著者:勝又公仁彦
ページ数:41

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勝又公仁彦は、夜間の長時間露光による写真作品で知られている。近年では世界各地の都市の稜線を大型カメラで撮影し、横長に切り取ってパノラマのような形式にした「Skyline」のシリーズでも評判となった。

「Hotel Windows」は、世界各地のホテルの部屋から室内と窓越しの夜の光景を撮影したシリーズである。勝又はイタリアに旅行した際、ホテルの部屋から窓越しの光景を撮影した後、部屋がCameraと書いていることに気付く。カメラの語原は、部屋だったのだ。原始的な写真機は、カメラ・オブスキュラ(暗い部屋)と言われ、暗い部屋に針孔を開けて、反対側の壁に逆転した室外の光景を写し出す。

勝又はイタリア旅行をきっかけに「Hotel Windows」のシリーズを開始する。電気を消したホテルの暗い部屋に三脚を立てて、室内と窓越しの夜の光景の両方を捉える。長時間露光によって、夜の街は光り輝き、室内は薄暗く浮かび上がる。その間、30分から6時間程度-。その間、勝又は部屋にはいない。部屋がカメラそのものになるのだ。

「Hotel Windows」において、窓の外の微細な光は、長時間露光によって、層のように積み重ねられ窓自体が発光するモニターのように変化する。それは部屋の中にも光の層が積み重なっていることを表している。その光景は、部屋に眠る我々の無意識に沈殿した景色といえるかもしれない。そして、窓越しの光景の明るさと、室内の暗さの対比は、眠りの中の夢や、情事の痕跡を想起させる。鑑賞者は、人がいない不在の光景に、何かを覗き見ることになるだろう。

2004年から開始されたこのシリーズの撮影地は、日本、米国、イタリア、中国など、十数カ国の計100地域以上及ぶ。今回は、10年間撮りためてきた写真の中から厳選した26点を掲載します。

今回、紙ではなく、画像が発光する電子写真集としてリリースすることで、「Hotel Windows」の「発光する窓」の魅力を引き出すことを試みます。

さらに、寄稿者である、港千尋(写真家・評論家・映像人類学者)は、勝又公仁彦の「Hotels Windows」の魅力を鮮やかな視点で切り取っています。

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