著者:解場繭砥
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桜に侵食される奇病を患った伯母。
桜への恐怖と不思議な交流は超現実の世界へ暴走する。

(以下、本文より)
—–
 ――病んでいます。
 桜の絵葉書の隅にそう小さい文字で書かれていた。本文はそれだけだった。
—–
中指の先に伯母は針を突き立てたのだった。痛い、と反射的に思った。ためらって覚悟を決めて刺したのではなかった。それは痒いから背中を掻くという程度の日常とひと続きだった。
 そして伯母は左手を私の方に差し出した。血が滲み出すと思ったがそうはならなかった。そのかわり桜の花びらが一枚出現した。

—–
「多分手首を切り落としたら木が一本あらわれる」伯母は微笑みさえ浮かべていた。
—–
「あたしもね、逃げてるんだ。そうして逃げて逃げて逃げるうちに何から逃げているのか忘れてしまった。でも足だけは動かし続けているの」
—–
「あなたはこの扉を開けてはいけないの」
「どうしてですか?」
「だって、まだ済んでいないのよ」

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