著者:久根 淑江
ページ数:142
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友人たちと出掛けた山登りの途中、ハンターに抱かれた子犬との出会いが私とハチとの十七年間にわたる生活の始まりだった。
ハンターの話では、子犬は種族が絶えかかり今は天然記念物に指定されている甲斐犬とのことで、山中で迷っていたので保護したという。
「ちょっと抱かせて……」差し出した私の両腕に飛び移ってきたその動作が愛しくて譲り受け、背中のリュックにしのばせ、その日、私は山登りを続けた。そして夜遅く帰宅すると、ダンボール箱に古布を敷いて仮のねぐらをつくり、その夜は私もその傍で体を横たえた。
しかし、一人暮らしの生活が長かったせいか、一つ屋根の下に他に生き物が一匹いるという現実が私を落着かなくさせ、寝付かれなかった。
翌朝、起き出すと子犬はすでに起きており、朝食の支度を始める私の足元にチョコチョコ付きまとって離れない。出勤時間が迫るなか、子犬にミルクとパンを与え、取りあえず床下に子犬を繋ぎ後ろ髪を引かれる思いで出勤した。
自分ひとりのことだけに関わっていればよかったそれまでの生活が、そんなわけで、その日から一変、朝の散歩に始まり、帰宅すると夕食の支度もそこそこに再び夕方の散歩、戻ると子犬と会話らしきものを交わしながらの食事と、それまで考えもしなかった子犬との生活が、そうして始まった……。
ハンターの話では、子犬は種族が絶えかかり今は天然記念物に指定されている甲斐犬とのことで、山中で迷っていたので保護したという。
「ちょっと抱かせて……」差し出した私の両腕に飛び移ってきたその動作が愛しくて譲り受け、背中のリュックにしのばせ、その日、私は山登りを続けた。そして夜遅く帰宅すると、ダンボール箱に古布を敷いて仮のねぐらをつくり、その夜は私もその傍で体を横たえた。
しかし、一人暮らしの生活が長かったせいか、一つ屋根の下に他に生き物が一匹いるという現実が私を落着かなくさせ、寝付かれなかった。
翌朝、起き出すと子犬はすでに起きており、朝食の支度を始める私の足元にチョコチョコ付きまとって離れない。出勤時間が迫るなか、子犬にミルクとパンを与え、取りあえず床下に子犬を繋ぎ後ろ髪を引かれる思いで出勤した。
自分ひとりのことだけに関わっていればよかったそれまでの生活が、そんなわけで、その日から一変、朝の散歩に始まり、帰宅すると夕食の支度もそこそこに再び夕方の散歩、戻ると子犬と会話らしきものを交わしながらの食事と、それまで考えもしなかった子犬との生活が、そうして始まった……。
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