著者:武藤 洋一
ページ数:54
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IPO(株式の新規公開)への投資が人気です。
証券会社にブックビルしてうまく配分もらえれば、上場日に初値で売るだけでもかなり高い確率で利益とれますし、配分なくても上場直後はパターン化された軽快な値動きをすることが多いので、銘柄選びを間違えなければ、初値で買ってもまだ値上がり益を享受できる機会が多々あります。
上場初日に値がつかなかった人気銘柄は、翌日、即金規制がかかりますが、往々にしてそういう銘柄ほど、初値が高くついた後、買いが買いを呼ぶ形でストップ高したりします。
株式投資の楽しみは、もちろん値上がり益や、配当金、株主優待を得ることにあるわけですが、IPO株については、これらに加えて、値動きが軽いという特性があるため、短期間で結果を出せることも多い、という魅力があります。当然、投資である以上は短期間で大きな損失を被ることもあるので、そうならないよう銘柄選びやロスカット等が重要になってきますが、しかし、「初値買いの〇%抜き」などは、黙って初値を買って、売り注文を出してから数分、うまいくいけば数十秒で約定して利益がとれることも珍しくありません。
これで何回か成功してウマ味を知ってしまうと、つい「自分は相場に向いているんじゃないか?」と勘違いしてしまい、一気に投資金額を増やしたり、〇%の利幅をもっと大きく狙ったりするようになり、そういう調子こいた時に限って大損喰らい、それまで蓄積した利益が吹き飛んでしまうこともあります(筆者も昔よくやらかしました)。
こういうパターンをコツコツドカンと言いますが、ともかくIPOのセカンダリーには依存症、中毒症になりやすい独特の魅力があるのは確かです。
そこで、行き当たりばったりの投資をしないで済むために何が必要か?となると、過去のIPOに毎回同じ金額を、同じ利幅を狙って投資していたら、損益の推移がどうなっていたのか調べてみるシステムトレード的なアプローチではないでしょうか。
というわけで筆者は、今回、IPOのセカンダリー投資術の定番ともいえる、①初値買いの〇%抜き、②即金規制明け狙い、③公募割れ拾い、の3手法について、2001年から直近は2018年4月11日までに新規公開された約1,680銘柄の上場直後の値動きを調べ、①は初値で買って何%上がったところで売るか、上がらない場合はいつ決済するか、②は初値から何%値下がりしてきたところを買うか、買えた場合はいつ決済するか、③は公募価格から何%割れて初値がつく銘柄を買うか、買えた銘柄は何%上がったところで売るか又はいつ決済するか、数字やタイミングの順列組み合わせを網羅する形で条件をいろいろ変化させ、成績がどう変化するかバックテスト検証してみました。
その結果を取りまとめたのが本書の内容となります(35字×28行×約43ページ分)
3手法のうち成績が良かった(と筆者が判断した)条件を組み合わせてトレードしていれば、バックテスト上は17年余で約580銘柄を対象に約690回の取引を行い(同一銘柄が複数手法で対象になるケースがあるため)、勝率57%、累計利益約1,540%(累積損益曲線は表紙埋め込みのとおりです)、PF≒1.58の成果が出たことになっています。
ただし、日足4本値によるバックテストですので、標準的とされる手法がうまく再現できていない部分もあります。例えば、上場直後の値動きが軽い(と言うか要するに「荒い」)IPO銘柄ですので大損しないためには一定幅でロスカットラインを置くのが普通と思いますが、バックテスト上「〇%上がったら利益確定」「×%下がったらロスカット」といった複数のラインを設定して、当日高値、安値がそれぞれのラインを突破していた場合、どちらが先に約定していたのか日足4本値では分からず損益を確定できませんので、バックテスト条件としては「〇%上がったら(下がったら)決済、そこまで上がらなかった(下がらなかった)場合は当日大引け(又は翌日の寄付)で成行決済」という上下どちらかの決済ラインのみ設定のロジックしか検証できていません(分足データとスーパーコンピュータがあれば利確ラインとロスカットラインを併用したロジックも検証できますが)
また、「即金規制明け狙い」については、「後場、特に午後2時台前半に値下がりしてきたところを狙って買え」と言われますが、分足データがないので買い条件に時間帯指定は組み込めていません。そして、さらにそもそも即金規制そのものが、いつから実施されるようになったのか筆者には不明です。JPX(日本取引所)にも問い合わせたものの導入時期については「答えられない」との回答でしたので、バックテスト対象期間の中に実際には即金規制かかってない期間すなわち即金規制(明け)とは関係ない値動きデータが含まれている可能性もあります。
