【無料で読める】中院本流智界略次第

高野山に伝わる中院流の本家である龍光院に相承する中院流は中院本流と呼ばれています。
江戸期の成蓮房真源は「中院流御房明算より師主寛伝に至るまで伝わるところの中院流の本流なり」と述べています。
現在では中院本流を正しく継承しているものは五人にも満たず、極めて貴重な法流です。
この次第は浄厳房日禅の作で、成蓮院真源の中院本流における加行や潅頂などに用いられる「金剛界」の次第です。
中院本流の伝授目録によれば、両界の次第について以下の通りに中院本流では伝承します。
両界　石山
金剛界次第　四巻　石山
両界略次第　中　日禅浄厳房作
両界　宥快和会
金剛界念誦次第　中　智　大門寺本
胎蔵界念誦次第　中　智　大門寺本
中院本流四度口決には、浄厳房製作の次第をもって当流の規模とすることが述べられています。
またこの次第は機根の鈍なる者の用いるものというのは、相承の大事を知らない者たちによる僻事であると述べています。
同流の潅頂両界心要鈔には、以下のように伝授されたと記録されています。
浄厳房製作の両界次第をもって結縁潅頂御修行なり…中略…既に四度にて委細に伝授し訖んぬ云云。
このように、中院本流では本次第をもって加行などを行じていたことが分かります。
なお略次第とは省略の意味ではなく要略の意味であり、最も深秘な次第を意味します。
本書を通じて中院本流の精髄に触れ、再興されるきっかけとなれば幸いです。
※幕末期の写本に基づいているため他の写本と訓点などが異なる場合があることをご了承ください。
なお売り上げの一部は、各種慈善団体および学術研究機関への寄付に充てさせていただいております。