著者:小木曽 友
ページ数:144

¥800¥0

[商品について]
―心と身体で詠う大地の歌― 短歌の韻律を愛し、日常生活の中にある詩情を韻律や肉声を通じて表現し、全身で味わうよろこびの中に生きた歌人・沢木あや子。 本書は、生前に詠まれた短歌の中から精選した244首とエッセイを収め、併せて夫であり歌人である小木曽友の短歌とエッセイを併録した合作集である。 全編にわたって家族や故郷、アジアへの想いにあふれた本書は、大地に根差した人の心の温かみを感じさせる作品集となっている。

[目次]
史子さん 啄木と「昴」とアジア 短歌通信 1〈ヘップバーンのごとく老いたし〉 2〈キャベツは黄色い花を咲かせたり〉 3〈挽歌〉 歌とエッセイ 1 〈歌アンソロジー 一九八四―二〇〇七〉 2〈故郷・家族を詠う〉 3〈アジアを詠う〉 4〈雲南を詠う〉 5〈遺 詠〉 6〈斉藤史の一首〉 7〈築地正子の一首〉 8〈鶴見和子著『遺言』〉―九条を守り曼荼羅の知恵を考えよ― アジア文化会館の食堂 病床の穂積先生 穂積五一とアジア文化会館 あとがき

[出版社からのコメント]
短歌をはじめ詩の世界は、時代とともに変化をし続けていますが、どの様な技巧の衣を被ったとしても、時代を超えて愛され続ける作品には、人が本質的に心惹かれる大地の息吹が感じられるように思います。本作の中にも受け継がれているそうした詩情を、ぜひ味わっていただければ嬉しく思います。

【著者プロフィール】
小木曽 友(おぎそ・ゆう)

(財)アジア学生文化協会理事長。1934年東京生まれ。東京大学大学院化学係研究科修士課程(農芸化学専攻)修了。学生時代から、穂積五一氏の主催する新星学寮・アジア文化会館(東京都文京区)での留学生との共同生活を経て、1962年(財)アジア学生文化協会入職。アジア文化会館を拠点にアジア留学生の生活・勉学の支援に取り組む。短歌結社竹柏会「心の花」会員。

著書:『小木曽友歌集 神の味噌汁』『啄木と「昴」とアジア ラビシャンカールのシタール響く』(ブイツーソリューション)、『日本人は国境を越えられるか』(共著、ほんの木社)、講演録:「穂積五一とアジア文化会館―アジア留学生との交流五十年」(學士會会報2006-V No.860)、編集:『小木曽青壺 書・写真帖』(ブイツーソリューション)、『アジア文化会館と穂積五一』(影書房)『気・甦る生命場』(帯津良一著、スリーエーネットワーク)、『ガンと気功と代替療法』(帯津良一著、スリーエーネットワーク)。

沢木 あや子(さわき・あやこ)
本名 小木曽史子(おぎそあやこ)。歌人、短歌結社竹柏会「心の花」会員。ペンネーム:沢木あや子。
書道家・号 青壺、「書象会」無鑑査会員。1929年長野県佐久市生まれ。野沢高等女学校(現野沢南高等学校)卒業。2007年没。享年78歳。一関市・知勝院樹木葬墓地に埋葬。夫の小木曽友とともにアジア文化会館を拠点として、アジア留学生の生活と勉学の支援に取り組む。

