著者:櫻庭露樹
ページ数:119

¥500¥0

2008年に、モンゴルにある児童保護施設「太陽の子どもたち」を支援する目的で作られた小冊子を完全復刻版として電子書籍にしました。 過酷な環境下で生活していたマンホールチルドレンたちが保護され、 モンゴル ダルハンにある施設『太陽の子どもたち』で生活を共にしていく様子と、 その支援者たちとの深い交流や、健気な子どもたちの成長の軌跡を綴っています。 家族もお金も食べ物も十分になく、「貧しい」はずの彼らが、なぜあんなにも深い優しさと、底抜けの笑顔を持っているのか。 一つ屋根の下で、子供たちがお互いを家族のように想い、助け合って生活し、成長していく様子は、物質的な豊かさが「あたりまえ」になっている僕たちに大切なことを教えてくれました。 今回は電子書籍版の出版記念として、 下記プレゼント企画を実施いたします。 ————— ☆電子書籍版 出版記念 動画プレゼント企画☆ モンゴル児童保護施設「太陽の子どもたち」のリアル動画 2本 (2017年7月 撮影者:櫻庭露樹) ————— この動画で、少しでも彼らの存在を知っていただき その輝く笑顔のワケを考えてもらいたいと思います。 ぜひ、これからも『太陽の子どもたち』を宜しくお願いいたします。 ーーーーーーーーーーー以下本文よりーーーーーーーーーーーーー 【奪い合えば足りぬ、分け合えば余る】 彼らの仕事は、まず朝起きるとすぐに自分のベッドの布団をきれいにたたむんですね。それが終わったら今度は施設の掃除に取り掛かります。 みんな各自が誰に言われるまでもなく、自ら黙々と楽しそうに掃除をしていくわけです。 そんな光景に圧倒されてベッドに腰掛けながら彼らの行動を見ていると、今度は次々に子供たちが挨拶に来るんです。 「おはようございます!」 みんなが、元気よく満面の笑顔で挨拶してくれるんです。 この子たちは一体何者なんだろう、ほんとに親に捨てられマンホールで過ごした子供たちなのであろうか、と考えずにはいられませんでした。 宿泊していた二階から下に降り、則子さんに会ったときに、 「ここの子供たちは凄いですよ」 と言うと、 「そうよ。この子供たちはほんとにすごいのよ、これからもびっくりするわよ」 っと返ってきました。その後、本当に驚くことや感謝することがたくさんありました。 朝食の時間になり、前日の夕方から 何も食べていなかった僕はもう強烈にお腹がすいていたんです。子供達は自給自足の生活をしていて、この日の朝食はモンゴル風のうどんでした。 キッチンに38人の子供達と先生達が集まって、皆で仲良くご飯を食べるんですね 。 一人一人の前にうどんのお腕がまわされ、僕のところにもそれが来ました。 僕ら日本人に対しては、大きなどんぶりでいただいたにも関わらず、僕はものすごくお腹がすいていたので、自分のものを見た瞬間に 「これは全然足りないな。おかわりってあるのかな」 なんて思ったんです 。 そして子供たちのお椀を見るとあまりの小ささにびっくりしたんです。 「この子達すっごい量が少ないな。みんな少食なのかな」 と思いました。特に僕の斜め前に座った女の子は、赤ちゃんが食べるようなお椀に、一口つるっと食べたら終わるようなものすごく少ない量だったので、 「この子お腹でも痛いのかな。病気なのかな」 と思って 「この子こんなに少ないんですけど、大丈夫なんですか」 と通訳の人に聞くと、その女の子に理由を聞いてくれたんですね。すると 「私はこれだけでいいんです。私が食べてしまうと他の人の分がなくなるから、私はこれでいいんです」 そういうんですね。僕はそれを聞いた瞬間に頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。それと同時に、自分がいかにやましいか痛感しました。自分は大きなどんぶりでいただいたんですが、自分のことしか考えていませんでした。 そんな自分の心が非常に恥ずかしくなり、本当に情けなく思えたんですね。 僕は「足りない」と思っているのに、目の前の子供は、笑顔で、 「余れば他の子たちに分けてあげてください」 と。これにはもう本当にやられました 。 『奪い合えば足りぬ 分け合えば余る』 僕は自分のことしか考えてなくて、よこせよこせ、もっとよこせ!の世界にいたんです。 その時、この女の子に問いかけられているような気がしました。 【あなたは奪い合う人ですか 分けあう人ですか】 もう僕は恥ずかしさでいっぱいでした。この子供たちはちょっと普通の子供ではないな、とこの時はっきり確信しました。食事の時も子供達の礼儀正しさに驚きました。 ご飯を食べるときも、彼らは手を合わせ満面の笑顔で 「いただきます」 食べ終わると皆が手を合わせて 「ご馳走様でした」 と言います。そして自分の食べたものを綺麗に片付け、みんなで掃除をする。彼らは自主的にそういうことをするんです。 ご飯が終わった後、子供達へのプレゼント大会が始まりました。 今回来れなかった里親の方たちや、支援いただいてい方たちから、おもちゃや洋服といった様々な子供達へのプレゼントを預かってきていたんです。子供達はそれを非常に楽しみにしているんですね。教室に集まってたくさんのスーツケースを一つずつ分けて、子供たちにプレゼントして行きます。 ここでも僕はすごいカルチャーショックを受けました。子供達は当時洋服を持ってはいるんですが、どこか破れていたり、破れたところを自分たちで縫って着たり、という生活をしていました。僕らが入った時はとにかく洋服が足りないということでたくさん洋服を里親の方がプレゼントしてくれたんです。 スーツケースを開けると子供達の喜びそうな洋服がいっぱい入っていまして、これは取り合いになるだろうな、と思ったんです。 もしこれが日本で、教室に子供達を集めて 「これ欲しい人?」 なんて言えば、みんなが手を挙げて 「はい、はい、はい、はい!!」 って言うはずなんですよ。もしそこに僕がいれば、確実に奪い合いになります。僕はジャイアンみたいな少年でして、 【お前の物は俺の物、俺のものは俺だけのもの】って一番に手を上げて、周りに睨みを利かせて、 「これは俺のものだよな!文句あるか!?」 って間違いなく言います(笑)。 なので子供達も、こんなにかっこいい洋服を見たら、きっと取り合いになるだろうなと思ったんです、、、が、先生が一枚一枚洋服をみんなに見せて、はい、これ、と言うと、子供達は、それを着たら似合うであろう子供を指さすんですね。 「あ、それは〇〇君に」 「あ、それは〇〇ちゃん」 「そのズボンは、〇〇くんが破けてるから〇〇くんに!」 そんな調子なんです。言葉は分からないですけど、彼らのジェスチャーを見ていたらわかるんです。彼らはまず自分以外の仲間のことを思うんですね。しかも誰が何を必要としているかということまで全部知っている。僕は子供達の優しさに泣けてきました。 自分の価値観として、こんな子供達、と言うかこんなに仲間を思いやる心の優しい人間がいるということが自分の中で本当に衝撃でした。 <続く> ーーーーーーーーーーーーーーーー

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