著者:上杉志朗
ページ数:184
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この本は、大学での2年生以上に配当されている講義「情報社会・倫理論」の教科書として利用することを目的として書かれている。読者として想定しているのは、情報教育の教職課程の一環として受講する初学者や、情報社会、情報倫理について学びたいという学生諸君であるが、この分野に興味があるという方々は、みなさん歓迎したい。 2020年、世界は未曾有のコロナ禍に襲われた。Covid-19と名付けられた、新型コロナウィルスがパンデミックを引き起こしたのだ。新型というのは、これまで人類が遭遇したことがないDNA型を持ったウィルスという意味である。当初から人類が誰も免疫を持っていないことが問題となった。新型なので、感染をした場合に、どんな条件で感染するのか、いったいどの程度の致死率なのか、ウィルスの様子がわからない。この原稿を執筆中にも、世界全体での感染者数は3,260万人を超え、死者数は100万人を超えようとしている(2020年9月末)。世界中の国々でコロナ禍が蔓延する中で、都市封鎖(ロックダウン)をするケースが増え、日本では最初の緊急事態宣言が4月7日から5月6日を期限として発出され、5月25日の全面解除まで続いた。 この間、大学を含め、小学校からの教育がオンラインで実施された。情報通信技術の応用がいきなり実地に試された。教育でのオンライン利用は決して新しいものではない。オンラインでの教材の提供は2008年に英語圏の大学でMOOCが始まり、2013年には日本でJMOOCが始まっているが、それほど普及しているわけではなかった。また、放送大学は1983年に設置されて以来、11万人以上の卒業生を輩出している。通信教育形態の学校は長い間運営されてきた。しかしながら、全国的に全面的にオンライン化が実施されたのは初めてのことである。松山大学は、前期を全面的にオンライン化し、後期も基本的に全面的にオンライン化した。 学校だけではない。緊急事態宣言が発出されていた間、多くの企業、役所はテレワークに移行した。その中で、この期間を通じて、たくさんの課題が浮き上がってきた。その多くが、情報社会とその技術が、日本社会では未だに発展途上であることを浮き彫りにした。 本書では、情報社会における課題と解決に必要な知識や理解を学ぶこと、とくに倫理的側面に配慮した見地を身につけることを目指した。日本のディジタル化を推進する諸賢の一助となれば幸甚である。(本書まえがきより)
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