著者:玉置 彰宏
ページ数:487

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『ユビキタス・コンピュータ』という言葉は、もう死語になっているのかもしれない。しかしこの言葉が死語になったということは、逆説的にいえばユビキタス・コンピュータが既に実現されていることを意味している。自動炊飯器が『ご飯を炊くコンピュータ』になり、自動車が『走るコンピュータ』になって久しい。そしてこれから『AI時代』を迎えて、この状況はもっと進むだろう。自動運転できる自動車は、今よりもっと多くのコンピュータとソフトウェアを必要とする。これは、自動車に限った話ではない。今コンピュータでコントロールされているものはその関わりがもっと深くなり、今コンピュータと無縁なものもそのうちにコンピュータとの関わりができる。『全ての産業が、ソフトウェア産業になる』という言葉がある。そうなるのは、時間の問題でしかない。
 それにも関わらず今企業でソフトウェアに従事している人たちは、これまでソフトウェアについての充分な教育や訓練を受けてこなかった。当面の作業に必要な知識や技術は、社内などで講習を受ける機会を持つことができる。しかしそれを超える勉強は、そのような方法では困難である。大学で情報関係を専攻して来た人は、非常に少ない。情報関係を専攻した人も実際はセキュリティやネットワーク、映像などを専門にしていて、ソフトウェア工学を専門にしてきた人はもっと少ない。さらに大学で、ソフトウェア工学を教えることができる教員は限られている。端的に言えば今日本のソフトウェアは、原点に戻って対応を考えなければならない状態にあると、私は考える。今ソフトウェアへの対応を怠れば、将来全ての産業に悪影響が波及する可能性がある。
 以上のような認識で、このような状態の改善に少しでも貢献したいと考えて、私はこの原稿を執筆してきた。しかしソフトウェア工学の領域は非常に広く、奥も深い。私一人では、とてもカバーしきれない。そこでこの『ソフトウェア工学の勧め』をソフトウェア工学の『道しるべ』にし、問題意識を持ってもっと勉強したいと考える人に奥に進むにはどのような方法があり、何が参考になるかを示すことにした。従ってこの本の想定読者は、まず今企業の中などでソフトウェアに関わりを持って働いている若い人たち、その人たちを指導する立場にある人たち、さらに将来企業の中でソフトウェア関係の仕事をしたいと考えている大学や専門学校の学生諸君、およびその学生を指導する立場にある教員の皆さんである。
 できるだけ多くの人にこの本を紐解いていただき、ソフトウェアをベースにした日本の産業がこれからも一層発展・拡大し続けることを祈念している。

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