なお、いろいろバックテストしてみる過程で、ほぼ同じトレード数、勝率で利益が倍増、PF値も1.58から2.18に向上する売買手法が見つかりましたので、別途「IPO 初値形成日の買い方・売り方」として、kindle版を追加公開しているほか、これらを合体したソフトカバー本(POD版)も発売しております。
ちなみに、各手法の概要と具体的なバックテスト要領は、次のとおりです。
【1】初値買いの数%抜き
読んで字の如く、初値で買って、その買い値の数%上で指値の売り注文を出し、約定を待ちます。約定しない場合は、当日大引けまたは翌立会日寄付で成行決済します。
◎テスト条件
全銘柄を初値で買い付け、(1)買い値からn%上がったら売る、 (2)当日高値が始値のn%高の水準を上回っていない場合はザラ場では売れなかったことになるので当日大引け(終値)で決済する
【2】即金規制明け狙い
上場初日に買いが注文が殺到して値がつかなかった場合、翌立会日から「即金規制」がかかって買い注文が抑制され、需給の均衡つまり初値形成が促されます。この規制は実際に初値が形成された後も当日の大引けまで続き、翌日から解除されて通常取引に戻りますが、このタイミングを俗に「即金規制明け」と言います。
そこで、翌日に規制解除で再び買い注文が増えて株価が上昇するであろうと予想するのであれば、初値形成日のうちに買っておこう、というのが「即金規制明け狙い」です。
具体的な売買のタイミングについては、裁量判断が大きくなってしまうのですが、標準的な考え方としては、初値は上場日につかなかった超人気株であり、規制下でもその株がどうしても欲しいという投資家は新規に現金を入れてでも買ってくるので高く決まりやすく、そうした買いが一巡してから現金買いの勢いが続かなくなってくる後場にかけて値下がりしやすい、そのタイミングを狙って買い、規制明けのリバウンドに期待する、しかし大引けにかけて同じことを考える先回りの買いが入って値上がりすることもあるので午後2時台前半に安く買って利幅次第では大引けで決済して利益確定する、ということになります。
◎テスト条件
上場初日に買い注文が殺到して値が付かなかった銘柄のみを投資対象とし、2日目(またはそれ以降)についた初値から(1)n%下がったら買う(後場とか、午後2時台前半というような条件は組み込めません)、(2)当日安値が始値のn%安の水準を下回っていない場合は買えなかったことになるので見送り、下回っている場合は買えたものとして(ア)当日大引けで決済する、(イ)翌立会日寄付で決済する
【3】公募割れ拾い
IPO銘柄の中には、数は少ないですが、上場当日に別の人気銘柄の上場が重なって買い資金が向かってこないなどの理由により、本来の実力に比して安く初値が決まってしまうものがあり、中には、ファンダメンタルズ的に見ても十分安い水準に設定されているはずの公募(公開)価格からさらに下で決まってしまう「公募割れ」を起こすものもあります。
「市場は常に正しい」「市場が決めるのが適正株価」とする市場万能主義の立場からは、所詮はそれがその株の実力だ、ということになりますが、公募割れはバーゲンセールと考えるのであれば、安値で拾ってリバウンドに期待するのもアリです。
◎テスト条件
(1)初値が公開価格のn%より安く寄るようだったら初値で買って、当日大引けで決済する
【おことわり】
①古い時期に札幌、福岡等の地方取引所に上場され、その後、上場廃止になったりしている一部の銘柄は、株価データが入手できておらず、検証対象に含まれていません
②「〇%上がったら売る」「×%下がったら買う」という条件は、それぞれ「〇%上の値より当日高値が高い」「×%下の値より当日安値が安い」場合に「売れた」「買えた」とみなしていますが、高安値と指し値が僅差の場合、呼び値の刻み幅により、指し値=高安値となって実際にはワンタッチに終わり約定していないかも知れないケースまで含めて約定したものとして損益が計算されている場合があります
③その他、本書の企画・製作に使用した一切のデータ、計算方法の正確性確保には十分に注意を払っておりますが、本書の一部又は全部に、誤記、不備、遺漏などの不都合がないことを保証するものではありません。万一、本書の一部又は全部に、何らかの誤記、不備、遺漏その他の不都合があった場合でも、筆者は、何人に対しても、返品、返金、損害賠償その他一切の責任を負いません
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