著者:倉本 圭造
ページ数:415

¥1,250¥0

「みんなで豊かになる社会」という、誰しもが否定できない理想はなぜ実現しないのか?

・・・この本は、その「大きな問い」に対して真正面から取り組んで、日本に生きる私たちの未来を切り開いていくヒントにしてもらおうとする本です。

この本の特徴は、以下の3点です。

1・グローバル・ビジネス的な視点だけでなく日本の中小企業の現場におけるコンサルティング体験の「両方」をもとに書かれていること
2・「恵まれた狭い都会のインテリサークル」の外側の現実まで実際に潜り込んで「体験」し、見てきた日本社会の「リアル」からの発想が盛り込まれていること
3・単に「ビジネス」的に狭い視点だけでなく、「学問・思想」的な視野の広がりの中から捉え直す発想で構成されていること

日本に限らず「先進国」で揺るぎなく景気がいい・・・というような国はどこにもなくなってしまっている現在、「みんなで豊かになる」という大きな問題に取り組むには、「ひとつの立場」からの視点では足りません。

なぜなら、この複雑化した社会では、「ひとつの立場」の「逆側にいる人たち」がいて、その「ひとつの立場から見た視点」を全力で否定してくるからです。

単に「政府による再分配を強化しよう」という単純な目標にすら、「逆側にいる人たち」との対話なしに「相手を全否定する論理を振り回してお仲間だけで盛り上がっている」だけでは実現できなくなっています。

そのため、本書の前半では、「いろんな立場の間」で仕事をしてきた私の体験から、「”敵”がわにいる立場の人と、意味のある対話を引き出して物事を前進させていくスキル」としての「メタ正義感覚」という視点を導入します。

同じ社会、同じ会社、同じ家族であるなら「同じ正義」を信じていた時代は終わり、今や「ひとりひとり全然違う正義の基準」を持って生きている時代です。

「国家レベルの政策論争」や「会社の方針決定」といったレベルだけでなく、夫婦間の意味のあるコミュニケーションといった「ナマ」のレベルにおいても、この「メタ正義感覚」の重要性は日増しに大きくなっています。

そして、その「メタ正義感覚」をもとに、「対立する敵を論破するのでなく、お互いが自分たちの役にたつように利用しあう」ビジョンについて検討していく中で、私たちは現代社会が押しつぶしてしまっている「あらゆる個人のありのままの姿」を、「意味のあるトクベツなもの」として理解し、社会の中に活かしていく方法を見出していくことができます。

本書の後半では、その「今ぜんぜんトクベツだと思われていない人たちのトクベツさ」をいかに経済的な価値として還流させていくのか・・・について、ある時には「思想的」な視点から、またある時は経営コンサルティング的な「商売のテクニック」的な視点から、「事例」と「思想」を何度も往復しながら描いていきます。

今までの、

「人工的理屈をベースにした上から目線で人々を断罪しまくる”啓蒙”する知識人」

の時代が終わり、

「人々のリアリティをちゃんと汲み取り、グローバルなシステムと親和させるコーディネートを行う”レペゼンする”知識人」

の時代がこれから始まります。

日本はそのトレンドの最先端を走り、分断と罵り合いの時代に、あたらしい希望を掲げることができるでしょう。

それがサブタイトルでもある「レペゼンする知識人が生み出す自分軸ビジネスが社会を変えていく」というビジョンです。

狭い意味での「ビジネス」的視点を大きく捉え直す「思想」的な視点を導入しつつも、またさらに「ビジネス」的な視点に戻ってきて、いかに国全体で「自分たちのローカルな力」を活かした「自分軸ビジネス」を立ち上げ、マーケティングし、「その国においてなんのへんてつもない」存在の価値をおカネに変えていくのか、といった実践的な話にも繋げる本になっています。

急激な少子高齢化など、いろいろと問題はありますが、大事なのは「他とは違う自分たちが受け継いだ素質」を、「今の世界的な問題の先」にちゃんと位置づけて開花させていくことです。

「外国の事例を持ってきて単に日本がダメだと言う」のは、無内容な「日本スゴイ!論」に没頭するのと変わりません。

無内容な「日本ダメ」「日本スゴイ」論の低レベルな言い争いの背後で、今日本では、静かに「グローバルな流行の最先端に、他にはない日本ならではの価値を位置づけて解放していく」試みが進んでいます。

これは、単にグローバル・ビジネス的な視点から日本を断罪していても見えてこないし、学問・思想レベルの概観的な視点からも出てこない。もちろん無内容に「日本の現場はすごいんだぞ!」と吠えてみせる視点からも出てきません。

・・・まさにそれらの「間」で長年しごとをしてきた私の経験ゆえに書ける本であったと思っています。

グローバルビジネス的な視点も取り入れつつ、中小企業の現場的な体験からもそれを捉え返していく。

狭い意味での「ビジネス」的な問題を、「思想的」な大きな視点で見直していくとともに、そこで生まれた価値をまたさらに「経済的」な価値に変えていくためのマーケティング的・商売的テクニックの話にもつなげていく。

縦横無尽に「普通は一緒になるはずのない視点」を往復することで、未来に対する悲観が満ちたこの国に、全くあたらしい視点からの希望が見えてくるでしょう。

限られた「ひとつの立場」からの視点だけだと、日本に希望はないように見えます。

しかし、「それぞれの立場同士のあたらしい協力関係」を立ち上げることができれば、状況は大きく変わります。

諸外国では完全に分断されてしまいがちな「違う立場どうし」の「メタ正義」的コミュニケーションを、「日本という場」を利用してちゃんと真摯に行っていくことができれば、分断と罵り合いの時代の希望の国=日本、にすらなれます。

そこまでいければ、日本が「経済的に繁栄」することなどたやすいとすら言えるでしょう。

この本は、象牙の塔の学者が上から目線で慨嘆する本もないし、グローバル経済の戦士が「おまえら日本人はもうダメだ」と断罪する本でもない。もちろん「日本人はこんなに凄いんだぞ!」と特に根拠なく吠えてみる本でもありません。

「思想」的に大きく捉えること、グローバルビジネスの最前線的な世界に参加するだけでなく逆に日本の中小企業の現場的強みの源泉にも「両方」触れてきた経験、そして「都会の恵まれた狭いサークルにいたのではわからないこと」を潜入して体験する「ルポ」的な視点、そして「経営コンサルティング」的に、クライアント企業の業績をあげるために試行錯誤してきた経験・・・それらを組み合わせることで、それぞれのひとつのジャンルから見ていたのでは出てこない新しい視点を統合的に提示することができているはずです。

「思想的に知的」な視点も、「グローバル経済で日本が戦い続けるための事情」も無視しないし、しかし「日本経済の現場的な強み」的なものにナマに触れてきたキャリアから言えることはちゃんと言う。

そういった「日本社会に地に足ついた」体験と、「思想的な広がりのある視点」と、「グローバル・ビジネス最前線的な事情への理解」という、ひとりの同一人物の中に共存することが珍しい3つの視点を縦横無尽に駆使することで、この本を読み終わったあなたを、日本や人類社会の未来について、全くあたらしい視点と希望をお届けできるものになっています。

15年の歳月の模索と実験と思索の積み重ねを経て、完成した本を、お楽しみください。

倉本圭造

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●著者プロフィール
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1978年神戸市生まれ。京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元会社員の独立自営初年黒字事業化など、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。著書に、星海社より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』、幻冬舎より『「アメリカの時代」の終焉に生まれ変わる日本』などがある。

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