著者:原澤 亮
ページ数:303
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「虫の知らせ」あるいは「千里眼」などと呼ばれる「予知」や「透視(clairvoyance)」といった現象がこの国においても知られているが,それらは偶然として片付けられることが多く,まして科学者と呼ばれる人たちにより顧みられることは稀であった.それは,近代科学が見かけ上の再現性と普遍性により担保される現象を好んで研究対象にしていたからかもしれない.これを曲解して再現性と普遍性がないものは,科学的研究の対象とはなり得ないという風潮が支配的となり,科学研究費補助金の対象にされることもなく,研究者から敬遠されるようになったと思われる.しかも,たとえこのような分野に関心があっても,その研究に手を染めれば自らの立場や地位を不利にすると,尻込みする研究者もいたことだろう.翻って世の中を観ると,再現性と普遍性の備わった現象は例外的であって,むしろそれ以外の一回性の現象の方が多いことに気づく.もとより見かけ上,再現性と普遍性があるとされる現象も,厳密に言えば測定上の誤差を伴うもので,再現性と普遍性は科学者の願望にすぎない.ある現象を人為的に再現したくても,時間と共に変化を続けているこの動的宇宙においては,同一の条件を整えることが原理的に無理である.したがって,現行の科学は異なる条件下での一度だけの現象を繰り返して研究することになるため,異なる条件下で同じ結果が得られたとしても,それは見かけ上の再現にすぎない.しかも生物が介在する現象においては,再現性と普遍性がさして厳密ではない.たとえば,ある刺激に対する反応は,そのヒトの年齢,性別,環境,遺伝的背景など様々な因子が影響するので,厳密な再現性と普遍性をアプリオリに期待することができない.嗅覚,味覚,聴覚,視覚,触覚などの五感はもとより,細胞レベルの免疫応答などにも個人差が認められ,それには生来的なものがある.古典的感覚器官以外にもヒトには多くの感覚器が備わっているが,本書で扱う遠隔透視(RV)は,そのような既知の感覚器に依存しないとされており,その能力は,大なり小なりヒトの属性として生来的に備わっているとされる.しかし,多くの人はそれに頼ることなく既成概念の世界で成長するため,それを発揮する機会が失われるという.
本書は,UFOとの関連から遠隔透視を俯瞰したものである.RVの方法論は,大部分がフランスの研究者René Warcollierによるパラサイコロジー(意識非依存心理学)の研究に基づいており,遠隔地における隠された物事を時間と空間を超えて知覚することを目的に,スタンフォード研究所(SRI)において,レーザー物理学者Harold E. Puthoff博士とRussell Targが超感覚的知覚(ESP)能力をもつというIngo D. Swannと共に確立したとされる.これに注目した中央諜報庁(CIA)とWright-Patterson空軍基地の海外技術部(FTD)が,個別にその実用性を検証するためにSRIへ研究費補助金を提供し始めた.とくにCIAからの補助金は1970年代中頃から約20年間の長期にわたっており,その間にSRIでは,Swann(コード名S3)のほかに,コード名S1のPatrick H. Priceやコード名S2のDuane S. Elginなどの優れた透視者を輩出し,さらにコード名S4のHella Hammid,コード名S5のMarshall C. Pease,コード名S6のPhyllis Coleなどを擁し,最も優秀だったとされるコード名S7の医学生「Susan」が活躍していた.また,Wright-Patterson空軍基地のFTDにおいては,Dale E. Graff がAnthony J. Cacioppo博士の協力を得てRVの研究を行うようになった.一方,陸軍もメリーランド州Fort Meadeの軍事施設にRV部隊を置き,Albert N. Stubblebine少将の指示によりFrederick Holmes “Skip” Atwater大尉が,Robert C. Cowart大尉,Thomas M. McNear大尉,Edward A. Dames大尉,William G. Ray大尉,Paul H. Smith大尉,民間雇員Charlene Shufelt(旧姓Chavanaugh)ら六人の訓練をSwannのもとで行わせ,のちに彼らをMelvin C. Riley,Leonard E. Buchanan,Gabrielle Pettingell,David A. Morehouseの指導に当たらせた.これらのRVの関係者の多くが興味深いことにUFOや地球外生物の研究にも大いに関心をもち,両者には断ち難い関連があることを示唆していた.しかも,そのほとんどはRV研究ののちにUFOの研究へ踏み入った人たちで占められている.
