【無料で読める】青き旗の元にて

　この作品は小説雑誌『小説現代』（講談社）二〇〇〇年十一月号に掲載され、後にアンソロジー『事件現場に行こう』（光文社）に収録されました。
　地味な作品ですが、北と南の二つに分断された一つの民族の夢である「南北統一」という夢に翻弄され続けた男女三人の過酷な運命を描いた秀作です。
　ひょんなことで某所でこの作品のことが話題になり、我々以外にもこの作品が好きだという方がいたことを嬉しく思い、著者から原稿を預かって自分たちが楽しむために電書化してみました。
　すでに講談社と著者の間には契約はいっさい存在しないということで（著者は講談社から何冊が出版していますが全部絶版で電書化されておらず）、あとはアンソロジーを発行した光文社ですが、著者に調べてもらったところこの作品に関して光文社と交わした契約は存在しないということでしたのでアーカイブでの電書化は問題ないと判断しましたが、念のために使用した原稿は出版社を経由していないオリジナルのものとしました。
　この作品には、デビューから一環して変わることのなかった著者の半島へのこだわりや愛着が凝縮されています。そして読む度に、作家が真に書きたかったものがこうしたものだったのではないかと感じます。