著者:近藤義雄
ページ数:391
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中国政府は2018年8月に個人所得税法を改正し、2019年1月1日から改正税法を施行しました。この改正により居住者と非居住者の区分が変更され、中国に住所がなく中国国内に累計して満183日居住する外国人は中国の居住者となりました。改正前の居住期間は満1年以上中国に居住する外国人とされていましたので、大幅な居住者区分の変更でした。
中国の個人所得税法は制定当初から所得項目別に課税する分類課税方式が採用されていましたが、税法改正により、総合課税方式が新たに採用されました。ただし、日本の総合課税方式とは異なり、給与所得、役務報酬所得、原稿報酬所得、特許権使用料所得の4つの所得を総合して課税し、その他の所得項目は従来どおり分類課税方式を適用します。
総合課税方式を採用したことにより、新たに特定控除項目、特定付加控除項目、その他の控除項目が設定されました。特定控除項目とは、基本養老保険料、基本医療保険料、失業保険料と住宅公積金等であり、特定付加控除項目とは、子女教育、継続教育、大病医療、住宅ローン利息、住宅家賃、老人養護費用等であり、その他の控除項目とは、年金、商業健康保険、繰延養老保険、控除が認められる税金費用等です。
個人所得税の納付方法には、従来から源泉徴収納付と総合精算納付がありましたが、源泉徴収納付について重要な改正が行われました。総合所得の源泉徴収納付は予定控除予定納付方法により源泉徴収が行われますが、分類課税所得については代理控除代理納付方法により源泉徴収が行われます。
予定控除予定納付方法では、毎月の収入額から基礎費用控除、特定控除、特定付加控除、その他の控除項目が控除された後に適用税率が適用されて源泉税額が控除されますが、代理控除代理納付方法ではこれらの控除項目がなく、原則として収入金額に適用税率を乗じて源泉税額が控除されます。
毎年3月1日から6月30日までの間に総合精算申告納付が行われます。総合精算申告納付は日本の確定申告納付に似ています。税法改正に伴って、外国税額控除制度も整備されました。
本書の第1部の1から4までは上述した改正税法の解説であり、5から8までは、従来から行われている個人所得税の持分譲渡課税、上場株式の譲渡課税と配当課税、不動産譲渡課税について解説しています。これらの関連規定は現在でも有効なものとなっています。
また、旧税法の時に発布された税務文献で新税法と矛盾しない範囲で有効な規定が存在しますので、第2部では、旧個人所得税法の解説、旧駐在員の給与所得課税についても掲載しました。ここでは日本税法の取扱いにも触れています。
なお、第1部は、「中国の国際税務と個人所得税」(2019年4月、kindle版)の個人所得税部分をほぼそのまま掲載していますが、その後の税務文献を加味して加筆しています。本書は、2021年1月末までの中国税務関連法規に基づいています。
最後に、本書が皆様の中国実務のお役に立てることができれば幸いです。
2021年2月
近藤 義雄
第1部 中国の個人所得税法
1 個人所得税法の改正
1. 居住者と非居住者の区分
2. 給与所得者の個人所得税課税
3. 総合課税方式と分類課税方式
4. 源泉徴収納付と申告納付
5. 所得控除と税率表
6. 徴税強化と減免税
2 個人所得税法の概要
1. 納税者と課税所得
2. 課税所得と税額計算
3. 源泉徴収納付と申告納付
4. 徴収管理規定
3 源泉徴収と自己申告
1. 源泉徴収申告納付
2. 自己納税申告
3. 居住者個人の総合所得
4. 個人所得税の引継優遇政策
5. 継続して有効な優遇政策
4 中国の確定申告
1. 個人所得税の確定申告
2. 中国の外国税額控除制度
3. 大湾区の差額補填政策
5 個人所得税の持分譲渡課税
1. 個人所得税法の取り扱い
2. 持分譲渡所得管理弁法
6 中国上場株式の譲渡課税
1. 中国証券市場と中国上場株式
2. 中国における譲渡課税
3. 日本における譲渡課税
7 中国上場株式の配当課税
1. 中国における配当課税
2. 日本における配当課税
8 日中間の不動産譲渡課税
1. 中国の不動産売買取引
2. 中国の不動産関連税金
3. 不動産の減免税政策
4. 日中間の不動産所得課税
第2部 旧個人所得税法の解説
1 旧個人所得税法の概要
1. 納税者と課税所得
2. 課税所得と税額計算
3. 源泉徴収と申告納付
2 旧駐在員の給与所得課税
1. 中国派遣者と個人所得税
2. 賃金給与所得
3. 賞与と退職金と年金
4. 役員報酬課税
5. 日本の所得税と法人税法の取扱い
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