本書は,RVを実施するための手引書ではないが,適切な指導者の元でRVを訓練することにより,その能力をある程度増強することができることを示している.たとえば,身体の赤外線受容体を発達させることによりESPを体験することができるかもしれない.RVは,安価で防御手段がないことから諜報目的で発展した経緯があり,ネット社会におけるハッキングに類する不法行為ともみなせる.海外では敵国の情勢を察知する目的でPsi現象に関する研究が,国家的事業として長年に亘って進められていたが,パラサイコロジーを軍事目的に応用するのは好ましいことではない.本書が「偶然の本質」の扉を開くきっかけになれば幸いである.
本書は,UFOとの関連から遠隔透視を俯瞰したものである.RVの方法論は,大部分がフランスの研究者René Warcollierによるパラサイコロジー(意識非依存心理学)の研究に基づいており,遠隔地における隠された物事を時間と空間を超えて知覚することを目的に,スタンフォード研究所(SRI)において,レーザー物理学者Harold E. Puthoff博士とRussell Targが超感覚的知覚(ESP)能力をもつというIngo D. Swannと共に確立したとされる.これに注目した中央諜報庁(CIA)とWright-Patterson空軍基地の海外技術部(FTD)が,個別にその実用性を検証するためにSRIへ研究費補助金を提供し始めた.とくにCIAからの補助金は1970年代中頃から約20年間の長期にわたっており,その間にSRIでは,Swann(コード名S3)のほかに,コード名S1のPatrick H. Priceやコード名S2のDuane S. Elginなどの優れた透視者を輩出し,さらにコード名S4のHella Hammid,コード名S5のMarshall C. Pease,コード名S6のPhyllis Coleなどを擁し,最も優秀だったとされるコード名S7の医学生「Susan」が活躍していた.また,Wright-Patterson空軍基地のFTDにおいては,Dale E. Graff がAnthony J. Cacioppo博士の協力を得てRVの研究を行うようになった.一方,陸軍もメリーランド州Fort Meadeの軍事施設にRV部隊を置き,Albert N. Stubblebine少将の指示によりFrederick Holmes “Skip” Atwater大尉が,Robert C. Cowart大尉,Thomas M. McNear大尉,Edward A. Dames大尉,William G. Ray大尉,Paul H. Smith大尉,民間雇員Charlene Shufelt(旧姓Chavanaugh)ら六人の訓練をSwannのもとで行わせ,のちに彼らをMelvin C. Riley,Leonard E. Buchanan,Gabrielle Pettingell,David A. Morehouseの指導に当たらせた.これらのRVの関係者の多くが興味深いことにUFOや地球外生物の研究にも大いに関心をもち,両者には断ち難い関連があることを示唆していた.しかも,そのほとんどはRV研究ののちにUFOの研究へ踏み入った人たちで占められている.
本書は,RVを実施するための手引書ではないが,適切な指導者の元でRVを訓練することにより,その能力をある程度増強することができることを示している.たとえば,身体の赤外線受容体を発達させることによりESPを体験することができるかもしれない.RVは,安価で防御手段がないことから諜報目的で発展した経緯があり,ネット社会におけるハッキングに類する不法行為ともみなせる.海外では敵国の情勢を察知する目的でPsi現象に関する研究が,国家的事業として長年に亘って進められていたが,パラサイコロジーを軍事目的に応用するのは好ましいことではない.本書が「偶然の本質」の扉を開くきっかけになれば幸いである.
目次
第1章 スタンフォード研究所におけるパラサイコロジー
第2章 遠隔透視者Patrick H. Price
(1)Russell Targの論文
(2)Danny B. Stillmanの所見
(3)Kenneth A. Kress博士の論文
(4)Patrick H. Priceの死
第3章 Fort Meadeの遠隔透視部隊
第4章 UFOと遠隔透視
第5章 Ingo D. Swannの物語
第6章 Harold E. Puthoff博士による回顧
第7章 Russell Targによる回想
補遺1 座標による遠隔透視の方法論
補遺2 初心者向けの遠隔透視訓練法
補遺3 UFO-ETを遠隔透視する人へ
補遺4 Susan(S7)による長距離遠隔透視
補遺5 遠隔透視による火星探査
補遺6 遠隔透視による水星探査
補遺7 SCANATE計画
付録1 機密解除された覚書
付録2 シカゴ・トリビューン紙記事
付録3 遠隔透視関連略年表
シリーズ一覧
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