義清殿異聞

武蔵の国、賀美郡勅使河原住人、勅使河原義清は丹党にその名も知れた武士である。先年大番役の
おり、京で、さるやんごとなき女性に懸想する。幾度かの文のやり取りの後逢瀬を遂げる義清ではあったが、相手よりは阿漕と言われ、所詮はかなわぬ恋とあきらめ身を引くのであった。
はたしてこの一事は北条得宗家の耳に触れ不謹慎と咎められる。そしてこの一件と引換えに、北条
得宗家の政敵、和田三郎を討つ様に命じられる。むしろ和田三郎の剛勇を敬愛していた義清ではあっ
たが、この坂東で生き残る為、仕物にかけて和田三郎を討つ義清ではあったが、これを境に武士としての生活と身分を厭わしく思う様になるのであった。
そうして遂に一日、身分と家を捨て出家となると心を決め、ひとり在所を抜け出してしまうのであったが・・・
過去と未来の因縁の世界を、夫婦を中心に短く戯曲に仕立ててみました、作者の処女戯曲です。どうぞ、ご一読の程お願いいたします。