著者:村上 宣寛
¥100¥0

第5版について。

初版を作成してから時間が経ったので、写真などを入れ替え、全体的に大幅な手直しを行った。歩行の章ではブーツとシューズの違い、歩行エネルギーに関する新しい研究などを詳しく追加した。衣服の章は記述があまりに少なかったので、大きく書き加えた。特に重ね着の原理では、どのような素材をどのように重ね着すべきかを詳しく説明した。その他、バックパック、高山病でも加筆と改訂を行った。

第一版のまえがきを引用しておく。

 ここ11年は毎夏一ヵ月ほどアメリカに行ってハイキング(いわゆるトレッキング)をしていた。アメリカのハイカーと議論を戦わせることも多かった。その関係で、ハイキングに関するさまざまなトピックについて、必要とあれば学術論文を検索し、読んで考えるようになった。その成果をまとめたのが、「ハイキング・ハンドブック」(新曜社、2013/2014年)である。残念ながら、この5~6年に明確になったことを書く機会がない。
 日本の山関係の雑誌やウェブ記事を見る機会も増えた。きれいな画像で飾られていて、ファッション雑誌のようである。内容は変化するが、進歩から取り残されているようだ。数十年前の内容が焼き直しされている。
 アメリカのアウトドア雑誌でも似たようなものだが、若干、進歩はしている。それで、日本の遅れが目立つようになった。単なる流行の遅れはよいのだが、命に関わる知識も遅れている。
 例えば、SOS発信装置の販売は、アメリカに遅れること8年である。遭難時にSOS発信ができればピン・ポイントで救助できる。捜索活動は、本人か、その関係者が救助依頼しない限り、開始できない。どうして持とうとしないのか、筆者には理解できない。年契約で月12ドルである。どこでもメールの送受信ができるし、山岳保険としては格安ではないか。
 高山病への対処法も知らない人が多すぎる。対処を間違うと命に関わる。2019年に高山病予防のガイドラインが改訂された。高所順応は簡単で、2,500m程度の所に数日滞在するだけで良い。適切な知識があれば、高山病で命を失うことはない。

 日本では、毒蛇に咬まれた時にポイズン・リムーバーを使うという人が多い。残念ながら、効力がないと科学的には否定されている。これをエマージェンシー・キットに含めている人がいたら、信用してはいけない。さすがに、アメリカ人ハイカーもこれを10エッセンシャル・キットに含めていない。これを含めると、嘲笑されてしまうだろう。無用の物を持ち歩くことは、安全に反することである。
 「ハイキング・ハンドブック」と記述に若干の重複はあるが、歩き方、テント泊、衣服、食事などでも、安全性に関係する事柄は、圧縮して取り出し、最新の内容を補足した。また、可能な限りコンパクトにまとめた。なるべく新しい知識を吸収し、安全なハイキングをしてほしい。 

目次
第1章 プランニング
跡を残さない/いつ、どこへ、だれと/準備/山の攻略法
第2章 靴の選び方
ブーツとシューズはどう違うか/マメを防ぐには/靴の調整/インソールは/ソックス/ミニマム・シューズは危険
第3章 効率的な歩き方
歩行の原理/重い靴は疲れるか/登りと下りでは/トレッキング・ポールを使う/適度なふらつき/歩行エネルギー/疲れない歩き方
第4章 荷物を背負う
バックパックの種類/バックパックの選び方/バックパックの重心は/パックパックのどこが壊れるか/筆者のバックパック/パッキング/バックパックの大きさ
第5章 衣服の選び方
どうして熱が奪われるのか/衣服の基本/レイアード・システム/ベース・レイヤー/インシュレーション・レイヤー/シェル・レイヤー/レイヤリングの原理/コンプレッション・タイツ/帽子と手袋/紫外線よけ/寒さに強くなるには/筆者のレイヤード・システム/実際の服装
第6章 夜を過ごす
テントの種類/強風下で立てるには/状況に応じてペグを使い分ける/筆者のテント/トラブル発生/スリーピング・バッグ/マットレスは不可欠/寒い夜でも温かく過ごす方法/ダウンの追加/ダウン製品の洗濯/野外トイレの作法
第7章 食事
ストーブ/事故防止には水/浄水器があれば/ダイエットの基本/どのダイエットが良いか/タンパク質をどれだけ摂るべきか/抗酸化サプリ/エネルギー消費の計算/自家製ヒートパック/食事例
第8章 危険を回避する
現在位置を知る/怪我を防ぐには/徒渉/日本では捜索はどう行われるか/SOS発信装置を持とう/
電源の確保/エマージェンシー・キット
第9章 ハイキング関連の怪我と病気
RICEとは/消炎効果のある薬物/主なスポーツ損傷と対処法/熱中症/筋痙攣/低体温症/高山病/毒蛇に咬まれたら

シリーズ一覧

  • 同シリーズの電子書籍はありませんでした。

 

  Kindle Unlimitedは、現在30日間無料体験キャンペーンを行っています!

この期間中は料金が980円→0円となるため、この記事で紹介している電子書籍は、すべてこのKindle Unlimited無料体験で読むことが可能です。

Kindle Unlimited 無料体験に登録する