著者:竹山伸彦
ページ数:53

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松下幸之助が、師表と仰ぐ江崎利一との秘話
(第二巻)

グリコのCM会議、大阪の文なし会、経営の神様達のお言葉。サントリーの鳥井信治郎様の教え。

目次

一、大阪の文なし会

二、グリコのCM会議

三、江崎様の経営の原点

四、経営の神様達のお言葉

はじめに

第一巻では、江崎利一様や松下幸之助様のお話が中心でしたが、今回は、お二人が、同じ関西の経営者として、親交を温めておられました『文なし会』の方達のお話も、少し加味して、述べさせて頂きましたら、幸いです。

一、大阪の文なし会

江崎利一様と松下幸之助様のご縁と『大阪の文なし会』の経営の神様達

 江崎利一様と松下幸之助様との、無二の親友とまで、言われましたご関係は、松下幸之助様、ご本人が、江崎利一様の執筆なされた書籍の『商道ひとすじの記』(日本実業出版社、昭和五十二年七月十日初版発行)、の『序文』に書かれておられますので、それを少し引用させて頂きます。

『 序文   松下幸之助

 江崎さんは、現在、九十四歳、私よりちょうど一まわり上の午年である……(中略)
 事業は、異なっていても、事業に対する信念、精神には、相通ずるものを感じ、非常に尊敬の念を覚え、かつ、意気投合したのであった。そして、これからも時折会って話をしたい、ということからも、本文にある『文なし会』をつくり、そこに同じような経歴を持つ四人が、後から加わったのである。
サントリーの鳥井信治郎さんは最年長。……(中略)
また、中山製鋼の中山悦治さんは、……(中略)高炉を建てるという、余人のマネの出来ないようなことをやってのけた人。
さらに京都で重工業に成功した、寿工業の常田健次郎さん、掘抜帽子の掘抜義太郎さんは、最年少で、……(中略)帽子では、日本一になった。
 皆毎月大和屋あたりを根城にして、お互いに意気軒昂と、何でも話し合える、まことに楽しい会合であった。…(中略)
 九十四歳の宇崎さんが、そのような抜群の成績を実現されているのだから、まことにもって実業界の師表とすべきである。……(中略)』
『商道ひとすじの記』(日本実業出版社、昭和五十二年七月十日初版発行)の『序文』より

 少々長くなりましたが、江崎利一様と松下幸之助様や当時の『文なし会』の皆様の交流の様子を、ご紹介させて頂きました。
 私は、この本の内容は、とても素晴らしいので、皆様に是非ともお読みいただけることをお勧めさせて頂きます。

京都の大学からの講師の依頼

 以上のように戦前から同じ関西の経営者ということで、毎月、大阪の大和屋に集合されまして、『文なし会』の皆様で、酒を酌み交わしながら、親睦を深めて、いろいろなお話や情報交換をしておられたそうです。
 そんな中、江崎利一様に京都のある大学から、講師の依頼が、来たそうです。江崎様は、すぐに引き受けられましたが、その大学から江崎利一様とは、業種が違う、もう一人方の講師の方のお願いも来たそうです。つまり、江崎様と、もうお一人方と、お二人での講師の依頼でした。

このことを大和屋の『文なし会』で、江崎様が、
江崎様「どなたか、一緒に講師に行ってもらえませんか?」
    と、皆様に相談されたそうです。
すると、最年長(江崎様より、三歳年上)のサントリーの鳥井信治郎様は、忙しくてダメで、地元の京都の寿工業の常田健次郎様も、その日は、予定があるのでダメですと、『まず両ジロウさまが断られました(松下幸之助様)』、とのことでした。

 そして、皆様とお話をしているうちに、松下幸之助様に、講師のお鉢が、回ってきたそうです。松下様は、お断りをしょうと思われて、
松下様「私は、多くの学生さんの前で話すのは、郷里の和歌山の学芸会の浦島太郎さん以来です。」
    と、おっしゃられましたら、中山製鋼の中山悦治様が、
中山様「浦島太郎さん以来とは、ちょうどいいですね。松下様が、郷里の和歌山の学芸会をやられたのは、明治の昔です
    から、それから大正、昭和と来ているので、時代を超えての発表会への参加とは、浦島太郎さんみたいで、良い  
    では、ないでしょうか。」
    と、笑いながら、おっしゃられたそうです。これには皆様、大笑いをされまして、『そうだ!そうだ!』と、い 
    うことになったそうです。

