著者:武藤 洋一
ページ数:18

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 過去作につきましては、https://sakiopsystr.wixsite.com/main をご笑覧ください。
 さて、システムトレードについては、既に星の数ほどの手法が世に出回っています。
 そして、オプションについても、星の数ほどではありませんが、様々な指南書、ウェブコンテンツ、情報商材を見かけます。
 ところが、これらの組み合わせとなるオプションのシステムトレードというのは、あまり見かけません。
 わずかに、それに近そうなものとしては、筆者も以前にリリースしました、月に一度のSQ算出日に自動決済するマンスリートレードがあるのですが、いかんせん月に1回しか投資機会がありません。同じ日経平均株価のデリバティブである225先物などでよく見かける、毎日の寄りと引けで発注するシストレというのは、オプションの世界では成り立たないのでしょうか?
 生き馬の目を抜く魑魅魍魎たちが跳梁跋扈する投資の世界ですので、おそらく既に多くの先達の皆さまが、トライされ、チャレンジされている課題だろうと思います。
 にもかかわらず、その手法を公にした著作やウェブコンテンツが見当たらない、ということは、いろいろやってみてもなかなかうまくいきそうにない、ということなのかも知れません。
 しかし、別の可能性も考えられます。というのも、オプションの場合、過去データを使ってバックテストを行うための便利なツールというのが見当たらないからです。
 個別銘柄株や日経225先物であれば、「システムトレードの達人」「シストレ魂」など、あるいはFXであればメタトレーダーといった優秀、有名なツールがあるので、自分で考えついた売買ルールを過去データにあてはめてみて、その通りに売買していたら利益がでていたのかどうか、これらのツールで簡単に検証してみることができます。
 ところが、オプションになると、そうしたツールがないため、過去データを使ったバックテストは、ツールを自作するか、又はExcelのような汎用的な表計算ソフトを使うかするほかなく、いずれにしても、かなり大変な作業になってきます。
 そのため、オプション市場開設(1989年6月)来の過去データを使ったバックテスト、ということを実際に手掛ける暇人は、そうそういないのかも知れません。
 筆者の場合は、ツールを自作するようなプログラミング言語のスキルがあるわけではないので、毎朝の寄付と大引けのオプションの値段を欠かさずExcelシートにコピペし、いろいろな関数をペチペチ打ち込んで、やっとこさバックテストしています(ツールが自作できるなら、そちらを売りに出した方が儲かると思います)。
 今回は、オプションを毎日の寄りと引けでデイトレ(デイリートレード)する手法を検証してみました。
 オプショントレードというと、売りから入る場合はSQ持込狙い、ただし途中で相場が大きく動いて含み損益が拡大したら一旦利益確定またはロスカットし、仕切り直しでSQ持込狙いのポジションを再構築、買いから入る場合は常にタイムディケイとの闘いなのでSQ持込は狙わず短期決戦、相場観に基づきタイミングを謀っての買い建てエントリー、数日スパンでの利益確定、損失については掛け捨ての保険料と思って割り切り、という戦略が一般的だと思いますが、どういうタイミングでどういうポジションを建ててどうなったら決済、という売買ルールが長期的に安定して利益を蓄積していけるのか、いろいろ条件を変えてバックテストしてみると、毎日の大引けでエントリーし、翌立会日の寄付で決済する、というシンプルなデイトレが意外にも好成績となります。この事実は、オプショントレードの世界でも、あまり指摘されていないのではないでしょうか? その意味では超ニッチな着眼点だと思います。
 オプションを売り又は買い、数日から十数日ぐらいのスパンで利益を狙おうとすると、一時的に含み益が膨らむことがあっても、決済タイミングを逸して結局は利益とれない、という経験をよくするのですが、毎日ポジションを建てて毎日決済するというデイトレのルールにしておくと、含み益は萎む前に、含み損は膨らむ前に決済でき、その後また、最新の相場状況に応じて最も利益とれそうな権利行使価格の銘柄で新たにエントリーできる、という仕組みが自然に出来上がるようです。
 ちなみ筆者がバックテストした範囲では、シストレとして成り立ちそうなデイトレは、大引けエントリー、翌寄付決済のパターンだけです。朝の寄付でエントリーして当日大引けで決済する寄り引けシストレや、寄付又は大引けでエントリーして24時間後の同じタイミングで決済するデイトレですと、いかようにパラメーターを工夫してみても、うまくいきません。
 今回作の概要は、次のとおりです。

