフ『桜の園』の時代性について: 共産主義による芸術座への抑圧と『桜の園』の変容 (Ringrintarobooks)

　当論文「チェーホフ『桜の園』の時代性についてーー共産主義による芸術座への抑圧と『桜の園』の変容」は、チェーホフの『桜の園』が描かれた革命直前と言える時代の時代性について考察するものであり、ロシア史の中でも帝政末期の革命直前と言える時代においてのみ存在し得た稀有な戯曲の演出史である。
　そしてその演出史の変遷においては、ロシア史のみならず人類史上の悲劇ともいえるソ連の共産党支配の一部が見えて来る。

　本論の構成はまず、第一部「革命以前」と「革命以後」に分け、まず第一部第一章ではロシア史的な観点から『桜の園』がロシア史の中でどのような位置にありどのように歴史と時代を反映しているかを示し、次に同第二章では偉大な戯曲作家であり『桜の園』の著者アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフのアイデンティティーの問題と、そこから見えてくる作品との関連性について考察している。この第二章では、作品だけではなくチェーホフ自身がこの時代を象徴する人物であったことが分かるだろう。
　この第一部では特に農奴制の歴史と共に、ロシア革命の発端となった血の日曜日事件とその象徴であるガポン神父に焦点を当てている。
　
　そして次の第二部第一章「共産主義は『桜の園』をどのように扱ったか」は本論において最も重要な章となる。