著者:道家淳夫
ページ数:128

¥968¥0

 この本は一口で言えば、法律実務の入門書である。その対象は、将来法律実務家を目指している方で、会社に就職した際法務を志望している方、あるいは将来、公務員、または弁護士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などの資格の取得を志望している方である。
 この書籍には、法律実務を行ううえでこの程度は知っておきたいという事項が記述されている。とにかく分かりやすくするために、平易な表現を心掛け、具体的な設例が多く引用されている。法律の条文や判例の引用などはほとんど控え、エッセイ風に読めるように心掛けたつもりである。これを読み通せば、契約とはなにかが理解され、合わせて不動産取引、会社制度、知的財産保護、実務的な契約例、契約におけるリスク、破綻処理、家族制度、そしてこれらが紛争になった際裁判で問題となることは何かがお分かりいただけると思う。自分の興味の対象外は読み飛ばしてもよい。
 ただ、この世の中を支えている「契約」とは何かという問いが全編に渡っているので、できれば通読されることを望む。半面、論理的な部分や学説の状況などはほとんど記述していない。それはこれから勉強する法律学の教科書に十分よく書かれているからである。だから、この書籍は、いわゆる法学入門ではない。これを読んで、次のステップとして法律学の各科目を学べば、物事を実務的な観点で見てきているため、法律学の論理体系に親しみやすくなるだろう。
 法律学の入門として法律実務の面から見た手ほどきをするという試みはおそらくほとんどなされていないように思う。しかし、法律とは、使われたときにどうなるかが問題であって、それを知らずに、抽象的な法律論を学んでも実際的でない。このような意識からこの書籍は生まれたのであり、様々な面からの批判は重々承知の上である。読者は、「こんな制度もあるんだ」、「こんな風になるんだ」と思いつつ、読み進めていただければいい。大部な本ではないので、今少し実際の法律学の勉強を止めて読んでいただければ、読後は法律学を学ぶことがはるかに容易になるであろう。それがかなえられたら、筆者の望外の喜びである。

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