著者:能見 謙太郎
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―また歌の材料ができたでしょう、と妻は言う―
春浅き ひかりの中に 咲く梅の 林に妻の 車椅子押す
パーキンソン病の兆しが見え始めた妻は、以来さまざまな治療・投薬を続けるも、その病状は時と共に少しずつ悪化していく。住み慣れた我が家の解体を見届け、胃がんを摘出し、自身の体力が衰えつつあるのを感じながらも、夫は1日でも妻より長くと願いつつ介護の日々を生きる。彼女への愛情と、わずかな希望を胸に秘めながら――。
平成10年から平成17年までの8年間、病の妻に寄り添いながら折々に詠み発表してきた約800首の歌の中から384首を選び、衒いのない等身大の日常と揺れ動く心の軌跡を描いた介護短歌集。
[目次]
平成十年
妻を連れて
妻と旅する
二人の夏
孫の押しゆく
怠る日々
車椅子押す
妻と遊びて
平成十一年
井山宝福寺
後楽園梅林を妻と巡る
妻に食はしむ
姑(はは)逝く
小豆島に宿りて
ドーパミン欠乏
平成十二年
要介護認定
妻のデイケア
わが歌碑の除幕
平成十三年
バリアフリー改修
家の図面
改築決むる
新薬カバザール
わが家成る
平成十四年
安養寺祈禱
病状悪化
緊急入院
妻の退院
粥を含ます
介護に慣れて
平成十五年
胃瘻閉鎖
妻のリハビリ
スプーン持つ妻
言語戻りし妻
平成十六年
餅食はせやる
ヘルパーもいろいろ
介護テレビ
介護に疲れて
われの胃癌手術
指動く妻
平成十七年
妻の腕
ドライブ
夜中の介護
おしめ温む
あとがき
[出版社からのコメント]
言葉は多ければ伝わるものではなく、少ないからこそ伝わる表現もあるだろうと思います。かたちがないからこそ単純でもあり複雑でもある人の心と、綺麗ごとではない介護という現実から三十一文字の言葉がすくい取る世界を、ぜひ多くの方に味わっていただければ嬉しく思います。
[著者プロフィール]
能見 謙太郎
昭和7年3月 岡山市下石井幸町に生まれる
昭和43年 「アララギ」に入会
平成3年 歌集『機の音』出版
平成9年 歌集『児嶋七年』出版
平成10年 「アララギ」終刊により「青南」に入会
平成12年 歌碑建立(岡山県久米南町笛吹川公園内)
岡山県歌人会事務局長・選者
日本歌人クラブ中国ブロック委員
第25回国民文化祭の短歌大会企画委員
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