著者:やすい ゆたか
ページ数:334

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「鉄腕アトム!さあ起きろ、君の出番だぞ。いよいよエルサレムの国連本部を攻撃だ、人間共の首脳が対ロボット戦の戦略会議を開催している真最中だ。」上村陽一は目覚めれば鉄腕アトムに成っていた。彼は三輪智子らと一緒の大阪府立大手門高校の二年生で学年末試験が終わったばかりだった。

二人は倫理担当の榊周次先生の授業が好きという共通点があった。榊先生は先ず好きになることが学力の最大要因だと理由づけして、一番校なのに受験対策などかまわずに、ストレートに生きる意味、存在の不思議、人間とは何かを考えさせ、生徒たち自身にディスカッションさせるタイプの倫理教師である。

また彼は大学で非常勤講師をしていて、倫理学入門や哲学入門など哲学思想関係を担当している。倫理学や哲学に特別興味もない学生に、学問的な硬い話をいきなりぶつけても、暖簾に腕押し、糠に釘で反応がないので、なんとか哲学ファンタジーにして、ファンタジーを楽しみながら講義を受けられるようにしたいと、テキストの哲学ファンタジー化を試みようとしていた。

大手門高校の倫理の授業では、AIが人類を支配するという2045年問題やその頃には汎用ロボットの普及で、雇用は人口の一割未満になるので、それに対してどう対応すべきかということと、人間とは何にで何をきっかけに人は動物的段階から人間的段階に脱皮したのかについて熱心にディスカッションされていた。

陽一は、死に対する恐怖心から医学部に進学して永遠の生命に挑戦する研究者になろうと思っていたが、得意だった理数系が伸び悩み、哲学や倫理学に興味が湧いていたのでいずれに進学すべきか苦しんでいた。榊先生は、人間を身体とそこに宿る人格に限定しないで、社会的諸事物や環境的自然、組織体にまで包括してとらえる包括的ヒューマニズムを二年最後の授業で展開した。陽一は人間でないものも含めて人間というのには、矛盾を感じて納得いかなかった。それで「ソフィーの世界」の読書会で、ファンタジーの構想を話してもらうことに成っているので、その際に疑問をぶつけようと思っていた。

なんと榊先生はインターネットのウェブ空間つまり電脳空間でバーチャルリアリティを体感するファンタジーを構想しているという。電脳世界に迷い込んで、そこで歴史上の英雄や架空のドラマの主人公たとえば鉄腕アトムなどになりきって、活躍する、そしてその世界から戻るとまた元の高校生に戻るという設定だという。でもどうしてそんなバーチャル・リアリティを体験させることができるか、思いつきはいいけれど、消防(小学生坊やの発想)なところがあると陽一は突っ込んだ。

するとなんと陽一自身がそのバーチャルリアリティを体験させられ、鉄腕アトムになって、ロボットと人間の戦争に巻き込まれることになるのである。その詳細は—–。それは是非ご購読ください。

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