著者:ハンデウン
ページ数:76

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序言 欠史9代の実体はホアカリ(火明)=ニギハヤヒ(饒速日)王朝
 ①神武、②綏靖、③安寧、④懿徳、⑤孝昭、⑥孝安、⑦孝霊、⑧孝元、⑨開化、と続く大和王朝は欠史9代などと称され、架空の存在だと見られているのじゃが、検証していくと、確かに虚構譚であることが浮き彫りになってくるのじゃ。
 『日本書紀』には、神武が東征して来る以前に、ニギハヤヒ(饒速日)というものが大和の地に降り立ったという伝承を伝えているのじゃが、そのニギハヤヒは、神武軍に討伐されたのではなく、言い換えれば、討伐されたように見せかけられて、その実、ニギハヤヒ王朝がそのまま存在していたことが明らかになったのじゃ。
 そのニギハヤヒ王朝は、あるいは三輪王朝などと称されているのじゃが、筆者は以前、その王朝をプレ大和王朝と称して論述したことがあり、今は新羅系山陰王朝の構成国の一員と見ているのじゃ。それは、初代神武が新羅系の人(神)格であることを『小説日本書紀13神武東征~神武東征譚は沸流百済の大和侵寇譚』で明らかにしたし、2代綏靖もニギハヤヒ後裔の磯城県主であることを『小説日本書紀14綏靖~綏靖の実体は磯城王朝頭領の名前だけ盗用』で明らかにしたのじゃ。
 新羅系山陰王朝というのは、出雲を宗主国とする山陰海岸に展開された連合国で、但馬、丹後、若狭などの国が大きな役割を担っていたと考えられ、なかでも丹後の比重が極めて大きかったと思われるのじゃ。その丹後の勢力が大和に進出し、ニギハヤヒ王朝を樹立したと考えられるのじゃ。
 ニギハヤヒはホアカリと同一人(神)格であり、ホアカリ王朝とも言っていいと思うのじゃが、天孫ニニギの子にホスセリ(火闌降)、ヒコホホデミ(彦火火出見)、ホアカリ(火明)の3子があって、ホスセリは隼人らの祖、ヒコホホデミは神武に繋がり、ホアカリは尾張連らの祖とあるのじゃ。
 ホアカリ=ニギハヤヒを始祖とする氏族は、物部氏、海部氏、尾張氏ということになり、同族なのじゃ。これら大族がすべて同族ということになると、少しおかしな感じもするのじゃが、換言すれば、新羅系山陰王朝の構成氏族ということになるのじゃ。
 これら新羅系山陰王朝を簒奪したのが、百済系大和王朝で、400年前後に、高句麗広開土王に撃破された沸流百済が大和に侵寇し、突如、百済系大和朝廷を樹立し、その百済系大和王朝が、新羅系山陰王朝よりもはるか以前から大和の地に存在していたかのように偽装、捏造したのじゃ。それが神武から始まる欠史9代の実像じゃ。
 さて、今回の『小説日本書紀15安寧~安寧の実体はホアカリ(天火明)6世孫のタケタセ(建田背)』では、どのような実態が浮かび上がってくるのかのお。
 なお、底本は、宇治谷猛現代訳『日本書紀』じゃ。〔追〕尊称の尊・命・神などは省略しているのでご了承願いたい。  2018年10月  ハンデウン

小説日本書紀15安寧 安寧の実体はホアカリ(天火明)6世孫のタケタセ(建田背) 目次
序言 欠史9代の実体はホアカリ(火明)=ニギハヤヒ(饒速日)王朝
安寧の条 大略
安寧は神霊ではなく磯城王国頭領が幽霊のように名前だけ抜け出した架空の存在
磯城県主はニギハヤヒ(饒速日)の後孫
磯城県主は物部氏一族
大和は京都丹後勢力の海部氏一族が席巻
大和には神武東征以前に磯城王国や葛城王国が存在
安寧はウマシマチ直系3世のオオネ(大禰)?
タケタセの元名は笠水彦で別名も天御蔭、清日子、高天彦など多数
タケタセの別名清日子はアマノヒボコ(天日槍)の子孫
タケタセこと笠水彦は丹後から山背、大和へと移った
『尾張氏系図』では尾張氏の遠祖が笠水彦という別名をもっている
笠水彦の丹後での本拠地はかつての加佐郡(現舞鶴市)?
笠水彦はホアカリ自身、4世孫、6世孫などと伝承が混乱
建田背の娘稲田姫がスサノオの妻奇稲田姫であれば驚天動地
玉手見こと安寧がタケタセ(建田背)の別名玉手見と一致
葛城の旧地名は高尾張で尾張氏族由縁の地
葛城山の地主神は鴨君の祖神アジスキタカヒコネ(味耜高彦根)
タケツノミの山城入りはタケタセの大和入りを脚色したもの?
磯城県主はニキハヤヒの孫ヒコユジ(彦湯支)から始まった
片塩浮穴宮は大和国の三倉堂村(大和高田市)か?
安寧の片塩浮穴宮は大和ではなく河内?
安寧は綏靖の子ではなく弟?
コトシロヌシ(事代主)を祀る氏族は葛城の古い豪族である鴨(加茂)氏
安寧はどうして出雲の女人を正妃にしたのか?
阿刀氏族はニギハヤヒの後孫である河内の物部氏族
大間宿禰の娘糸井姫は磯城王国の頭領オオネ(大禰)の娘?
安寧の世にホアカリ(天火明)がオオナムチ(大己貴)の命令で但馬の地を開拓
猪を冠せられる氏族が王族であったことを示唆
生玉兄日子と剣根の兄弟が鴨氏族と葛城氏族の祖になった
那婆理(名張)に居住していた須知(周知)一族は渡来系?
イクタマ(生魂)とシキツヒコが同人(神)格という可能性も
新羅が派遣した木工集団が猪名部だが祖神はイカガシコオ(物部氏)
安寧の古墳は磯城王国統領の陵墓?
結語 偽書の烙印を押し真実の歴史を封殺
・・・・・
安寧は神霊ではなく磯城王国頭領が幽霊のように名前だけ抜け出した架空の存在

