著者:戸梶圭太
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 いつの時代のどこの町にも困っている人はたくさんいる。そして困っている人を助けられる人は恐ろしく少ないのが世の常である。
 りんご町民生委員の伴田睦洋は、そんな数少ない、困っている人を助ける人間であった。たとえ愛想が悪く、時には口も悪く、服装はだらしなく、なおかつたいていは無精髭がのびていたとしても。
だが、今や彼自身が困っていた。
 金がないのである。民生委員の仕事は無給である、無給で人を助け続けることにはおのずと限界がある。彼はもう50代半ばに差しかかっていた。
「今度こそ限界だ、もうやめる」
 伴田は引退を決意する。しかし、ただ引退しても先には極貧生活が待つのみ、誰かが退職金をぽんとくれるわけでもない。彼自身で引退後の生活資金を稼ぐしかない。

 4年ぶりに開催される第2回りんご町ほのぼのラップ大会。優勝賞金100万円。
 伴田はそれに懸けることにした。できれば見たくない市井の人々の荒みっぷりや怠惰っぷりやいかがわしいにもほどがある性癖を吐くほど見続けてきた民生委員ゆえ、リリックのネタは山ほどある。それをオリジナルラップに昇華させるのだ。守秘義務などもはやどうでもいい。優勝はすでに射程圏内だ。

彼から話を聞いたヒマ過ぎ女優にして世話好き美人の雲然ともえと、彼女の元夫であるひきこもり音楽家・丸石勝雄は彼を全面サポートすることを誓い、【オペレーション勝利と楽隠居】が動き出した。

ここまで読むとなにやら感動的な話に思えてくるが、そう簡単に物事はシンプルに運ばない。人生には無駄と寄り道とハプニングとおふざけがつきもの。ましてメインサポーターは日々珍事しか起きないというか起こさないともえである。当然ながらこのオペレーションも始動早々に迷走し始めるのであった。
はたして伴田はラップバトルを勝ち抜いて引退生活の資金を獲得できるのか!?

読めば読むほど友達が増えていく『多元宇宙りんご町』シリーズ、いつのまにかもう第5弾! シリーズ最長にして寄り道エピソードも盛りだくさん!
ハプニング連続の暑苦しい狂乱の夏が始まる!

「ラップとはプロのラッパーのものではなく、老若男女かかわらずさまざまにもがきつつ生きる市井の人々のものである」という思いで強引に書ききったコメディ&音楽小説。

【注】本作品はコメディですが毒も多少含まれています。読む人の感性、倫理感、経済状況、過去の経験、心の余裕などにより、まったく笑えないどころか腹が立つこともございます。読者様のご判断でお読みください。

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