著者:明石 昇二郎
ページ数:45

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 東京電力福島第一原発事故後の福島県で、がん等の健康被害が発生していないか、全国がん登録をもとに検証し続けているジャーナリストが、これまでの検証報告を本にまとめました。

 全国がん登録の2019年データに目を凝らすと、広島・長崎の被爆者たちの間で増加が確認されているがんと同じ部位のがんが、福島県でも増加していることが判明しました。その検証に使用した元データとともに、一挙公開したのが本書になります。

 ところで、科学者やジャーナリストの中には、全国がん登録データによる点検作業を一切しないまま、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の、
「放射線被曝が直接の原因となるような将来的な健康影響は見られそうにない」
 などとする報告を〝錦の御旗〟のごとく振りかざし、原発事故によるがん発生を頑なに否定しようと試みる人たちがいます。しかしUNSCEARの報告は、事故発生直後の被曝線量調査が福島県などによって阻まれたことが原因で実測値がないため、推定に推定を重ねて書かれたものであり、事実そのものではありません。

 科学者やジャーナリストを名乗り、原発事故によるがん発生をどうしても否定したいのであれば、他人がやった推定報告にばかり頼るのではなく、「事実そのもの」である全国がん登録データを用いて、自らの手で検証するべきでしょう。また、全国がん登録データとは、そのためのデータでもあります。

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