著者:上田寛
ページ数:122

¥249¥0

 現実の経済を前提とした経済原論

 経済とは何か?経済の意義とは?何故人類は発展してきたのか?貨幣とは?国家とは?政治と市場経済の関係性とは?失業が起こるのはなぜか?グローバル化の意味する事は何か?
 これらの問にハッキリ答えられる人はいるだろうか?これらの疑問が対象とする事象はどれも曖昧あるいは複雑でハッキリした答えを用意する事が困難に思えるのではないだろうか?

 本書で言いたい事を簡単にまとめるなら、「新たな見方をすることで、複雑に見えていた現実の経済や社会の仕組みを秩序立てて説明する事が出来る」と言う事である。つまりパラダイム転換であり、その新たな見方が、本書が提示する原理となる仮説「経済とは助け合いである」と言う事である。
 経済の仕組みを認識するために我々が気付くべき原点は我々が助け合い無しでは生きていけないという事実である。そこを原点と捉えることでなぜ我々が助け合う必要があるかも、我々が現実に助け合いをしている事も理解出来るようになる。つまり、我々は助け合う事で生き残り、更には発展を遂げてきた。
 しかし、その助け合いとは自分自身の判断や認識に基づくものだけではない。つまり、我々の判断や認識を超えて行われる助け合いが存在している。そのせいで、我々はそれらの助け合いを助け合いだとは認識できなくなっているのではないか。しかし、助け合いだとは認識できなくとも、生活を支え発展を生み出すそれらの行為が存在している事は認識しており、それらの行為を経済と呼びならわす様になっているのではないだろうか。
 例えば、現実の経済という時に念頭に浮かぶと思われる市場経済、つまり貨幣を媒介にした取引の経済は「無意識にであっても、 貨幣を受け取る時に助け、貨幣を払う時に助けてもらう様な助け合いの仕方である」と説明する事ができる。
 つまり市場経済において貨幣は「助けた証」であり「助けてもらう権利」と言える。しかしながら貨幣がそういうものとして作られたのではなく、このような機能を持つものを貨幣と呼んでいるだけである。
 また経済が助け合いであると捉える事で、市場経済に限らず、現在における政治やボランティアあるいは地域社会ひいては友人関係に見られる助け合いまでも、単一の助け合いと言う概念で見る事が出来る。これにより、それぞれが一つの補完しあう助け合いのシステムと見なす事が可能となり、その関係性を理解出来る様になる。
 また、その違いは助け合いの判断の仕方であり、貨幣の存在の有無などではない。仮に貨幣を使っていたとしても、判断の仕方に違いがあるなら、違う助け合いの形として認識し、その良し悪しを考える事も出来るだろう。例えば、ギャンブルや税金も貨幣を使用する。しかし、これらの判断の仕方には違いがあり別の助け合いの仕方として認識すべきである。
 経済が助け合いであったとしても、経済つまり助け合いがすべて良いかと言えば、それは別次元の問いである。何について助け合うか、あるいは何のために助け合うかによって違ってくる。本論で主張するのは経済が助け合いであるという事実であって、助け合いが良いと言う事を言っているのではないと言う事である。後述するが戦争のためにも経済は行われるし犯罪のためにも行われる。そのため経済自体について、経済的なものをすべて良い、あるいは悪いと考える事は無意味である。
 この何について助け合うか、あるいは何のために助け合うかが本書で言うところの方向性であり、従来の経済学がおろそかにしてきた部分でもある。この方向性の概念を理解する事で従来の経済学では上手く説明出来ていない現実も秩序立てて説明する事が出来る。政治や市場経済などの判断の仕方の違いは、この方向性を決める判断の仕方の違いである。
 本論では、経済を助け合いであると捉えることで、我々の世界に関して、今までなされてきた以上に広い範囲で、秩序だった説明が可能なことを示すつもりである。しかしながら、その全てを本書で書き切れたわけではない。いや、むしろ、思い付きを基に、その青写真を簡単に示したに過ぎない。そのため、科学と呼ぶには、あまりにお粗末なものである。しかしながら、この思い付きが証明されていく過程こそ科学と呼ぶにふさわしいものであろう。ここから、その道が始まることを願うものである。

シリーズ一覧

  • 同シリーズの電子書籍はありませんでした。

 

  Kindle Unlimitedは、現在30日間無料体験キャンペーンを行っています!

この期間中は料金が980円→0円となるため、この記事で紹介している電子書籍は、すべてこのKindle Unlimited無料体験で読むことが可能です。

Kindle Unlimited 無料体験に登録する