 安寧ことシキツヒコとタマテミという名称は、タマは神霊の一つである魂の意味、テとミは、神名の末尾のテ・ミと同語であり、特定の神霊観を表わす言葉であり、タマテミは、それぞれ異なる神霊観を表わすタマ・テ・ミという語を重ねて、神霊性を強調したもので、神霊名そのものにほかならないというのじゃ。そして、シキツヒコのシキは、大和の磯城の首長を意味する名であろうというのじゃ。つまり、タマテミは神霊名であり、シキツヒコは人名風で、両者は名前の性格が根本的に異なり、シキツヒコタマテミは、人名と神霊名という性格の異なる二つの名をつなぎ合わせてつくられたことを物語っている、という解釈があるのじゃ。
 換言すれば、シキツヒコは、磯城地方の統領にふさわしい名前だが、安寧が実在したことを意味するものではなく、安寧の母が磯城県主の娘であったことに因むものであろうというのじゃ。安寧の妃である川津姫、糸井姫は、その名からして川や井のほとりで、水神を祭る巫女であり、安寧とその妃の関係も、水神とその妻の巫女の関係にほかならないというのじゃ。安寧などの都邑地が葛城地域に集中しているのは、安寧は神霊であり、葛城は神の国という観念があったから、神霊の都するところは神の国である葛城がもっともふさわしいと考えたというのじゃ。
 何がなんでも神霊という語をくっつけなければ気がすまないというような論述じゃが、人名風だけの名しかない弟の磯城津彦は、どのように説明するのかのお。兄弟なら同じ人(神)格に解釈されてしかるべきだと思うのじゃが、このような解釈は、神田とか玉山とかいう姓を、無理やり神霊に結びつけて解釈しようというのと何ら変らないと思うのじゃ。要するに、言葉明瞭、意味不明の解釈じゃ。
 なにかもっともらしい説のようにも見えるのじゃが、歴史を空想の世界に誘導するような論述じゃ。歴史は人間が営む現実であって、神の国は空想の世界じゃ。ミソもクソも一緒にしたのでは話にならんじゃろ。もっとも『記・紀』もその類いじゃがなあ。結論を先にいえば、安寧は神霊ではなく、磯城王国の頭領が幽霊のように名前だけ抜け出した架空の存在なのじゃ。そのように創作したのは、『記・紀』編纂者らの真実を覆い隠す罪深い所業なのじゃ。
結語 偽書の烙印お押し真実の歴史を封殺

 前著『小説日本書紀14綏靖~綏靖の実体は磯城王朝頭領の名前だけ盗用』では、綏靖の実体がニギハヤヒの子ウマシマチの後裔である磯城県主であることを明らかにしたのじゃが、今回の『小説日本書紀15安寧~安寧の実体はホアカリ(天火明)6世孫のタケタセ(建田背)』では、安寧が、ホアカリ6世孫のタケタセであることを突き止めた。
 タケタセは、元の名を笠水彦といい、天御蔭、清日子、高天彦、大字那比、建日潟、日高彦、大海宿禰など多くの別名があり、驚くことに大己貴もタケタセの別名だというのじゃ。ということになれば、タケタセはオオナムチ(大己貴)の名前で『記・紀』に取り上げられていることになり、まさに超人としての活躍が髣髴としてくるのじゃ。
 ところが、タケタセの元の名である笠水彦は、ホアカリの別名、あるいはホアカリの4世孫、安寧と同一人(神)格とみられるタケタセはホアカリの6世孫となっているのじゃ。そうなるとタケタセそのものの実在もあやしくなってくるのじゃが、笠水が、青銅や製鉄に必要な池あるいは泉の水という普通名詞であるとすれば、泉を管理するその時々の統領が笠水彦と称されたことになり、何ら問題はないじゃろ。あるいは、世襲名であったり、大国主という名称同様に連合体の頭領名であったりすれば、その場合も問題はないじゃろ。
 安寧を多角的に考察していくと、磯城王国の頭領のイメージが浮かびあがってくるし、その実体は、海部氏一族であったことが明らかになったのじゃ。海部氏は、尾張氏や物部氏とも同族であり、海神豊玉彦を祖とする安曇氏とホアカリを祖とする海部氏が、同一氏族であることを『海部氏勘注系図』は明らかにしているのじゃ。
 そのような実態が、『記・紀』という偽史編纂の過程で隠蔽されたと思われるのじゃ。その隠蔽は、国家権力によって、陰に陽に敢行されたと思われ、命にかかわる暴力などで黙視せざるを得ない状況に追い込まれたと思われるのじゃ。

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