著者:日向走介
¥550¥0

カフェ吉祥寺は、井の頭公園に面した一角に存在する、白壁の瀟洒なカフェである。
主人公の沢村光は、元銀行マンで現在は個人投資家。このカフェ吉祥寺に出入りしては友人たちからのメールをよみ、一日を過ごす。

9.11の時、ニューヨークでは何が起こっていたのか。
度重なる政権交代の裏で起こっていた事件とは?
若手銀行員の営業マンが体験した為替予約の悲劇とは・・・

フィクションのようでノンフィクション。
実際の金融事件を元に、元銀行マンの沢村の周りで繰り広げられる様々な人間模様を5つの物語から楽しむ新感覚の「金融小説」です。

▼もくじ
沢村という男
ニューヨークの怪人
年度の初めの取引は寿司屋にて
私募債の画面
為替予約
君子危うきに近づかず

▼本文より
カフェ吉祥寺は、井の頭公園に面した一角に存在する、白壁の瀟洒なカフェである。マスターは四季折々の変化に囲まれたこの場所で、30年間変わらず朝8時から夜8時までの12時間、訪れるお客の為に心安らぐ空間を提供している。開店当初から白いワイシャツと、黒のスラックス、腰から黒いエプロンを巻き、お客の注文を丁寧に受けて来た。白髪一つなかった頭髪も今ではロマンスグレーへと変わっており、鏡に映る自分の姿を見ながら、まるで井の頭公園の景色が、夏から秋へと変わっていった様な風情だとぼんやり考えていた。
そんな2008年。リーマンショック発生後、とある男が店に顔を出すようになった。その男の名前は、沢村光という。最初はクリエーターがパソコンで作業をする為にこの場所を見つけたのかと思っていたが、どうやらそうでは無いらしい。毎日午後3時半に店へ訪れてはブレンドコーヒーを頼み、時折難しい顔をしてみたり、一人にやけてみたりと、表情がコロコロと変わる。マスターはその姿を見て、沢村のことを正直変わり者だと思っていた。毎日一人ということは、友達もいないのだろうか? 無暗に他人の心へ入って行かないのがこの商売の掟であり、あくまで心地よい空間を提供するのがプロの仕事だと心に決めていたマスターは、今も沢村が何をやっているのか詮索するつもりは無い。ただ、時折交わす会話の中で彼が、都市銀行に入った後アジア危機に遭い、外資系証券会社を渡り歩き、リーマンショック後の金融危機で職を失った無職の男であること。また、ある程度市場が落ち着いたら金融に復帰しようと考えていたが、先進国の不振に加えて今まで世界経済を牽引して来たBRICSも翳りが見えて来た為、未だに無職を続けている、という経緯だけは知っている。彼、沢村は、取り敢えず何もやらないと堕落してしまうという自分の性格が良く分かっていたらしく、金融の勘をキープする為にも所謂デイトレーダーをやりながらマーケットに接点を残しておこうとしていたらしい。

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