著者:三遊郭
ページ数:267

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「Friday Night Fantasy――FMくじら」「Dear My Vegy Mary――おびひろ動物園 かくれんぼ」「梟とチーズ工房」の三作の蒐集。 北海道の函館と帯広、横浜を舞台に展開。 「三遊郭中編文学集Ⅲ」以来、久しぶりに文壇に登場。 どちらも私が故郷と呼んでいる、函館、帯広の一生の今を切り取った作品。 三遊郭中編文学集Ⅰ~Ⅲ、刑事甘露王で語られていた難解な哲学の世界を脱し、平穏な日常に戻った私の作品群です。 ☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡 最初の部分を一寸だけ ★Friday Night Fantasy――FMくじら★ 序 本当に私で良いのかしら? もう、記憶が断片化しています。若いのですが…。 昨晩随分遅くまで、小説の推敲をしていました。私の職場、FMくじらと函館山(やま)の麓をイメージした物を書いています。 Jは「イタリアン レストラン 北極熊」を経営する、プチ引きこもりの大学中退者でありました。彼は、船見(ふなみ)町(ちょう)の父母の住む自宅に暮らしています。私は弁天(べんてん)町(ちょう)の新古モダン住宅に父母を連れ込み、住んでい☆彡☆彡ました。父母は普段は横浜で、店と発明寄席(インキュベーション)を経営していました。 彼のレストランの親会社はダダ○物産。親友は大介さんだけでありました。大介さんは、かねご○ん食品に務めていました。鰊(にしん)漬(づけ)、烏賊(いか)塩辛(しおから)、烏賊(いか)飯(いい)鮨(ずし)、雲丹(うに)烏賊(いか)の製造を行っていました。 私は、デジタル1眼レフカメラを三脚に取り付け、無線シャッターを静かに押しました。情景は、函館の夜景。職場がロープウェー乗り場にあるコミュニティーFMラジオ局なので、仕事が明けた後など、晴れた夜景を目当てに、すーっと山頂まで登ってしまえます。気分が沈んだ時には最高の気晴らしになるのです。 FMくじらは、函館山の麓のロープウェーの発着所の脇(わき)に、建物がそれと一体となった形で存在していました。このFM局は1996年に開局しました。ロープウェー会社の子会社として始まりました。私はそこで女性パーソナリティをやっていました。 私の若い頃は、クラブとは言わずに、ディスコと呼んだ時代でした。私の父母は、ゴーゴーの時代の人でありました。私はそういう年齢であったりします。2010年に、入局しました。 これから寒くなってきます。 ☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡 ★Dear My Vegy Mary――おびひろ動物園 かくれんぼ★ 序 鳥の囀(さえず)りが聞こえていた。陽光から、雲がはみ出ている。西の空には、雲に欠けた月が浮かんでいた。最近は朝、月に魅入(みい)る時を持てていなかった。近年、月が大きく見えることだけは、理解しておりました。 雌象(めすぞう)のナナが大きな叫(たけ)び声を上げた。 彼と私は帯広緑○丘公園の雑木林の中を、手を繋(つな)いで歩いておりました。この森は、エゾリスとエゾシマリス、エゾモモンガの大切な住処(すみか)でありました。 その森の扱いを、私は「企画」しようとしています。 彼氏は宮大工だった。同じ高校の1学年上の先輩でありました。 彼は「切れているカマンベール」をタッパから出して、私に渡しました。 これがもしタバコを差し出す彼であったら? カマンベールを差し出す彼に、女性としての私は、笑みしておりました。 ☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡 ★梟とチーズ工房★ まえがき 横浜中華街(ちゅうかがい)の月の夜。満月が豚さんのお尻のように見えました。食べたら美味しそうだけれども、私は神様が好きでしたから、我慢(がまん)することにしました。 北の街。小学1年生。今住んでいるこの場所の丸い食べ物は、全てお父様が作った物。美味(おい)しいに決まっているのです。 今晩は、おでんを食べました。一寸(ちょっと)南に行くと、昆布の茂(しげ)った海が始まります。近所の海は、とろろ昆布と雲丹の産地です。軍艦巻きに雲丹(うに)の身を乗せ、それに少しのとろろ昆布(こんぶ)を乗せます。私は「軍艦(ぐんかん)十勝(とかち)丸(まる)」と呼んでいます。美味しいのですよぉ。 夜中(よなか)布団(ふとん)の中で、アビーが私の横で眠ってくれるので、私はちっとも寂(さび)しくなんかないのです。 海沿(うみぞ)いの陸地(りくち)に、沼があります。世界最大のシジミが獲れるので、旬になるとそれを食べて、私はぐっすり眠ります。 私の夢は、動物のお医者さんになること。だからお父様が私をこの土地に呼んだのです。 お父様と私は、今から私が大学に行くためのお金を貯めるために、食べ物は自分で作っておりました。買い物は不揃(ふぞろ)いなもので満足していました。 火の通り加減は、包丁(ほうちょう)次第(しだい)。 お父様は、お店が上手くいっているのに、美味しい物を作るために横浜の家を出ていってしまいました。 私はこれから、お父様と帯広市に一緒に暮らします。

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