著者:勝鬨美樹
ページ数:90

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僕は「シャブリ」という言葉を聞くと、連想ゲームのように添付した風景を思い浮かべてしまいます。
冬のシャブリ地方の風物です。
畑にランタン/ストーブを並べ葡萄の木を不眠不休で守る人々の姿です。
シャブリ地方は寒い。凍てつく寒い冬の夜は土が凍ります。土が凍れば葡萄の木はひとたまりもない。根から死んでしまいます。もう生き返ることはない。
その寒い冬に打ち勝つために、シャブリ地方の農家は、スランSerein川の両斜面の起伏が激しい葡萄畑にランタン/ストーブを並べて葡萄の木へ夜明けまで暖を与え続けます。寒い冬を我が子を守るように、じっくりと辛抱して弛まざる努力を重ねて越えるのです。
あの、優しい表情の穏やかな人々の心の中に、そんな不撓不屈の魂が潜んでいることに、僕は感動してしまいます。だから、うちの店でシャブリをオーダーしていただいた方には、いつもその話をします。
「シャブリはとても冬寒い地帯なんです。だから農家は葡萄畑にストーブを並べて夜な夜なそれを守り、冬を過ごすンです。冬のシャブリの夜の風景は、まるで有明の海に広がる不知火のようなんです。」
キリリと冷えた若いシャブリを飲みながら、あるいは冷やしすぎていない芳醇な左岸右岸のプルミエ/グランクリュを口にしながら、僕はその幻想的な風景をお客さまに思い浮かべていただきたくて、そんな話をします。
シャブリを表すキーワードは”不撓不屈”・・これです。

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