著者:斉藤 忠
¥680¥0

◇ 本書は、
 女たちがキリスト教の原型を生んだ。その原動力は“羊の牧者(マグダラ)”の異名をとるイエスの“伴侶”マリアと母マリアとの確執・暗闘にあった。一方は娼婦、一方は神の母とされるが、このギャップは、何ゆえ生じたのか?
 といった命題を掲げて、その立証に挑むものです。

 イエス家の“嫁姑”の確執、暗闘が、イエスの復活、さらにはその肉体を伴う復活、母マリアの処女懐胎といったキリスト教の核を招来させたというのですから、読者の皆さんは驚きでありましょう。
『新約聖書』は、様式史、編集史的に幾つも重なる複雑な構造を持ちますが、その構造を読み解き、史実により近い経過を復元するならば、上記のような意想外な可能性が浮かび上がるのです。

 我が拙論は、信仰に熱心な方々から、妄想に過ぎぬ、根拠が薄弱だ、論証はご都合主義だと誹(そし)られます。しかし、めげずに論理に導かれるがまま論証を進めた次第であります。

◇ 母マリアは、古代末ごろには神の母とされ、中世に入ると息子イエスの救済協働者、果てには天上界の女主人にまで祀(まつ)り上げられ、息子より彼女の像の方が崇拝されるかの様相を呈すに至ります。救世主同然の存在に昇格してしまったのです。教会の母とも異名をとる彼女は、その意味で、キリスト教の守護神と言えます。

 一方のマグダラのマリアは、もともと娼婦であったのが改悛して、まっとうな女性になったとされてきました。ですが、古来イエスの妻だと囁かれ続けてきた不思議な存在です。ことに中世に異端信仰が盛んであった南フランスでは彼女への信仰が盛んで、彼女に捧げられた教会堂は数多く、あろうことか彼女の遺骸さえ伝えられ、毎年7月22日には「マグダラの聖日」が盛大に祝われるほどです。

 ゴルゴタの丘で、イエスの最期を見届けた2人のマリアは、一方が女性として最悪の娼婦だったとされ、ことによると異端派の尊崇対象であり、一方は正統派の守護神となったわけですが、このギャップは尋常ではありません。いったいこの2人の間に、何があったというのでしょうか。
 本書は、その謎を解き、男たちが主導権を握ったキリスト教会により隠され封印されていた真実を復元する長編ノンフィクションです。

 謎解きをとくと堪能していただけたなら、幸いであります。

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◇ 本書は、2007年6月に学習研究社より刊行された紙の本である拙著『封印されたマリアのキリスト教』(絶版)の原稿を基に、10年余を経て、自ら手を加えてデジタル本として、復刻刊行する作品です。

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【章タイトルと小見出し項目リスト】抜粋

第1章 2人のマリアの一方は神の母、もう一方は娼婦
 ◇ もはや聖母マリア教か
 ◇ 正反対の女性
 ◇ 異端の星――マグダラのマリア
 ◇ 尋常ではない2人のギャップ

第2章 2人の虚像のベールを剥(は)いでいくと…
 ◇ どこにも罪深い女と記されていないマグダラのマリア
 ◇ イエスに仕えた女性たち
 ◇ こうして姦淫の女に
 ◇ いずれもこじつけに過ぎず
 ◇ カタリ派はイエスの伴侶と見なした
 ◇ 黒い聖母像の謎

第3章 イエス家と“妻”マリア
 ◇ イエスの死を悼んで泣くのはマグダラのマリアだけ
 ◇ 2人のマリアは嫁と姑
 ◇ 考古学的な妻マリア存在の証拠
 ◇ ダビデの子孫問題とパンテラの子問題

第4章 イエス生前の嫁と姑の確執
 ◇ カペナウムにおける教団の共同生活
 ◇ イエスの活動歴の暦日はユリウス暦換算で幾つも再現できる
 ◇ 教団家政の管理者マリア
 ◇ 男勝りのやもめ母マリア
 ◇ 家を乱す嫁姑の確執
 ◇ 母マリア、息子の強奪を図る
 ◇ 愛妻家イエス、母を疎(うと)んじる
 ◇ 母マリア、バル・ヨセフ家から追い出される

第5章 女たちがキリスト教の原型を作った
 ◇ 嫁姑の確執には宗教が深く絡んでいた
 ◇ マグダラとは羊を牧する牧者
 ◇ 女たちがキリスト教の核を作った
 ◇ 貶(おとし)められた女性指導者たち
 ◇ 7人の女性使徒
 ◇ 妻マリアは神イエスの預言者
 ◇ 嫁が憎ければ息子の宗教も憎い

第6章 異教色に染まる夫イエス
 ◇ 最も小さい者らは神の兄弟たち
 ◇ 神の子らであることを自覚し覚醒せよ
 ◇ 女の解放を謳(うた)う
 ◇ 異教密儀の匂い
 ◇ イエスはシャーマン

第7章 妻マリアがイエスを甦(よみがえ)らせた
 ◇ 仮埋葬と本埋葬の2つの伝承
 ◇ 2つの磔刑シーン
 ◇ 本埋葬から閉め出された妻マリア
 ◇ 恋い焦がれるあまり幻の中に夫の姿を
 ◇ 天上のイエスを見るだけで覚醒に至る、イエス幻視の行

第8章 統治することのなかった幻のイエス王と妃マリア
 ◇ 支配しなかった王イエス
 ◇ ユダヤの賢王イエス
 ◇ 終末は紀元30年4月上旬までに来る予定だった
 ◇ 神の国来臨を神ヤハウェに強要した妻マリア

第9章 原始キリスト教団内における嫁派と姑派の葛藤
 ◇ 並び立つ2つの教団伝承
 ◇ 女たちの作った原始キリスト教団
 ◇ ペテロらを含まない原12使徒のリスト
 ◇ 神学・教義を進化させた嫁と姑の応酬

第10章 妻マリア、原始教団から追放される
 ◇ 貶められた先行教団の指導者
 ◇ 足の効かない物乞に作為されたイエスの兄弟ヤコブ
 ◇ 嫁姑の代理戦争
 ◇ 教団から妻マリアを追放
 ◇ 聖餐式は妻マリア派に対する踏み絵

エピローグ そして、母マリア及びペテロらも追放される
 ◇ 「自由の律法」を説き、イエスへの回帰を説くヤコブ
 ◇ ペテロら母マリア方親族も追放
 ◇ ヤコブ、嫁姑をけんか両成敗とする

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【著者略歴】1957年、埼玉県熊谷市生まれ。
紙の本の著書では『解読された「聖書」とイエスの謎』『イエス・キリストの謎と正体』ほか多数。

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