著者:高口 英茂
ページ数:710

¥250¥0

[商品について]
―資本主義を超え、そしてソ連型社会主義を超えるために―
近代資本主義が生みだす社会矛盾に立ち向かう社会運動の流れの中で、「予示的運動」に近いところに立ち異彩を放っていた東大全共闘運動。「ソ連型社会主義」が失敗に終わり、近代資本主義に対峙する新たな運動が模索される中で、今後の社会運動の原理として発展しうる予示的原理を内包していた東大全共闘運動は、今あらためて社会運動の視点から総括されなければならない。全5巻に分けて東大全共闘運動に迫るシリーズ、第3巻の本書は前巻までで考察が不十分であった「経済」をテーマとする。資本主義の歴史から説き起こし、ウォーラーステインの「世界システム」、その源流となったブローデルの「3層構造論」などを紹介しながら、レーニンの『帝国主義』が抱える問題へと踏み込んでゆく。

『社会運動としての東大全共闘』は5分冊となっております。

[目次]
第3章 資本制社会の形成とその発展
第一節 歴史時代の所有と国家を巡る議論(アジア的生産様式論争)
 1.実現すべき革命の性格は反封建革命か反資本主義革命か
講座派・労農派の論争(日本資本主義論争)
混乱の元はコミンテルンの「指導」
「アジア的生産様式」を巡る議論と唯物史観
「アジア的」の記述に使われたマルクスのインドについての認識
中国共産党の中国社会の半封建制規定
農業共同体型生産様式と植民地経営
「生産様式」は資本制的生産様式以外は局在的
近代前の時代は、各種の経済社会政治システム(「ウクラード」)が混在
経済的土台が意識を決定するとする史的唯物論は分析用ツールとして
 2.資本主義の揺籃になった西欧封建制の実像
経済による社会変動は牧歌的だが、実際の社会変動は暴力を用いて具現されている?
古典古代奴隷制もヨーロッパ封建制同様、征服行為がスタート
国王・大領主権力の動向、在地権力の動向、農民の動向から描くヨーロッパ中世
ヨーロッパ中世初期の小農は領主の畑で3日、自分の畑で3日働いている
侵入部族、国王・大領主の仁義なき戦いの一方、修道院の“世襲資産”がじわじわ増大
「“純粋な”封建制」の時代はそう長くあったわけではない
 3.資本主義に移行しなかった中国社会
中国官僚制と近世西欧絶対王政官僚とは異なる存在
儒教は変容しながらも、長らく世俗の唯一の教学として中華文明を形成
皇帝権力が部族型から律令型になる一方、豪族が官僚になった中国古代社会
“多民族統合帝国”へ動き出した宋代
銀を共通通貨とする世界=帝国としての「大元ウルス」の形成
明初の伝統中国の帝国から、中期の海の帝国の明に
宋以来の多民族帝国を完成させた清帝国と世界史の分岐点となったアヘン戦争
ミッチェル報告とマルクスの分析
アジア的生産様式の本家である中国には農業共同体は存在しなかった?
「中世」という時代設定を考える、あるいは農業共同体を考えるなら日本の歴史が最適
世界の「封建制時代」の概要
蛇足ながら、アジア的生産様式は総体的奴隷制であったという論は全面破棄を

第二節 ヨーロッパ資本主義世界=経済の登場(「資本主義」を巡る議論)
 1.資本主義は西欧でなければ誕生しなかったシステムか?
資本主義の定義問題
労働価値説を巡る論争:「マルクスの基本定理」が存立する社会が資本主義社会
利潤率の傾向的低下法則を巡る論争;資本主義社会では労働者は賃金で生きる
資本主義に移行した地域とその時期
資本家天下体制誕生の秘密、資本の本源的蓄積の過程
ジェントルマン資本主義論と非公式帝国論
スウィージーとドップの移行論争
マックス・ウェーバーの「資本主義の精神」は「産業資本主義の精神」
日本経済の資本主義移行と隆盛は特異的ケースなのかどうか
 2.構造としての資本主義(世界システム分析の有効性)
ブローデルの物質生活・市場交換・資本主義の3層構造論
ウォーラーステインの世界システムとしての資本主義論
「中核・周辺・半周辺」の構造と従属理論
世界システム分析への批判と近代世界システムのその後概略
第一次大戦前までの時代における中道リベラリズムの勝利

