著者:志津乃
ページ数:254
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私が初めて『源氏物語』に触れたのは中学生の頃でした。教科書に少し出てきてあまりの意味の分からなさに驚いたものです。そしてこれが受験で必須の項目らしいと聞いて絶望しました。しかし絶望してばかりもいられないので
そうだ、図書館で現代語訳を借りて読もう。それで内容を覚えたら勝ちなんじゃないか?
そう思って図書館に走り、本を手に取りました。
ところが。
古くて誰にも読まれた形跡のない『源氏物語』は、ものすごく流麗な日本語だということだけは分かるのですが、中学生の私にはその現代語でさえも難しすぎました。私は再び絶望し、本を閉じてそっと棚に戻したのでした。
さてどうしたものかなあ、と思っていたらなんと、教室で漫画『あさきゆめみし』が回り始めたのです。出所は分からないけれど(笑)、もうとにかくその流れに入って、私は読みました。ありがたかった。これでやっと物語の設定や登場人物のキャラクター、ストーリーの大枠が理解できたのです。
やれやれこれで一安心、おかげでなんとか受験もクリアできました。
が、それでもなんだかずっと、私には『源氏物語』にモヤモヤがあったのです。
そもそもなぜ、光源氏は天皇にならないのか?あんなに父帝に愛されているなら帝になればいいのに。
光源氏は「私は何をしても許される身なのです」とか言って、好き勝手に女漁りをして、紫の上にいたってはこれ、幼女誘拐なんじゃないだろうかとさえ思えるんだけど、でも実際お咎めなしだった。それなのになぜ、朧月夜が相手の時だけは咎められたんだろう?
物語中でほぼ唯一、光源氏を嫌っていた敵役は弘徽殿女御だったけど、なぜ彼女はそんなに光源氏を嫌うのだろう?
などなど。各種の恋愛模様ではなく、私はこの物語の大きな流れ、政治的背景についてぼんやりとした疑問を持ち続けていたのでした。
なのでこの本では主に、この物語の前提となるような背景が理解できるように、解説を交えながら現代語訳にしています。原作にない内容が創作も含めて沢山盛り込まれているので、「超訳」としました。「桐壺」だけを扱っているのは、この章が「光源氏以前」の話であり、それ以後のストーリーの土台となっていると思ったからです。
この本は
『源氏物語』を理解したい!
『あさきゆめみし』は読んで大枠は理解したけどなんだかまだよくわからない!
受験対策で『源氏物語』をなんとか攻略したい!
いつか読んでみたいと思っていた『源氏物語』を読むきっかけにしたい!
という、受験生や元受験生の大人の方々に向けて書いています。
この本を楽しみながら読むことで、きっと『源氏物語』の基礎となる当時のものの考え方、政治的制度や背景が理解できるようになり、「桐壺」の先を読んだ時にも「そりゃあ、光源氏は結婚してても好き勝手できるはずだよね」とか「確かに、明石に遊びに来れるのは頭中将だけだよな」なんてことが、感覚的に分かるようになっているはずです。
古くて難しい『源氏物語』ですが、この物語の登場人物と私たちには、確かに共通する感覚があるのです。私はそのことをぜひ皆さんにも実感してほしいし、この本がそのための理解の一助となることを願ってやみません。
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