【売買ルール】
 エントリーは、毎立会日の大引けに、当月限のオプション2枚を引け成りで売買します。当日の日経平均の値動き次第では、エントリーしない場合もあります。
 エントリーするかしないか、する場合どの権利行使価格のプットかコールを売るのか買うのかは、午後3時に現物株市場で日経平均の当日4本値が確定してから、決まります。
 決済は、翌立会日の朝の寄付で、全建玉を成行で決済します。利用する証券会社によって違うようですが、たいてい当日の朝8時ころ以降であれば発注可能です。

【成績】
 日経225オプション市場での取引開始来直近2018年4月末まで28年10か月あまりの過去データに上記売買ルールをあてはめてバックテストした結果の概要は、次のとおりです(売買手数料は考慮していません)。
 オプション市場開設来、暦年ベース(2017年末まで)でも経年ベース(2017年6月まで)でも年単位では負けなし、累計利益は3,568万円、年平均123万円の利益です。月次でみると、347か月でプラスが282か月、勝率81%、PF6.03、週次では1,507週でプラスが1,063週、勝率71%、PF2.78、日次では5,768日(エントリーしてない日は不算入)でプラスが3,697日、勝率64%、PF1.87、となっています。
 全期間中の最大ドローダウン(DD)は、金額幅では125万円(直近最高累積利益額からの後退率17.5%)、継続日数では168日(立会日ベースではなくカレンダーベース、つまり土日、祝休日、年末年始休場日を含めた数字)にとどまっており、したがって累積損益曲線も表紙埋め込みのとおり、安定的な右肩上がりになっているのが見てとれるかと思います。
◎累積損益グラフ https://c.mail.com/@647389126747760328/nD1L_NK-Q42u31HZq6BXGw
◎主要成績指標 https://c.mail.com/@647389126747760328/l7UC__UPTd6agvn6BVS-Bw
◎損益履歴 https://c.mail.com/@647389126747760328/DPQzF2r7Rzye2JvXawmDAg
(本編本文中にリンク張ってあるヤフーBOXはサービス終了しており参照できません)

 オプション取引が始まった1989年6月といえば、バブル景気の真っ最中で、日経平均株価は年末の史上最高値38,915円(終値)に向けて急上昇、しかし年が明けてからは急反落し、9か月で半値近くの2万円まで下がり、いわゆるバブル崩壊、その後は2万円台と1万円割れを行ったり来たりしながら四半世紀を経て今日に至っているわけですが、この間、累積損益曲線の方は、29年負けなしで安定的に利益を蓄積してくれています。

【必要資金】
 オプションですので必要資金の見積もりは難しいのですが、売りの場合ですと、SPAN証拠金やその掛け目は、その時々の相場環境によって変動し、日経平均が急落、暴落する局面では跳ね上がるものの、通常時であれば1枚あたり数十万円ぐらいから、相場が荒れた時で百数十万円ぐらいかと思います。
 買いの場合は証拠金不要で、必要資金は最大でもプレミアム金額で済むわけですが、バックテストデータから過去の最大値を拾いますと、これが意外に高く、最高で130万円のオプションを買っている事例があります。
 よって、売りでも買いでも1枚最大130万円ぐらいの必要資金を覚悟して、最大2枚でエントリーする日はまず2枚分260万円は必要、加えて29年間のバックテスト上の最大ドローダウン幅が145万円ありますので、たまたま実運用を開始したタイミングからこれと同程度のドローダウンに見舞われ始めるケースを想定してこれを加算すると、合計で最低400万円ぐらいではないかと思います。

 なお、バックテストの具体的な手法については、その後リリースしました「Excelで究める日経225オプションのシステムトレード術」を御笑覧ください。

【おことわり】
 本編は、過去データを分析した結果を取りまとめたものであり、将来における投資の成果を保証も示唆もしません。特に、寄り又は引けでの成行発注は、流動性が足りないと値が飛んで不利に約定する場合があります。また、バックテストに使用したデータ及び計算の正確性確保には最大限の注意を払っておりますが、本書及び本紹介の一部又は全部に誤記、遺漏、不備その他の不都合がないことを保証するものではなく、万一何らかの不都合があった場合でも、著作者は何人に対しても、返金・返品、損害賠償その他一切の責任を負いません。

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