著者:神野 守
ページ数:46

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 この小説は、2021年10月10日から11月24日までツイッターに毎日投稿していたツイートをまとめたものです。1話が300字前後の文章なのですが、毎朝決まった時間にアップするのは予想以上に大変でした。

しかも、文章の始まりが五十音順なので、次の日の書き出しの言葉を思い浮かべながら文章を締めくくらないといけません。今日が「あ」で始まったら次の日は「い」で始まり、その次の日は「う」で始まるという具合です。

 なぜ「始まりが五十音順の連続小説」を書こうと思ったのかと言いますと、流行させたいと思ったからです。『#(ハッシュタグ)始まりが五十音順の連続小説』として、誰か続いてくれないかなと期待したのですが、この原稿を書いている段階では私の他に始める人はいないようです。

 またいつか機会があったら、第2弾をやってみたいと思っています。

目次
はじめに
始まりが五十音順の連続小説「あ」
始まりが五十音順の連続小説「い」
始まりが五十音順の連続小説「う」
始まりが五十音順の連続小説「え」
始まりが五十音順の連続小説「お」
始まりが五十音順の連続小説「か」
始まりが五十音順の連続小説「き」
始まりが五十音順の連続小説「く」
始まりが五十音順の連続小説「け」
始まりが五十音順の連続小説「こ」
始まりが五十音順の連続小説「さ」
始まりが五十音順の連続小説「し」
始まりが五十音順の連続小説「す」
始まりが五十音順の連続小説「せ」
始まりが五十音順の連続小説「そ」
始まりが五十音順の連続小説「た」
始まりが五十音順の連続小説「ち」
始まりが五十音順の連続小説「つ」
始まりが五十音順の連続小説「て」
始まりが五十音順の連続小説「と」
始まりが五十音順の連続小説「な」
始まりが五十音順の連続小説「に」
始まりが五十音順の連続小説「ぬ」
始まりが五十音順の連続小説「ね」
始まりが五十音順の連続小説「の」
始まりが五十音順の連続小説「は」
始まりが五十音順の連続小説「ひ」
始まりが五十音順の連続小説「ふ」
始まりが五十音順の連続小説「へ」
始まりが五十音順の連続小説「ほ」
始まりが五十音順の連続小説「ま」
始まりが五十音順の連続小説「み」
始まりが五十音順の連続小説「む」
始まりが五十音順の連続小説「め」
始まりが五十音順の連続小説「も」
始まりが五十音順の連続小説「や」
始まりが五十音順の連続小説「ゆ」
始まりが五十音順の連続小説「よ」
始まりが五十音順の連続小説「わ」
始まりが五十音順の連続小説「を」
始まりが五十音順の連続小説「ん」

始まりが五十音順の連続小説「あ」
 明日、君はいなくなる。突然の引越しだなんて信じられない。「お父さんの仕事で、大阪に引っ越すよ」はにかんだ笑顔がぎこちない。大きな瞳を細めているのは、涙が零れないようにしているから。僕との最後の日を、悲しい思い出にしたくないから。

 君の感情が痛いほど胸に突き刺さる。僕は思わず下を向いた。バッグから取り出したハンカチは、僕がプレゼントしたもの。嗚咽をこらえて涙を拭う君をまともに見れなくて、僕はずっと下を向いたまま。
 中一の夏、初めてのデートは動物園。同じ陸上部の親友カップルとダブルデート。ぬいぐるみをたくさん買った君の荷物を増やさないように、淡い水色のハンカチを選んだ。あの頃は、こんな日が来るなんて思いもしなかった。

始まりが五十音順の連続小説「い」
 息が出来ないくらい、感情の波が押し寄せている。玄関に立ったままの君はあまりに無防備で、このままさらってしまいたいとさえ思う。これがハリウッド映画なら、二人でどこまでも逃げおおせるに違いない。映画なら、決まって最後はハッピーエンド。そう、もし映画ならね……。

 「裕貴(ゆうき)、部屋でお話したら? 恵梨香(えりか)ちゃんの家には電話しておくから」
 振り向くと、母が心配そうに見つめている。僕は黙って頷き、彼女の手を握って二階に向かう。階段を上る時、手を強く握られた。繋がった手を離したくない、そんな意図が伝わってくる。二人の気持ちは同じなんだ。大人の事情で引き裂かれるしかない僕たちは、なんて弱い存在なのだろう。

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