著者:西村たとえ
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【内容紹介】 結局、僕は四十の男のほうを選んだ。僕が彼に近づき、条件を述べると、彼は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに安堵の笑みを浮かべた。彼が僕に連れられて歩き始めると、ぼろ布が地面にすれるのが目についた。そして、彼が持っていた紙袋がべこべこと音を鳴らした。そうして、いま、彼の目の前には山盛りの茶漬けが置いてあるのである。僕はあえて箸を渡さなかった。そのまま僕が彼の顔を眺めていると、何を勘違いしたのか、彼は茶碗を両手で持って舌でかきこみはじめたのである。泥水を跳ねる自動車の音が部屋に鳴り響いて、そのいくつかの間のうちに、彼は全てをたいらげてしまった。箸はないかと訊かれて、僕は気だるげに彼に箸を差し出すはずだったのに、こういったことをされるのは予想外だった。――本文より 二人のホームレスのうち、十代の男ではなく見かけ四十の老いた男を拾うことに決めた「僕」は、その男と奇妙な同居生活を送ることになる。「僕」は何の為に同居生活を選んだのか、彼は「僕」にとって何の補完になるのか。心のあわいを爪弾くような無遠慮な行動は、読む者に確実な不快感を生んでいく。

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