著者:松嶋祐子
¥720¥0

 少年鑑別所という名前を聞いたことはありますか?聞いたことがないという方の方が多いのではないでしょうか。では、少年院という名前は聞いたことがありますか?こちらになると聞いたことがある方がずっと増えるのではないでしょうか。

 では少年院とは何をしているところでしょうか?悪いことをした少年が入るところぐらいのイメージはあるかもしれませんが、実際どのような生活をしているのか知っている方となると、ずいぶん少なくなるのではないでしょうか。

 この本は、少年鑑別所に実際に勤務していた経験を持ち、現在は大学で犯罪心理学を専門として教鞭をとっている著者が少年鑑別所についてお話するものです。 少年院に行く少年がほぼ全員通過する施設、それが少年鑑別所です。

 成人の場合ですと、在宅事件でなければ裁判中は拘置所に勾留されていますが、日本には『少年法』という法律があり、非行を犯した少年は成人の犯罪者とは異なる対応がなされます。ちなみに、少年法という名前ですが、男女の少年少女を対象とする法律です。また、2022年4月に民法で成年年齢が引き下げられましたが、少年法についてはこれまでと同様に20歳未満を少年と定義しています。
 
 少年法は、第1条に「少年の健全育成」を掲げています。第1条にはその法律の目的が示されています。この条文をよく読んでみると、どこにも「刑罰」とは書かれていないのです。これが、少年事件は成人の犯罪とは異なる対応がなされる理由です。

 少年法は甘いとたびたび言われます。果たしてそうなのでしょうか。甘いという意見の多くは、懲役何年といった量刑を基準にして考えられているように思います。しかし、少年法が目的としているのは刑罰ではないので、そもそも量刑の長短という物差しで測れるものではないのです。
 
 それでも、凶悪事件を起こした少年が未成年だからという理由で、大人が同じことをした場合より短めの量刑が言い渡されることについては、やはり甘いんじゃないかと思われる方もいると思います。

 しかし、殺人事件は全少年事件のうちわずか0.2%です(令和2年の統計)。

 成人だったら罰金刑になって金銭を支払って終結していただろう事件で、少年だったために少年院送致になり、一定期間施設に収容されるということも起きます。殺人事件の件数の少なさを考えると、こうしたケースの方が多いと思われます。

 さて、この本の目的は法律について説明するものではないので、この辺りで本題に戻します。甘いという意見が出るのは、少年法に基づいて少年がどのように処遇されているか、社会であまり知られていないからではないでしょうか。私はそのような問題意識を持っています。

そこで、まずは非行少年がどのような処遇を受けているのか、実際のところを知っていただきたい。それがこの本の第一の目的になります。

 第二の目的は、心理学的な視点からどのように非行少年を理解しているのかを示すことです。

 少年事件では、事件のことのみならず、家庭や友人のこと、学校や仕事のことをはじめとする、これまでの生活歴が聴かれます。少年鑑別所では、心理検査も実施されます。これは、少年について理解することで、少年が非行に至ってしまった原因を探り、どうすれば再非行をせずに立ち直ることができるかの手掛かりを得るためです。
 
 端的にいうと、私はこうしたことを仕事にしてきたのですが、面接や心理検査などで少年を理解すると一言で言っても、実際のところはなかなかイメージが付かないのではないかと思います。そもそも、犯罪を犯して捕まってきた少年がそんなに素直に話をするのだろうか、といった疑問を抱かれる方もいるかもしれません。

 ですので、この本で、私の個人的な体験の範囲とはなりますが、どんな風に心理の仕事をしてきたのか、具体的なイメージが掴めるようにお話していきたいと思います。

 なお、実際にあったケースの話は本書の中に出てきません。この仕事には守秘義務があり、退職した後も秘密を保持しなければなりません。実在した少年や事件の暴露本ではありません。

 本書の構成は、まず第1章では背景となる少年法や、少年司法の制度のことから始まります。実際のところが知りたいと思われている方にはちょっと堅い話になるので、法律のことばかりで難しいと感じられたら、一旦飛ばして第2章に入っていただいて構いません。第2章では、少年鑑別所とはどういうところで、そこに入所してきた少年はどのような生活を送っているのかのお話をします。そして、第3章以降から、いよいよ面接や心理検査といった心理学的な話に入っていきます。

 第1章 少年司法の概要
 第2章 少年鑑別所
  ~なんでもQ&A その1~
 第3章 司法・犯罪領域の心理臨床の特徴
 第4章 心理検査
 第5章 動機付け面接
  ~なんでもQ&A その2~

それでは、本編の方でよろしくお願いします!

シリーズ一覧

  • 同シリーズの電子書籍はありませんでした。

 

  Kindle Unlimitedは、現在30日間無料体験キャンペーンを行っています!

この期間中は料金が980円→0円となるため、この記事で紹介している電子書籍は、すべてこのKindle Unlimited無料体験で読むことが可能です。

Kindle Unlimited 無料体験に登録する