著者:安平雲軒
ページ数:151
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世界経済をコントロールしている人物や組織とは、いったいどこにいる、どんな人なのでしょうか? それは経済大国の首相や大統領、政権を担う政党でもなければ、著名な経済学者、エコノミストでもありません。
「世界を支配しているのは、謎の秘密結社フリーメーソンだ」
「いや、世界に広がったユダヤ人ネットワークでしょう」
そのようなことを熱く語る人々がいます。彼らは世界の陰謀説や闇のネットワーク話が大好きな人たちです。
「じつはヘッジファンドの大物が、世界経済を牛耳っている」
そう指摘する本もたくさん発刊されています。確かに彼らは世界経済、特に金融システムを動かす重要なプレイヤーかもしれません。それでは小国の国家予算にも匹敵する資金を自在に動かすヘッジファンドの、その資金とは、どこから流れてきているのでしょうか? 即答できる人は少ないでしょう。
視点を変えて、政治家やヘッジファンドの大物たちに活動の“軍資金”を提供し、同時に口も出している組織が背後にあると考えたほうが、世界の経済地図はすんなり描けるのではないでしょうか? つまり、プレイヤーを操る組織、人物の動きに目を向けることで、金融システムを動かす大きなメカニズムの骨格が浮き彫りになってくるのです。
アメリカには「彼らの意向を無視すると大統領の首が据え変わる」とされている巨大財閥があります。モルガン、ロックフェラー、メロン、アスター、デュポンなどがそれに該当します。財閥とは、創業一族を核にした企業集団であり、企業グループ、ビッグ・ファミリーとも称されます。そして彼らは日本経済にも多大な影響を及ぼしてきました。
そのアメリカで財閥・大富豪に入る階層の起源は、真っ先に産業革命に成功したヨーロッパ諸国にあります。いち早く資本主義経済の基盤を築いたヨーロッパの先進国の資本家たちは、王室や貴族階層の意向を受けながら、巨大な企業グループを構築してきました。現在の金融システムの土台を築いてきたのも彼らです。そのうちの何名かはやがて新天地、アメリカ合衆国へと移り、あるいは婚姻関係を築いて、アメリカ国内で影響力を及ぼすようになったのです。
そもそも株式や貿易、為替やリスクヘッジといった概念を真っ先につくりだしたのは、ヨーロッパの資本家です。なかでも財閥といわれる、少数の企業集団です。歴史をひもとくと、驚くことに彼らの動向が幕政や明治維新にも影響を与えていたことがわかります。
本書は資本主義経済の発展の歴史をひもとく読み物です。突出した人物や企業グループが行なってきた事業の立ち上げ、投資や買収劇の手法は、現代でもまったく色あせていません。いや、それどころか、混迷する現在だからこそ、先人から学ぶべき点は数多くあるでしょう。
その象徴ともいうべきファミリーが、ヨーロッパのロスチャイルド家です。本書の前半は、「ロスチャイルド家の興亡」を核に構成していきます。ヨーロッパを象徴する財閥といえば、誰もが真っ先にロスチャイルド家の名前を挙げるでしょう。19世紀から20世紀にヨーロッパの政治を金融面から動かした一族は、今日に至るまで数多くの伝説に彩られたファミリーとして君臨しています。しかし彼らは自己宣伝をせず、どこか安全な場所でじっと身をひそめているように思えます。
ロスチャイルド家は、近代の金融業や投資会社の方向性を確立し、さらにレバレッジ(テコの原理)やヘッジファンドの概念をいち早く導入した一族です。さらに現在、世界の金融ネットワークに大きな影響力を及ぼしているユダヤ人の象徴としても見ることができます。
ロスチャイルド家の興亡は、一族の初代であるユダヤ人のマイヤー・アムシェル(1744~1812年)がドイツ・フランクフルトのユダ人街で古銭業を開いたことから始まります。マイヤーの先祖は代々、「赤い盾」(ドイツ語で「ロートシルト」、英語で「ロスチャイルド」と発音)の家紋をつけていたことから、「赤い盾」が同家の屋号になっていました。マイヤーがこれを姓として使ったことから、「ロスチャイルド家」の初代となったのです。そして彼の5人の息子がヨーロッパに散らばり、金融ネットワークを構築していくのです。
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