著者:石野 蒼
ページ数:77

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ぬいぐるみのぞうパオは、夕日の沈む山をめざして旅に出ることにします。
ひよこのピーちゃん、さるのキッキー、かめのカンちゃん、青いるかのプルン、灰色いるかのポルンもいっしょです。
真夜中にこっそり家を抜け出し、歩き始めると、次々に思いがけない出会いが待っていて………
ぬいぐるみたちの楽しい旅のお話です。

⋆⋆⋆本文より⋆⋆⋆

「やっほーい!」

キッキーは大よろこび。いちもくさんに木のほうへかけて行きました。パオたちは、ゆっくりとこうえんに入りました。

「わあ、池があるよ!」

プルンがさけびました。

「すてき!」

ポルンもさけびました。ふたりはまちきれなくて、ぴょんぴょんしっぽではねていくと、池にポチャンととびこみました。つめたい水の気もちいいことといったら!ふたりはすいすいおよぎました。

「わっ、きみたち、どこから来たの?」

魚たちがびっくりしてたずねます。

「さかの上からよ。」

ポルンがこたえると、魚たちは顔を見あわせました。

「さかの上って、どこだい?」

「さっぱりわからないわ。」

そんなことにはおかまいなしに、プルンとポルンは、池の中をすいすいおよぎまわります。すると、魚たちがあとをついてきて、またたずねます。

「きみたち、かわったかっこうしてるね。なんてしゅるい?」

「ぼくたち、いるかだよ。」

「いるか?!」

魚たちはまたびっくり。

「いるかって、聞いたことあるけど、海にいるんじゃないの?」

「それに、すごくでかいはずだぜ。」

そんなことにはおかまいなしに、プルンとポルンは、池の中をすいすいおよぎまわります。
 
すると、上のほうから、ポチャンという音が聞こえました。ゆらゆらとおよいでくるのはカンちゃんです。

「ああ、これはなかなか気もちいいもんだねえ。」

カンちゃんは、プルンとポルンに言いました。すると、魚たちがカンちゃんをおいかけてきて、たずねます。

「ねえ、きみ、どこから来たんだい?」

「さかの上からだよ。」

カンちゃんがこたえると、魚たちは言いました。

「また、さかの上だってさ。」

「きょうは、おかしなやつばっかり来る日だな。」

そんなことにはおかまいなしに、カンちゃんはゆうゆうと池の中をおよぎます。すると、また、魚たちがおいかけてきて、たずねます。

「ねえ、きみ、なんてしゅるいだい?」

「ぼくはかめだよ。」

カンちゃんがこたえると、魚たちはくちぐちに言いました。

「かめってさ、おれ知ってるけど、ちょっとちがうぜ。」

「そうそう、かめなら、ここにもいるもんね。」

そんなことにはおかまいなしに、カンちゃんはゆうゆうと池の中をおよぎます。すると、魚たちが、ほんもののかめをつれてきて言いました。

「おい、おまえ、うそ言うなよ。これがほんとのかめだぜ。」

すると、カンちゃんは、ほんもののかめにむかって、のんびりと言いました。

「おや、はじめまして。ぼくは、ぬいぐるみのかめなんです。いま、たびをしてるんですよ。」

「ぬいぐるみ?!」

「ぬいぐるみって、なんだ?」

「聞いたこともない!」

魚たちは、がやがやさわぎたてました。でも、カンちゃんは、そんなことにはおかまいなしに、ゆうゆうと池の中をおよぎます。
     
(中略)
 
しばらくすると、パオは水の中に入ってみたくなりました。

「ピーちゃん、ぼくもおよいでみようかな。」

すると、ピーちゃんは言いました。

「こわくないかな。」

「だいじょうぶだよ。きっと。ピーちゃんは、そこでじっとしててよ。」

パオはそう言うと、えいっと池にとびこみました。水しぶきが頭の上まではねあがって、ピーちゃんはびっくりしました。パオはいっしょうけんめい、前足とうしろ足をうごかしました。

すると、ぷかぷか水にうかびながら、すこしずつ前にすすんでいきます。

 水の中では、ボッチャーン!と大きな音が、上のほうから聞こえてきました。見上げると、パオの足が見えます。

「うわあ!またおかしなやつが来たぞ!」

「きょうは、いったいどうなってるんだ?」

魚たちは大さわぎです。プルンとポルンは、あっというまにパオのところまでやってきて、水の上に顔を出しました。

「パオー!気もちいいね!」

プルンが言うと、ポルンも言いました。

「パオ、すごいわ!およげるなんて。」

「うん!ぼくも知らなかった。およげるなんて!」

パオはうれしそうに言いました。

「パオ、すごい!パオ、すごい!」

ピーちゃんも、パオの頭の上で言いました。水の上は、風がすずしくて、とてもいい気もちです。

「おや、パオ、きみも来たのかい。」

カンちゃんがのんびりと顔を出しました。

「うん、ぼく、およげたよ!」

パオが言うと、カンちゃんは言いました。

「そりゃあ、そうさ。ぞうは、大きな川もおよいでわたるんだ。」

「へえー、そうなの?」

みんなはびっくりしました。

すると、そこへ、キッキーが走ってきました。

「おーい!ふしぎなものがいるぜ!来てみなよ。」

⋆⋆⋆⋆⋆

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