著者:二見龍
ページ数:85

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 師団では、年度計画を隊務運営計画といいます。企業は、売り上げと利益目標を達成することを主目的としますが、師団の隊務運営計画は、いつ如何なる状況にも対応し任務を達成する部隊を育成していくことが目的となります。
 隊務運営計画は、教育訓練主体で作成され、日々の業務は教育訓練が中心となりまわっていきます。陸上自衛隊の第一線部隊は、利益を生み出すのではなく、練度という維持・向上が難しく把握しにくい「生もの」を相手にします。形だけをなぞる訓練や同じことをただ繰り返してコンフォートゾーンから抜け出せない状態だと鮮度が急激に落ちます。そのため、師団長は、隷下部隊(自分の部隊)を練成し、いわゆる「精強な部隊」「任務を必ず達成する部隊」の育成に全精力を注ぎます。
 第3部長は、師団長を誰よりも近くで触れる立ち位置で指示を受けます。練度という捉えどころのない生ものを如何に鍛え上げ向上させるか、師団長の深い思考、高邁な人格、部隊長の人物評価、状況判断を行う姿から、他の人がけっして見ることができない師団長の厳しく孤独で暖かい姿を見ることができる職務です。
 師団は、地域の防衛と災害派遣を担任もしているため、教育訓練の他に日々色々な事柄が飛び込んできます。ヘリコプター同士の夜間衝突事故、戦車の横転事故をはじめとする各種事故、土石流による災害派遣、38トンのマッコウクジラ対処、山火事に至っては、1月から3月の間は毎週発生している日々でした。

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