著者:月野 しずく
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「介護の仕事」ときくと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
 給料が安くて、たいへんそう。
 必要な仕事であることはわかるけど、自分にはとてもできそうもない。
 そう思ってらっしゃるかたが多いかもしれません。

 この本は、そういうかたに読んでいただきたくて、書きました。

 介護って、ちょっとおもしろいのかもしれない。
 もしかしたら、自分にもできるかもしれない。
 そんなふうに思っていただけたら、とてもうれしいです。

●○●

 介護は「人のためになる仕事」だと、よく言われます。
 もちろん、そういう側面もあります。
 しかし、私はなによりも「自分の人生にとって、これほど役に立つ仕事はない」と思うのです。

 年を重ねるとは、どういうことなのか。
 何が不自由になり、何があれば助かるのか。
 経済の低迷が続き、生涯独身の人が増加の一途をたどっている現在、多くの人が漠然と抱えている不安でしょう。

 貯金はいくらあればいいのか。
 「二千万」なんて言われても、目の前の生活費でいっぱいいっぱいで、到底無理だが、どうしたらいいのか。
 困ったときには、どこに相談すればいいのか。
 そもそも、国や自治体は助けてくれるのか。

 介護は、高齢者の生活にいちばん近くで寄り添い、ともに考え、手助けをする仕事です。
 年をとるのは、誰にとっても初めての経験です。
 私たちが今、「おじいさん」「おばあさん」として接しているかたたちにとっても、それは同じこと。
 みんな、「はじめての高齢者体験」に戸惑い、驚き、不安な気持ちを抱えています。

 未来のことは、頭の中でいくら考えてみてもわかりません。
 将来に対する漠然とした不安を抱え続けているよりも、現在進行形で「老い」に直面しているかたたちの状況をよく見て、ともに困りごとの解決策を考えるのは、なによりも自分の将来の備えになります。

 もちろん、解決できることもあれば、できないこともあります。
 しかし、問題の解決には、役所の福祉課、地域の包括センター、ケアマネージャー、医療関係者、ヘルパーなどなど、とても多くの人たちが関わり、尽力している、ということを知るだけでも、心の持ちようは変わってきます。

 家族や友人がそばにいなくても、決して「ひとりぼっち」になるわけではありません。
 そのことを、私はヘルパーの仕事を通じて学びました。

●○●

 私が訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事をはじめたのは、二〇一〇年の七月、三十五歳のときのことです。
 私はバブル崩壊直後に社会に出た、いわゆる「はしごを外された世代」。
 職業科高校を卒業したのにも関わらず、就職ができず、手書きPOPやチラシかきの内職、和裁士、派遣の事務員、古書店店員などなど、たくさんの仕事をしながら、なんとかかんとか生活費を捻出してきました。

 私にとって仕事とは、常に「いつ失うかわからないもの」でした。
 ですから、いつも複数の仕事を掛け持ちしていました。
 今はヘルパーの仕事がメインですが、他にも古本屋と印刷所でアルバイトをしています。

 たとえば、月に二十万必要ならば、月給二十万のフルタイムの仕事を探すのではなく、七万稼げる仕事を三つしたい、というのが、私の考えです。
 複数の収入源を確保しておけば、突然仕事をひとつ失っても、とりあえず、来月の家賃ぐらいは払えます。

 ホームヘルパーの仕事をしてみようか、と思いついたのは、たいした理由ではありません。
 「人のためになる仕事をしたい」とか、「社会に役立つことを」というような、殊勝な気持ちはまったくありませんでした。
 シフトの自由度が高く、他の仕事と掛け持ちがしやすいこと、近所でできる仕事であること、そして、近隣の小売店のアルバイトに比べたら、時給が高かったこと。
 それだけです。
 とりあえずやってみて、向いてなかったら辞めて、他の仕事を探せばいいや。
 そのぐらいの気持ちで、気楽にはじめてしまったのですが、気がついたら十二年も続けていました。

 私に介護の仕事に向いているのかどうかは、よくわかりません。
 もちろん仕事ですから、楽しいことばかりでもありません。
 しかし、「辞めたい」と思ったことは、一度もないのです。
 私はこの仕事に出会えて、ほんとうに良かった、と思っています。

 「底辺の仕事」だと言われたり、反対に、あたかも「聖職」であるかのように持ち上げられたりすることの多い介護の仕事ですが、私はそのどちらも当たっていない、と思います。

 介護の仕事は、おもしろい。
 他の仕事では得られないメリットがたくさんある、ということをお伝えしたくて、この本を書きました。

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