そして、掘抜帽子の掘抜義太郎さんが、
掘抜様「松下さん、いくら浦島太郎さん以来と言っても、玉手箱を開けて、お爺さんになったりしないで下さいね。」
    と、言われましたので、また、皆様、大笑いをされたそうです。

江崎利一様は、松下幸之助様が、少し緊張しておられるようなご様子を見られまして、心配になられまして、隣で、酌婦さんに酌をされて、お酒を飲んでおられる鳥井信治郎様に相談をされたそうです。

江崎様「この場で急に、松下幸之助様に決まりましたが、場合によりましては、大阪商工会議所の他の人に、私からお願
    いをしてみましょうか?」
    と、鳥井様に江崎様が、お聞きされましたら
鳥井様「人間、何事も経験が大切です。講師は、松下幸之助さんで、行きましょう。」
    と、返事をなされたそうです。そして、離れた場所で、常田健次郎さんさんとお話をしておられた松下幸之助様 
    に向かって、鳥井様が、

鳥井様「松下さん、講師の件、やってみなはれ!」
    と、大きな声で言われまして、松下幸之助様の講師が決まったそうです。

 そして、江崎利一様と松下幸之助様が、講師として行かれました京都の大学と言うのが、何と私の母校の立命館大学でした。それで、江崎利一様も松下幸之助様も、立命館大学のことをよくご存じだったのです。礼儀正しくて、まじめな学生さん達でした(江崎利一様、松下幸之助様)とのことでした。このような母校と戦前の先輩方に感謝、感謝です。

お二人は講師として、それぞれ登壇されまして、ご自分の体験談や、経営者としての心構え等のお話をされたそうです。質疑応答の時には、学生さんからの質問に、お答えをされながら、学生さん達へのアドバイス等も、なされたそうです。
 それらの学生さんや、一般のお客さんに混じって、うんうんと、うなづきながら聞いておられる聴衆の方が、おられたそうです。
 松下幸之助様が、目をこらしてよく見られると、何とサントリーの鳥井信治郎様でした。さらに、予定があるはずの常田健次郎さんや、中山悦治さん、掘抜義太郎さんまで、『文なし会』の皆様が、予定を変更なされまして、わざわざ、この京都の立命館大学でのお二人の講演会を聴きに来ておられたそうです。これには、江崎利一様も松下幸之助様も驚いたと同時に、皆様の友情に対して、嬉しくもあったそうです。

松下様「このことは、戦前の懐かしい思い出です。」
    と、笑いながらおっしゃっておられました。

 私が初めて、江崎利一様から松下幸之助様を紹介して頂きました時に
私  「立命館大学の経営学部の竹山伸彦と申します。よろしく、お願い申し上げます。」
    と、ご挨拶を致しましたら

松下様「立命館大学の学生さんですか。ご縁が、ありますね。」
    と、おっしゃって頂きましたのは、この戦前の講演会で、京都の母校を直接訪問されておられましたので、よく
    知っておられたのだ、と後からわかりました。

松下幸之助様によりますと、当時の立命館大学の広小路キャンパスの玄関のガラスが、『東京の銀座のショーウィンドーのように明るくて、おしゃれでした。』(松下幸之助様)とのことでした。

林間学校

和歌山県の高野山では、毎年、近畿地方を中心に、小学校の五年生の生徒さん達が、夏休みの林間学校に二泊三日か、三泊四日で、来ておられました。私達の滞在していた龍泉院なも順番に、東羽衣小学校、五條小学校、西田辺小学校や高鷲小学校等の生徒さん達が、入れ替わり立ち代わり、一か月間ほどのローテーションで、来ておられました。その生徒さん達が、休憩時間に、お寺の境内で、遊んでいると江崎利一様は、よく龍泉院の下駄をはかれて、生徒さん達に近づいて行かれます。そして、林間学校の生徒さん達との会話を楽しんでおられました。

江崎様「おやつは、何が好きですか?」
    と、江崎様が、生徒さん達に聞かれると

生徒さん「私は、グリコのポッキーチョコレートです。」
生徒さん「私は、森永のミルクキャラメルです。」
生徒さん「私は、明治のマーブルチョコレートとグリコのビスコです。」
     と、言うように、素直に生徒さん達が、ひとり、ひとり、答えて行かれます。
     そして、江崎様は、また、聞かれます。

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