[読者から頂いたお声]
筆者と本書の著者である小木曽友氏とは高等学校(名古屋大学教育学部付属高等学校)の同級生である。このたび、『さしずめわたしは日本語音でー啄木と「昴」とアジアー』(電子書籍版)が22世紀アート社より「22世紀に読み継がれるべき良書」として出版されたのを知り早速購入して熟読した。先ず驚いたのは、氏は東京大学大学院で土壌学の研究をしていた、いわゆる理系の頭脳の持ち主であり、出版されたような著作とは程遠い思考過程の持ち主であると思っていた。読んでみて。氏が啄木や「昴」、アジアに関する資料をしらべ理解を深め、その基礎の上に著したものであることが理解できた。この点は科学者としての片鱗がうかがえる。もともとアジアに関しては、氏が大学を辞し生涯の仕事としてアジア学生文化協会で、アジアの留学生の世話を長年してきたことを思えば、アジアに思いが深くアジアを強く愛していたことが今回の著作につながる。読解力の低い私にはすべて理解ができたとは言えないが、著者の心情と思想が文字だけでなく行間にぎっしり詰まっていて「22世紀に読み継がれるべき良書」に指定されるのも宜なるかなである。本書は小木曽友氏が人生の師とする穂積五一先生と最愛の妻史子(書家・小木曽青壺、歌人沢井沢木あや子)さんへの、そして恐らくは小木曽氏自身へのオマージュとレくイエムであると私は理解している。
 谷村新司の歌は私も大方好きだ、歌えるかどうかは別にして。中でも「昴」「陽はまた昇る」は特に好きな歌である。また、啄木の短歌も好きだが、「東海の小島の磯の・・・」「かにかくに渋民村は・・・」「働けど働けどわが暮らし・・・」「たはむれに母を負いて・・・」くらいしか思い出せない)。谷村新司の「昴」と啄木の関係を初めて知った。なるほどと思った。
 小木曽氏が短歌を始めたことは、何時か東京の同窓会の時に本人の口から聞いたか、何となくそう感じた。理系の人は文学とはおよそ縁遠いと思っている向きがあるが、元愛知教育大学長の内藤卯三郎先生(物理学者・故人)は、弟子や後輩に物理の本(教科書)を書く時でも、解りやすく美しい日本語で書くようにと教えられたと聞いたことがある。また、身近なところでは、岡崎にある国立共同研究機構生理学研究所を定年退官された方で、定年後はすっぱり学問・研究から離れ、絵画と俳句を初歩から習われ、今では立派な趣味とされ、それに打ち込んでいる人もおられる。私は、科学者は感性が鋭くなければ良い研究(結果)はできないと思う。その意味で小木曽氏が短歌を始めわずかな歳月であるところまで到達していることは理解できる。氏が短歌を始めたのは多分に史子夫人の影響が大きいと思う。また、共に学んだ高校の恩師井澤純先生の「文学史」の講義を思い出す。「ダンテの神曲」から始まり世界の文学の生れた背景、その小説の持つ意味などの講義であった。恐らく当時、文学史の講義をする高校は無かったと思う。名大付属高校の特色であり、井澤先生の文学史の講義で触発され文学に興味を持った者は多かったと思う。そして学園誌「世界樹」更に「野葡萄」を発刊した。そうした事が我々の心に文学の心を芽生えさせたと思う。
 史子さんの短歌はすっと理解できるものと、少し考えないと理解できないものがある。失礼ながら小木曽氏の短歌は一度読めば理解できる。史子夫人とは短歌修業の歳月の長さが異なるので当然と言えば当然かもしれない。また、小木曽氏が選んで収載した史子さんの短歌は「命」に関する歌が多いように思う。収載に際し、知らず知らずにそうなったと思う。「命」関する歌は読む者の心を捉える。
いずれにせよ『さしずめわたしは日本語音でー啄木と「昴」とアジアー』は私に大きな衝撃を与えた一冊である。
(80代:男性)

『さしずめわたしは日本語音でー啄木と「昴」とアジアー』(電子書籍版)を一気に読ませていただきました。沢木あや子さんの歌の世界にぐいぐいと引き込まれるようにページを繰ってしまいました。もちろん、歌の素養の無い私には意味不明の歌もたくさんありましたが、それにもかかわらず、沢木さんのほとばしるような感性を三十一文字の世界から感じ取ることができました。正直、短歌をこんなにまとめて読んだのははじめてでした。というより読まされたといった方が正確かもしれません。いくつも心に残る歌がありました。
・にび色の不安ぶあんと膨らみて口から飛び出しそうになる朝
これは衝撃でした。私は若いときから寝起きに、冷や汗を伴う言いようのない抽象的な不安に襲われることが度々あり、この歌に表現されているとおりなのです。胸の中に綿のようなものを詰め込まれたような、少し息苦しい、理由のはっきりしない不安感はまさにこんな感じなのです。作品評にもありましたが、よくぞ表現して下さったという感じです。
もう一首、
・ピアノ弾くグレングールド 秋の音くろがねの音雲ひかる音
これも印象深い歌です。グールドのピアノには私も惹かれていますので、こんな表現があったのかと驚きをもって読みました。ちょっと嫉妬するほどの表現でした。そして、小木曽さんの短歌、
・香港のペニンシュラホテルのティー談義ヘップバーンのごとく老いたし
ヘップバーンと聞いて、私はすぐオードリーを思い浮かべてしまいましたが、キャサリンの方だったようです。キャサリン・ヘップバーン主演の「黄昏」は味わいのある映画でした。ヘンリー・フォンダも心に訴える老境を演じていたように覚えています。あの映画の音楽を担当したディヴ・グルーシンは、ピアノのプレイヤーであり、作曲もアレンジもする才能豊かな音楽家です。あの映画の原題でもある「On Golden Pond」という曲は彼の手になるものですが、大好きな曲で昔レコードを買ってすり切れるほど聴いた覚えがあります。あの曲を聴くと黄昏時の斜光が湖面を金色に輝かせていた映画のシーンを想い起こします。
  巻末の小木曽さんの講演録「穂積五一とアジア文化会館―アジア留学生との交流五十年」は、はじめて聞くお話でしたので、大変興味深く読ませて頂きました。穂積氏の「三つの心得:ごみをを拾え、留学生に学べ、日本人の価値観をまず捨てよ」にはハッとさせられました。留学生を「隣人」に換え「日本人」を自分に置き換えれば、すべての人とのつきあいにも、この心得は普遍的なものかもしれないと思います。(60代:男性)

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