著者:近藤駿介
ページ数:55

¥360¥0

「はじめに」より

「システムに弱いところがあり、ビットコインがなくなった。ご迷惑を掛け、申し訳ありません」

2014年2月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したインターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の私設取引所を運営するマウント・ゴックス(株式会社MTGOX)のマルク・カルプレス社長は、記者会見の席上、決して流暢ではない日本語でこのように述べ、頭を下げました。

マウント・ゴックスが破綻する前日に、マウント・ゴックスが取引を停止している問題について言及した麻生太郎副総理兼財務相は、「あれは、通貨か。通貨として誰も認めているわけではない」「こんなものは長くは続かないと思っていた。どこかで破綻すると思っていた」と、らしい発言をされました。

しかし、このように文字にしてみると、この麻生財務相の発言は、「仮想通貨ビットコイン」と「私設取引所マウント・ゴックス」を混同したものになっていることが分かります。

ことほど左様に、ビットコインに関する議論は、様々なものがごっちゃにされてしまっており、ただでさえ分かり難いものが、理解不能になりつつあります。

理解を難しくしている一つの要因は、「仮想通貨」という表現です。ネット空間上に存在することを意味する「仮想」という表現が、ネット等の特殊な技術や知識が必要であるかのような印象を与え、「通貨」という表現が、経済学上の難解な理論が必要であるかのような誤解を生んでしまっているように思われます。

しかし、ネット技術や経済学理論からアプローチする限り、ビットコインの問題の本質は理解し難いのではないかと思います。ビットコインを「投資対象」「金融商品」だと単純化して考えた方が、ビットコインの本質に近付けるような気がします。ビットコインを発掘しようとする一部の人を除けば、ビットコインを理解するために、システムや数学的アプローチはそれほど重要ではないのですから。

マウント・ゴックス破綻を受け、政府は、ビットコインは「通貨には該当しない」「有価証券取引にも該当しない」という公式見解を閣議決定しました。

政府がこのような公式見解を出したことで、これまで一般投資家には馴染の薄かったビットコインが、投資家が望むと望まざるに拘らず、勝手に身近な存在になって来る可能性が高まったと思われます。

本著では、政府の公式見解を受けて、「リアル社会」の中で「仮想通貨ビットコイン」の取引がどのような影響を受けるのか、国内の投資家にどのような形で影響が及ぶのか、ビットコインという「モノ」をどのような認識すればいいのか、そして、どのようなルールを設けたらいいのか、等の点について、個人的見解を披露させて頂きます。

馴染の薄い、理解し難い「仮想通貨ビットコイン」と、どのように付き合っていけばいいのか頭を悩ませている方々の、頭の整理に少しでもお役にたてれば幸いです。

【目次】
はじめに
§1.政府の公式見解とその影響
 通貨に該当しない
 消去法で結果として「モノ」という見解を示した政府
 国内投資家とビットコインを繋ぐ二つのルート
 明らかにされた国内ルート
 何の規制・監督を受けずに可能となった「ビットコイン自体の取引」
 「ファンド」を通した投資と、「ビットコイン自体の取引」の大きな違い
 もともと金融商品取引法の規制範囲外である「海外直接取引」
 「ビットコインとは何者なのか」が示されなかったことで生じる「無法地帯」
 そして、投資家はビットコイン「取次業者」の勧誘に晒される
 ビットコインを投資対象とした「海外ファンド」の取り扱い
§2.ビットコインとは何か
 ビットコインの「価値の源泉」と「価値の特徴」
 リアルマネーとビットコインの「価格決定要因」の大きな違い
 ビットコインの「価格変動リスク」は、「毎日がリーマン・ショック」
 「価格変動リスクが高い」こと自体は本質的問題ではない
 杞憂に過ぎない「ビットコイン・マニア」の懸念
 「流通容認すれど監視せず」は行政の無責任
最後に
近藤駿介 プロフィール

シリーズ一覧

  • 同シリーズの電子書籍はありませんでした。

 

  Kindle Unlimitedは、現在30日間無料体験キャンペーンを行っています!

この期間中は料金が980円→0円となるため、この記事で紹介している電子書籍は、すべてこのKindle Unlimited無料体験で読むことが可能です。

Kindle Unlimited 無料体験に登録する