著者:山田博士
ページ数:74
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タイトルは、「NHKスペシャル“介護殺人”当事者たちの告白」
というものでしたが、2016年の10月9日にも、再放映された
ようですね。
これは、日本中で介護を担(にな)う人の数が557万人にも達して、
「介護問題」は、もうけっして他人事じゃなくなった現状に鑑(か
んが)みて、企画されたもののようでした。
そして、「介護殺人」という悲惨な体験をした「加害者」たちの声を、
鋭く聞いた内容だったのです。
いやあ、この内容には、ぼくも驚きました。
でも、この取材は大変だったと思いますね。
だって、多くの「加害者」は、そんな取材にはとても答えられなか
ったはずでしょうし……。
そのときのNHK報道によりますと、2010年から2016年ま
での間に、日本全国で「介護殺人」と思われる事件は、138件も
起きております。
わずか……6年間に、です。
つまり、1年間で約23件。
1か月では約2件。
と言うことは、1週間おきに1件……ということになりますか。
もの凄い頻度(ひんど)です。
★★★
まさに、いまぼくたちの国は、「介護受難時代」に突入したと言っ
ていいのかもしれません。
政府は、「カネがない」といつも叫びながら、在宅介護を国民に押
しつけてきたわけですが、そのツケがいま、各地で噴出しているわ
けですね。
けっして政府に「カネがない」わけじゃなく、自分たちのためには
もの凄い無駄なカネを使っておきながら……国民一人ひとりを、「介
護受難時代」にする。
埼玉県の秩父(ちちぶ)地方のある町で、2016年の2月、警察
に1本の電話が入ったのです。
「妻を刺した……」
83歳の男性が77歳の妻を殺し、みずからも傷だらけになってい
たと言います。
しかし、彼は、一人部屋の留置場から一歩も外に出ず、無言で押し
通し、水以外の食事は口にしないで、9日後に病院で死亡しました。
一人、寂しく……。
なぜ、彼は、ここまで追い込まれたのか。
★★★
「認知症の妻の介護に疲れ、無理心中を図った」と、当初話してい
た彼なのですが、取材で見えてきたのは、理想とも思えるような第
2の人生を送っていた夫婦の姿だったのです。
端(はた)からは、何も分からないものです。
彼は、東京のテレビ局を50代で早期退職しました。
そして、妻との終(つい)の棲家(すみか)の場として選んだのが、
今回の土地だったのです。
自然豊かな秩父地方だったわけですね。
ところが、事態は急変します。
まあ、そのあたりは本書でご覧いただくとして、誰にでもおこりう
るのが、この「介護殺人事件」なんですね。
いかに幸せな日々が続いていたとしても、ある日、突然、起こる。
★★★
京都府で起きた「認知症母殺人事件」というのもありました。
認知症の母親(当時86歳)を介護していた長男(当時54歳)が、
京都市伏見区の桂川(かつらがわ)の遊歩道で、母親の首を絞めて
殺害した事件なんですね。
その直後に自らも命を絶とうとしたのですが、そのときは未遂(み
すい)に終わりました。
でも、逮捕されて有罪判決を受けたその長男が、2014年8月、
琵琶湖で遺体で見つかったと……。
こういう事件は、けっして特別なものじゃないんです。
多くのかたは、まさか自分が「主人公になる」とは思っていなかっ
たわけですね。
このように、「介護する側の辛(つら)さ」は、言葉には表せません。
それなのに、いまの行政には、「介護する人」たちを支援する視点が、
まったく欠けております。
★★★
介護される人のほうばかり見ていますが、在宅介護を進めながら、
こうした「介護する人」への救済策については、どこにもないわけ
ですね。
だから「介護離職」をせざるを得ない。
そして、経済的に困窮する。
生活保護の申請をしても断られる。
その後の対策がどこにもない……わけですね。
いったい、どうすればいいわけです?
じつは、2015年に行われた介護保険の「改定」は、最悪でした。
そうです。
ぼくに言わせれば、史上最悪……とでも言えるような「改定」でした。
いやあ、ここまで政府は、高齢者とその介護者をないがしろにする
ものなのかなあ……と、口をアングリと大きく開けて呆(あき)れ
かえったものです。
そのときの「改定」は、何が問題だったのか、そのあたりも、本書
では述べました。
驚くような「改悪内容」を、ぜひご覧下さい。
★★★
ある介護福祉士がおっしゃるには、自分の働いているグループホー
ムの利用者の半数以上が、「要介護2」だとか。
今回の「改定」では、つまり、人数の多い「要介護2」の人たちを
切り捨てて、おカネを浮かそうという政府の魂胆(こんたん)なわ
けですね。
このやりかた、きわめて卑怯(ひぎょう)じゃありませんか。
そして、2018年にも、「介護保険制度」が変更しました。
今後も、こうした「改定」が続くことでしょう。
でも、ぼくたちは、いまの社会が良くなるまでジッと待つわけには
いきません。
その間に、どんどん人生は進んでしまいますからね。
★★★
それに、はたして社会が良くなる日が本当に来るのかどうか。
人類の歴史を少し振り返りますと、悲しいかな、国民みんなにとっ
て素晴らしい国ができた例は、過去に「1国でさえ」ないわけですね。
人間とは、ひょっとして、こうして闘いながら生きて行くのかもし
れません。
だから、まずぼくたちで可能なことを、今日からぜひ実践したい。
そのために、ぼくたちに必要なことが二つあります。
まずこれさえ可能であるなら、社会がどうなっても、生きられます。
そして、家族を守ることが可能です。
その二つとは何か。
本書を、どうぞ、ご覧下さい。
★目次
★(第1章)
さだまさしさんの歌「秋桜(コスモス)」を聴いていて、もういけ
ません。視界が突然曇ってきました。親子の絆(きづな)とは、本
当に強いものなんですね。ふだん、喧嘩ばかりしていても、突然、
相手を思いやる。それなのにいま、家族の間で……。
★(第2章)
礼儀正しく真面目な人ほど、他人に相談もせず、自分一人で責任を
負っている人が多いような気がします。人には迷惑をかけてはいけ
ない……そう思っている人は、「介護」という自分だけではどうに
もならない現実を前にして、押しつぶされるのかもしれません……
★(第3章)
京都府で起きた「認知症母殺人事件」は、いまの「介護殺人事件」
の典型的なものです。でも、ケアマネ(ケアマネジャー)の、なん
と50%以上の人たちが、こうした在宅介護の介護疲れによる「殺
人事件」を危惧しているわけですね……
★(第4章)
2015年に行われた介護保険の「改定」は、本当に最悪のもので
したが、その問題点を4つ挙げておきます。これこそが、いまの「介
護殺人事件」へとつながっているのでしょうね……
★(第5章)
いま、ぼくたちが「介護殺人事件」を防ぐためにできることは、何
だろう。それには大きく分けて二つあります。寝たきりや認知症に
なるきっかけは、じつは転倒なんですね。だけどそれを防ぐには……
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