著者:高口 英茂
ページ数:537
¥250 → ¥0
―資本主義を超え、そしてソ連型社会主義を超えるために―
近代資本主義が生みだす社会矛盾に立ち向かう社会運動の流れの中で、「予示的運動」に近いところに立ち異彩を放っていた東大全共闘運動。「ソ連型社会主義」が失敗に終わり、近代資本主義に対峙する新たな運動が模索される中で、今後の社会運動の原理として発展しうる予示的原理を内包していた東大全共闘運動は、今あらためて社会運動の視点から総括されなければならない。全5巻に分けて東大全共闘運動に迫るシリーズ、最後となる第5巻では、これまでの考察をもとにいよいよ東大全共闘運動の総括に入る。小熊英二『1968』の内容を批判的に検討しながら東大全共闘運動の意義を改めて明確にし、再生する社会としての社会主義の展望を考察し、「半農半X」生活として現代社会への具体的な提言を行う。「東大全共闘運動とは何か」という長い思索の旅が未来へとつながる最終巻。
『社会運動としての東大全共闘』は5分冊となっております。
[目次]
第5章 東大全共闘運動の総括
第一節 東大全共闘運動は否定すべき運動だったのか
1.誤り伝えられていることが多い東大全共闘運動
東大全共闘運動を振り返る
東大全共闘運動理解のための基本的事実
全共闘は「戦後民主主義」を否定した??
東大全共闘運動は「暴力学生」が主導した?
東大全共闘運動は、その後の大学の政府支配を導いた?
「全共闘崩れが大衆消費社会になだれ込んだ」のが戦後日本の画期というバカげた総括
2.東大全共闘運動についての憶測を生んだ思い込みを批判する
文字資料を参照するリテラシーや検証可能性について
アイデンティティー・クライシス論からの自分探し論は全共闘運動を軽蔑しすぎ
「高橋調査報告」の使い方には要注意
第二節 東大全共闘は何と格闘したのか
1.東大全共闘運動と新左翼党派
全共闘運動は第二次武装闘争に向かう要素と脱権力政治に向かう要素を内包
「18・19」後に始まった69年の文学部・人文系大学院の運動(文共闘の研究室占拠闘争)
戦後「第二次武装闘争」の総括;(外部から目線からの)日本赤軍の総括
党派人は「報復の論理は戦争の論理ではあっても革命の論理ではない」の確認を
敗残の者が後の人たちにもっとうまくやってほしいと願う全共闘運動の私の総括
2.東大全共闘運動の総括
私たちを全共闘系学生にした「自己否定論」は反システム運動のあり方を刷新
民主主義の原初的息吹を復活させ、社会主義運動のあり方に対して「新しい」形を提示
「大学解体論」の提唱は、「知」の解放・開放と「知」の転換の提起
付記:全共闘運動に関係する新左翼系主要党派の特徴
第三節 全共闘型運動の世界的広がり
日本の1968運動の国際連環と国際連帯性
アウトノミア運動を経た後のネグリの「マルチュード革命論」と階級闘争の展望
第6章 社会主義社会への展望
1.社会主義社会はどう実現できるのか
本書の社会主義社会への展望の基本は「半農半X」の全体化
資本主義前に戻る運動としての社会主義運動
経済財供給の「社会内分業」をすぐに廃棄できないとすれば「市場」は必要
市場の失敗は「国家」を要請するが、その一方で社会主義運動は国家に弾圧されてきた
世界同時が考えられない以上、過渡期の設定は必然
永続革命期の国家には政権交代があるのが自然
国際刑事裁判所の権能強化と国家の暴力装置要素の掘り崩し
自治民主主義論および世界軍の創設、そして統治システムの世界化
生活手段・生産手段の〈総有〉によって共同体的生産様式を実現する
2.日本への具体的提案
Ⅰ.「半農半X」の全体社会への拡大を促す施策
(1)二人以上単位の希望者への“山林”使用権の付与
(2)農工連携自給圏「スマート・テロワール」の形成
(3)農業・林業における小規模経営への支援
Ⅱ.福祉の充実施策
(1)「社会保障の危機」の回避と「福祉機会」の直接給付増強
(2)福祉裁量労働従事公務員業務の確立
Ⅲ.企業の経営に関する提案
「会社は誰のものか」論争から示唆される「生産手段」の開放へつながるヒント
(1)企業規模の小規模化促進
(2)「非正規雇用者を含む労働者代表」による「労働時間・労働環境改善監査制度」
(3)リストラ時の、従業員による被リストラ部門事業の継続の容易化
夢想社会主義者の社会主義への空想
あとがき
[担当からのコメント]
環境問題や労働問題、貧富の格差など現代の私たちが抱える喫緊の課題の中には、少なからず近代資本主義の矛盾が含まれています。これらの難問を超えるためには今なにが必要なのか、本書はそうした思索をするうえでも示唆に富む内容となっています。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
高口英茂(たかぐち ひでしげ)
1945年 北海道帯広市生まれ。1968年 東大全共闘運動参画。1981年(株)クリオ設立、代表取締役。2011年 病を得て離職。2016年『東大全共闘と社会主義』(全5巻)を(株)芙蓉書房出版より刊行。
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