著者:ハンデウン
ページ数:98

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〝韓隠し〟を指弾し 真実の歴史の復原に
小説日本書紀47用明 用明に百済琳聖太子のイメージ

序言 蘇我氏は倭=沸流百済を飲み込むために派遣された
 前著『小説日本書紀46敏達 敏達は蘇我氏と対立していた』では、仏法を信じず、文章や史学を好んだとあるように、仏教を敬遠していて、崇仏派の蘇我氏とは対立した関係にあったことを明らかにしたのじゃ。
 敏達はまた、任那復興のために、百済から日羅を召還したということじゃが、日羅は仏教的聖人であったことを明らかにし、任那復興という政治目的ではなく、仏教流布という目的、換言すれば、倭=沸流百済を飲み込むために派遣されたであろうことを明らかにしたのじゃ。それは、実際の召喚者は蘇我氏であったことを示唆するのじゃ。
 森博達著『日本書紀の謎を解く』によれば、倭人が担当したのは〈神代紀〉から〈安康紀〉、〈推古・舒明紀〉、〈天武・持統紀〉で、〈雄略紀〉から〈用明・崇峻紀〉までが唐・韓地からの渡来人によって、また、〈皇極紀〉から〈天智紀〉までは別の渡来人によって執筆されたというのじゃ。倭人が担当したものには、〝倭習〟といって、漢文の誤用・奇用が随所に見られるといい、渡来人のものにはそれがほとんどないというのじゃ。
 その倭人は、新羅系山陰王朝に属する旧来の渡来人と沸流百済の渡来人が融合した形のものを意味し、唐・韓地からの渡来人と別の渡来人は、温祚百済からの渡来人のことだと思われるのじゃ。韓地で成長した温祚百済は、唐の影響を受けての漢文素養が身についていたからだと思われるからじゃ。
 この『小説日本書紀』シリーズでは、偽史の元凶である〝韓隠し〟を指弾し、真実の歴史の復原を追求していると自負しているのじゃが、百済系大和王朝が、自らの存在を黒子にして、新羅系山陰王朝に覆いかぶせる形で、自らの存在を悠久の昔から存在していたかのごとく偽装し、〝幻の大和朝廷〟を創出したのじゃ。それが倭=沸流百済を現出したと考えられるのじゃ。
 後世、沸流百済の歴史が抹殺され、倭が日本列島であるとの認識が定着するにつれ、倭=沸流百済が倭としてのみ認識されるようになり、それに伴って、倭が韓地を支配していたという結果だけが残ることになったのじゃ。とんでもない錯覚というほかなく、史実が忘却の彼方に押しやられてしまったのじゃ。
 日本史学界は、歴史に無知あるいは無関心な風潮に付け込んで、〝幻の大和朝廷〟が、当然の法理のように、悠久の昔から存在し、巨大であったかのごとく見せているのじゃが、その根拠となっている〈神武紀〉や欠史8代の記事は、架空の論述であることが指摘されているからじゃ。
 日本史学界は、〝幻の大和朝廷〟論を振りかざして、倭が韓地を支配したかのごとく論述し、そのような偽史を教科書などにも著述し、韓半島侵略の根拠としたことなどは、まさに歴史を歪曲する犯罪行為以外の何物でもないのじゃ。
 戦後日本になって、そうした犯罪行為を少しは反省する時期もあったようじゃが、最近の世相は右傾化しているといい、そうした世相のなかで、偽史が大手を振ってまかり通っている風潮を感じるのじゃ。その最たるものが、植民地政策の反省が心からなされていないことに現れているのじゃ。
 敏達と対立していた蘇我馬子は、自分の娘である堅塩姫と小姉君から生れた王子を大王にするため、いろいろと画策したと思われるのじゃ。それは、個人的な欲望というよりは、倭=沸流百済を飲み込もうとする韓地の温祚百済の意を体得した政治目的によるものだと考えられるのじゃ。
 今回の『小説日本書紀47用明 用明に百済琳聖太子のイメージ』では、用明の実体がどのように浮かび上がってくるのか、追及していきたいのじゃ。
 なお、底本は、宇治谷猛現代訳『日本書紀』じゃ。漢数字は引用文を除いてアラビア数字にしたので了承願いたいのじゃ。〔追〕尊称の尊・命・神などは引用文などやむを得ない場合を除いては省略し、天皇は大王に、皇子は王子に、皇后は正妃に、媛や皇女は姫に、それぞれ表記しているので了承願いたいのじゃ。  2021年4月 ハンデウン
小説日本書紀47用明 用明に百済琳聖太子のイメージ 目次
序言 蘇我氏は倭=沸流百済を飲み込むために派遣された
〈用明紀〉 大略
『古事記〈用明記〉』 大略
用明の即位に蘇我氏の工作
蘇我馬子はアマノヒボコ後裔氏族の息長氏を懐柔
蘇我氏は倭=沸流百済を飲み込むために派遣された
磯城・忍坂・磐余は王城の地であった
崇仏派が蘇我氏=温祚百済で排仏派が沸流百済=倭
丹後の地に逃れた用明の正妃間人姫
間人の里は間人姫が生まれた所
丹後勢力は初期の大和朝廷を樹立した勢力
間人姫の長子が聖徳太子
用明朝に生野長者=百済王族がいた
登美=鳥見=止美は高麗系氏族
聖徳太子の異母弟の麻呂子王子が丹後の鬼を退治
賀茂健角身=味耜高彦根は玖賀耳之御笠と同じイメージ
大王位を窺った穴穂部王子は物部守屋と組む
聖徳太子は物部守屋の誅殺を祈願して四天王寺建立を発願
蘇我馬子に与した頭領ら
用明の時代に国名・村名ともに2字で記す事に定まった?
物部守屋と中臣勝海は排仏派の双璧
豊国法師は韓国(からくに)法師のこと
物部守屋は信濃に逃れたという伝承も
蘇我馬子は敗者の地を接収して仏教を流布
百済から渡来した司馬達等とその子孫は仏教流布に貢献
蘇我氏=温祚百済は仏教を通じて倭=沸流百済を飲み込む
仏教を通じて倭=沸流百済の意識改革を企図
寸=村=触で石寸は磐余のこと
物部氏の没落でニギハヤヒ(饒速日)伝承も風化
倭=沸流百済の建国神である応神の霊は白鳥
蘇我馬子が大王だったという説は極論
物部守屋を呪い倒すという聖徳太子の鬼の言葉
物部守屋は近江の浅井郷に逃れた
物部氏は東北に落ち延びたと伝える唐松神社
周防(山口県)に伝わる用明の伝承
用明と般若姫の周防での伝承
百済聖王の第3子の琳聖太子は周防に上陸
琳聖太子の渡来は推古朝が通説も
琳聖太子は用明の時代にはすでに渡来していた
琳聖太子の母親も周防国に渡来した
〝外国人の神を祀るな〟という〝韓隠し〟
琳聖太子の伝承が非常に多い山口県周辺
結語 物部氏らの敗北により神道=儒教国から仏教国へ転換