第三節 自由主義・基本的人権・民主主義・代表制民主主義
 1.消極的自由と積極的自由の相克
西欧自由主義の来歴概要
基本的人権と自由主義思想
マルクスの自由論は「自然的制約からの自由」及び「疎外状態からの自由」
「自由」と環境制約の考察 
マルクス社会主義は全体主義か?
マルクスは「ブルジョワ市民の人権」ではなく「プロレタリアの公民権」を主張
「財産権」を人権として政治から切り離すことに成功したブルジョワ市民革命
 2.民主主義と代表制民主主義の相克
デモス(人々・人民)による統治は人類とともに古くから存在
ルソーの民主主義論;最初の全会一致において現れる集団の「一般意志」が国家をつくる
しかし、「最後の古代人」であるルソーの民主制構想は不採用に
アメリカにおける民主主義はリベラル・デモクラシーに
「代表制」はデモクラシーとは異なる出自を持つまったく別のもの
下層民の民主主義利用の一形態としてのポピュリズムは「人民主義」
レーニンの「プロレタリア民主主義」は考え方の提示にのみに終わる
晩年のエンゲルスは、武装蜂起に慎重になる

第四節 官僚制国民主権の国民経済体と階級闘争
 1.国民国家国民経済体の形成と官僚制
形成期資本主義にとって必須だった国家の存在
前期マルクスの国家論は階級闘争論と結びつけたもの
近代国家はステイティズム国家でその機能は資本主義的生活条件の再生産の持続
官僚群が国民の労働能力・兵士能力を高めて国家の強化を図る
「カニの甲羅」バッシングの日本型ポピュリズム政治
官僚制と政治権力の望ましいあり方を考えるのは現在はまだ不可能
「脱政治化」と「代表的官僚制」
 2.国民経済における「階級」の概念の揺らぎ
官僚労働を軽視したレーニンの政府論
国家権力を少数者が奪権する革命論から多数者革命論に転じたマルクス・エンゲルス
ベルンシュタインの資本主義論を巡る論争
先進国では政治権力掌握のみでは不十分でヘゲモニー闘争が重要に?
日本の社会主義運動における構造改革論
現代は「革命的労働者階級」の不在の時代だが、生産手段のありかたの問題性は持続
国民主権の先進国における階級闘争はコーポラティズムあるいは「多元状態」へ
階級対立を見えなくする志向性を持つ国民主権の国民経済体における階級闘争の未来
マルクス「地代論」の階級闘争論への示唆

第五節 資本主義経済の全球的拡大(「帝国主義の時代」)
 1.「帝国主義」の定義
第一次世界大戦前史
『帝国主義』『国家と革命』『唯物論と経験批判論』によるマルクス・レーニン主義誕生
誕生したばかりのレーニンの社会主義ロシアは現実の世界の厳しさに直面
宇野三段階理論では、帝国主義は第一次大戦までの時代
帝国主義は国民経済体の暴力的膨張政策
「先進国」では、世界的に採用された帝国主義政策
歴史段階論的には新しい段階設定が必要な1970年代以降の世界
帝国と民族(オットー・バウアーの「属人的民族自治論」を中心に)
 2.「帝国主義の時代」の変容としての戦後世界
20世紀における世界システム
ウォーラーステインによって、世界革命として位置付けられた「1968年の学生反乱」
アフター・リベラリズムの時代としての現代

[担当からのコメント]
環境問題や労働問題、貧富の格差など現代の私たちが抱える喫緊の課題の中には、少なからず近代資本主義の矛盾が含まれています。これらの難問を超えるためには今なにが必要なのか、本書はそうした思索をするうえでも示唆に富む内容となっています。ぜひご一読ください。

[著者略歴]
高口英茂(たかぐち ひでしげ)

1945年 北海道帯広市生まれ。1968年 東大全共闘運動参画。1981年(株)クリオ設立、代表取締役。2011年 病を得て離職。2016年『東大全共闘と社会主義』(全5巻)を(株)芙蓉書房出版より刊行。

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