【無料で読める】天国にいけない蟲

所轄署の福祉犯係の女性刑事・木嶋は、増え続け凶悪化する一方のペド＝小児性愛犯罪者に対して日々無力と絶望を感じ、加えて元夫に対する慰謝料の支払いにも苦しんでいた。
ある日、木嶋は同僚の女性刑事服部から、違法なおとり捜査に加わらないかと誘われる。計画の立案者はやはり福祉犯係の女性刑事・魚於崎で、彼女は違法上等でダークウェブのペド交流サイトに潜入して「自分が生活の面倒をみてやっているシングルマザーの連れ子の4歳男児と、2人きりで過ごす時間」を売りに出していた。
サンプル動画だけで実際には存在しない男児を餌にペドたちからビットコインを巻き上げ、さらに山奥のコテージにおびき出して私刑にかけるという、ある意味いじめっこ中学生的な血の気の多い発想に木嶋は危惧を覚えたものの、たとえ違法かつ束の間であっても本当の正義を実現し生活苦から逃れたいがゆえ、囮作戦に加わる。
過去に男児にイタズラして服役し今は更生している男が経営している西多摩のコテージを借り、「詐欺かもしれないのにそれでも前金の支払いを済ませたサイコ級ペド」たちを一人ずつそこにおびき出す作戦が始まった。
大金を前払いしたからには必ずペドは現れる。そう信じて待つ三人。
そしてついに、最初のペド蟲が現われた。

うまくいけば「一生の思い出となる痛快かつ型破りな勧善懲悪武勇伝」になるはずだった囮作戦は、刑事たちがその存在を知らず想像すらしなかったある人物によって、一匹のヒアリに侵入された家庭菜園のごとく崩壊が始まり、暴力を封じ込めるための暴力はさらなる暴力を生みだしもはや誰にも止められなくなる。
物語の1/3を超えた先には地獄しかない、着地点のまったく読めないクライムサスペンス＆バイオレンス。