著者:杞優橙佳
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「ここはしあわせの村。自然主義経済に基いて運営される村だ」
「自然主義経済?」
「そうだ。考えてもみてほしい。私達自身も含めて、自然万物は時間と共に朽ちていく。それにもかかわらず資本主義の世界では貨幣は朽ち果てることがなく、それどころか利子によって貯蓄されたものは増殖していく。貨幣によって購入した物質の価値は下がるのに、貨幣の価値は下がらないのだ。この矛盾が世界の矛盾を創り出していると思わないか。
 人々は少しでも多く貨幣を獲得し、所有し、貯留し、増殖させることが幸福だと錯覚している。金を稼ぐことが正義ならば、他人の生命など知ったことではない。詐欺が横行し、騙される方が悪いという風説まで出る始末。今日まで己の地位を高め、金を手に入れることのみに明け暮れた企業家がこの国を支配してきた弊害だ」

 この国メルッショルドは、国内に200以上の企業によって経営される街が存在し、時価総額の最も高い企業のオーナーが国王となる。クライアントはその仕組に反逆を企てている。

「さあ教えてくれ。しあわせの村の新入生。君の名前は」
「ミシェイル。ミシェイル・グドウィンだ」
 ミシェイルと名乗った少年は、クライアントの言葉をしかし許容できなかった。

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