【無料で読める】バセドウ病の食事法＆レシピ: バセドウ病の栄養学と食事法食事量や摂るべき栄養素がわかる

2021年3月5日改定第5版を発行いたしました。お手数をお掛け致しますが再ダウンロードの上、最新版をご覧頂ければ幸いです。

2020年2月23日感染症対策に関する食生活上の注意点について加筆しました。再度ダウンロードをして頂ければ幸いです。

バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が活発化し、心身ともに様々な不調を来たす全身性の疾患です。そのために、バセドウ病を発症された方が感じる症状もまた、実に様々です。バセドウ病との直接的な因果関係が見つからない症状も多く、典型症状とされない症状を訴える方もあり、見逃されがちな疾患の一つです。

バセドウ病の確定診断は甲状腺ホルモン値と抗体を測定することで得られます。バセドウ病の標準治療はほぼ確立していて抗甲状腺薬を服用する治療法によって行われます。甲状腺ホルモンとTSH（甲状腺刺激ホルモン）の値を見ながら、治療薬の増減を決めていきます。このような治療をすれば霧が晴れたかのように全身症状が改善されるかといえばそうではありません。様々な不調が残り、治療の過程でも新たな不調が生じます。

これは、内分泌疾患であるバセドウ病が代謝に深く関わっているからです。バセドウ病を発症すると代謝異常が起こり、全身の栄養不足が発生してしまいます。甲状腺ホルモンは代謝系において三大栄養素の調整を行っているため、甲状腺ホルモン値が大きく変動すると代謝系の異常につながるのです。

バセドウ病によって基礎代謝が活発化すれば、身体を必要以上に働かせることで消耗しやすくなると同時に、多くの栄養素を浪費してしまいます。身体は常に栄養不足の状態にあります。多くの方々が経験するように、治療を始めると今度は基礎代謝が低下して太りやすくなるため、食事量を減らしてしまいます。すると、ここでも食事中の栄養素が足りなくなり、栄養不足はどんどん深刻化していきます。

甲状腺ホルモンはタンパク質、脂質、糖質の三大栄養素を調整しています。そのために、バセドウ病によってこれらの調整がうまくいかなくなると、筋肉が分解され、治療開始後は肝機能障害が起こり、LDLコレステロール値や中性脂肪値が高くなり、高血糖や低血糖の血糖異常が起こりやすくなります。

体重の増加を防ぎながら、栄養不足を解消し、なおかつ消耗した身体を回復させるには、栄養素の強化やバランスの摂り方に工夫が必要です。「バセドウ病にはストレスが良くない」と主治医からアドバイスをもらう方も多いと思いますが、栄養バランスのそぐわない食生活は、身体にとってもっとも大きなストレスの１つです。見逃されがちですが、身体的ストレスは、精神的なストレスと同様にバセドウ病を増悪させます。バセドウ病にはバセドウ病に適した食事療法が必要なのです。

不調の中には栄養不足が原因となるものが数多くあります。バセドウ病の治療を受け順調な経過をたどっていれば、特別な食事療法は不要と言われています。食べてはいけないものもないとされています。基本的にはバランスの良い食事の中で十分なビタミンやミネラルの摂取が推奨されます。しかし、実際にはそれでは体調を良くすることは困難です。手探りでの食生活の見直しでは、バセドウ病の体が必要とする栄養素をしっかり補い、適切なバランスを取り戻すことはできません。栄養や食事療法に関する情報を収集しても、それらがバセドウ病の食事療法として役立つものなのか、ご自分の症状を改善する組み合わせであるのかどうかは分からないのです。

本書は、管理栄養士であり、甲状腺疾患の栄養指導や健康指導学の専門家である著者が、自身のバセドウ病の治療中に、体重増加を抑制しながら不調を取り除くための食事療法を試行錯誤した経験も踏まえたものです。個人的な経験に留まらず、最新の知見に基づく栄養学と予防医学により、バセドウ病を患った多くの方々が経験する不調を少しでも改善し、食事から受けるストレスをなくし、将来に渡って不調の少ない生活を送れるよう、食事療法の基本をまとめています。

不調や心身の不安には、重大な内分泌疾患が隠されていることがしばしば見受けられます。不調や心身の不安をご自身で抱え込まず、心配な症状はどんな小さなものでも看過せず、医師に相談し、しっかり検査をして、適切な治療を受けることが大切です。それと同時に専門的な食事療法を実践し、体重の不要な増加を防ぎ、栄養不足を解消して体調を整え、日常生活をより快適なものにしていって欲しいと願っています。

Acco MUKAWA 略歴：
管理栄養士（日本）健康指導学・健康促進学修士（フランス国立大学大学院）
最新の予防医学や健康科学、栄養学に基づき、スタイリッシュな現代食と健康を両立させる食の提案やメニュー開発を行っている。特に、内分泌系疾患に関する食事療法を総合的な臨床栄養学の見地から提唱している。