著者:千川ともお
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プノンペンの第一印象というのはカンボジアの小都市としての首都を感じるのかもしれない。
だが、しばらく滞在型の生活に重きを置いて入り込んでみる。
そこで、カンボジアの中の村や町を日帰りで訪れ、再びプノンペンに戻ってくる。
するとプノンペンの大きさがただ単に小都市としての首都ということから離れ、その大きさがわかってくる。
都市にありがちな騒音と、都市にありがちなスモッグの代わりに、オートドップのエンジン音や、発電機のエンジン音.あるいは土ボコリの嵐が身に迫ってくる。
都市にありがちな多くの人々のにぎわいと、以前から栄えていた街の通りが次第にゆっくりと伝わってくる。
到着直後は、プノンペンというまさに小都市としての存在が、殺風景なざっくばらんな首都にしか映らず、帰国する人も多いだろう。
だが、恐る恐る身の回りのものを散歩がてらに注意しながら歩き回ると、もうとっくに隔絶された時間の箱の中か、博物館の中に入っているのかもしれないことに気づくかもしれない。
それは、一方では、日常的な生活の道具や乗り物があり、極めて同時代のガソリン使用の機械類、オフィスにあるパソコンの端末機、電波をキャッチするサテライトなどが視界に飛び込んでくることでわかりつつも、さらなるもう一方の部分がわかりにくく、複雑に絡み合っていることが多い。
この種の体験というのは、異国のどこへ行こうとも感じつつ、このあたりのインドシナ諸国、東南アジア、南アジアなどに共通のものもある。
だが、プノンペン独特の風貌が他にあるようだ。
これはプノンペンの大通りの表ばかりを歩き、乗り物に乗るのではなく、むしろ路地裏や、地元の人々が接しているところ、過ごしている場所に近づいてみたときに気づいてくるものなのかもしれない。
内側の部分と言ってしまえば簡単なのだが、それぞれが未知なる忘れ去られたものと内戦のため遅々として進まない国内事情のためにその仕組みがどうなっているのか理解することに時間がかかるのだ。
カンボジアの内戦のために、海外の国で平和会議が繰り返される。
外国で平和会議が開かれ.それが繰り返されているが、なかなか収まらない。
そのことが、カンボジアの将来と大きく関わっている。
内戦に終止符を打てないことで平和会議が再び続く。
それでも、首都プノンペンには、生活という意味での新たな試行錯誤が繰り返されていることも見逃せない。
その試行錯誤は、プノンペンの内戦によってきわめて停止した時期を経過しつつ、激しい移り変わりの速さの中で進んでいる。
新たな検討が重ねられ、これがプノンペンの内側の生活空間の中に極めて強く影響している。このことが外側からやってきたものを惹きつける。
カンボジアの地方では物質的に、文化的に、また生活面を通じて危機にさらされる事が今でもある。
内戦が続けば続くほどになかなか整理できない政治絡みの問題から、財政問題にいたる問題まで、とてもよそ者にはわからないことがある。
だが、ここでは、雲の上をつかもうとするような問題を使わなくとも、身近な問題でいい。例えば、大通りや建物の中の、生活空間の一つ一つの出来事が、外国からの訪問者には、かなり違ったものに見えるかもしれない。
だが、違ったものに見えることの先をまだ理解していないことが多いのではないだろうか。そこがカンボジアを少しでも感じる鍵になるようだ。
こんなことがある。
大通りの自転車とオートバイとシクローの多さは、最初は優しく見える。
だが、しばらく滞在し、乗り物がひしめいている時間帯に、大通りを横断しようとしても、そう簡単ではない。まず横断の仕方を身につけなければならない。
今ではカタカナ言葉になりつつあるトラフィックジャムという言葉がある。
交通渋滞のことだ。
乗用車、タクシー、トラック、多種多様な車がずらりと列をなした道路を想像する。
そのトラフィックジャム/ TRAFFIC JAM がここプノンペンにもあるのだと言ったら、誰がイエスと言おう。
ところがそれがある。
さっきの自動車とオートバイとシクローが、ラッシュアワーを迎えれば、まさにそれになる。その上で、熱射と土ボコリが舞う。最初は優しく見えた乗り物たちも、汗をタラタラと流す外国人の前に、いつか交通渋滞を感じさせてくれるというわけだ。
そのことに気づくまで時間がかかる。
今まで身につけてきたであろう生活環境から、身につけてきた知恵とか思考方法が、ここでは特に役にたたないのではなかろうか。
この国で何かを予測しようとしたとき、それが憶測になって物事が逆とか反対とかいったものを考えていることも、しばしばあるのではないだろうか。
誤っているとは言えないが、考えている方向が、少なくとも的外れになっているようだ。
このレポートは、1994年5月から9月にかけてのもので、1997年1月現在以降の発行になったのは、原稿がありながら、発行に至るまでの作業はなかなか進められないこととなった。
それでも1997年の発行時期になっても、カンボジアの激しい変化の中で、こうしたカンボジアのレポートが全くないことから、発行までこぎつけさせようという意思になった。1997年現在、ポルポト派の投降が伝えられながらも、数年前の戦車による激しいニュースが飛び交っていた頃と比べると、随分静かになったカンボジアなのだが、このレポートもそうした移り変わるカンボジアのプノンペンをもう少し、身近な視点でとらえることができないだろうか、という意識から書いたものである。
パイリンを中心とする投降や通貨のレートはこれからも日々変化をしていくのだろうが、ここに書かれた事柄も残したかったからである。
また、カンボジアは、タイとの陸路での国境としてアランヤプラテートや海側での国境ココーンもあり、それぞれ訪れている。
ここで書かれているものは、いわばカンボジアの中心、特に首都プノンペン、またはカンボジアの国境などについて書かれている。
今までのカンボジアのレポートが、主に内戦、或いは、それに関わる政治状況、ボランティアなどの側面から書かれているのに対して、ここに書かれていることというのは、ごくごく普通の生活の断片が書かれている。
これからのカンボジアの資料になればと思う。

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