用明の即位に蘇我氏の工作

 橘豊日(たちばなのとよひ)こと用明は、欽明の第4子で、母は、蘇我稲目の娘の堅塩姫じゃ。用明は仏法を信じ、神道を尊んだと記されているのじゃ。
 橘豊日という和風諡号のことじゃが、橘に関しては、〈垂仁紀〉に、常世の国から橘をもち帰った田道間守は、アマノヒボコ(天日槍)の子孫とあり、アマノヒボコは福井県は敦賀・気比神宮の祭神であるイササワケと同一神であり、応神の霊だというのじゃ。
 用明の和風諡号が、田道間守と由縁のものであるなら、アマノヒボコの後裔の縁者という可能性も生じてくるのじゃが、橘は、蘇我稲目→馬子→蝦夷→入鹿と続く蘇我王朝の象徴だという説と同様に後考に委ねたいのじゃ。
 用明の前の大王である敏達の長子の押坂彦人大兄王子が太子であったのじゃが、異母弟の用明が敏達の後に即位したのじゃ。その背景には、蘇我氏の工作があったことを窺わせるのじゃ。敏達とその正妃の炊屋姫(推古)、用明とその正妃の穴穂部間人姫は、いずれも欽明を父とする近親なのじゃ。欽明は、蘇我稲目の娘の姉妹をともに妃とし、姉の堅塩姫が用明・推古を生み、妹の小姉君が崇峻を生んでいるのじゃ。
 用明の正妃である穴穂部間人姫の腹に生まれたのが聖徳太子じゃ。用明朝の政治の実権を握ったのは、正妃の弟の泥部(間人)穴穂部部王子だったとされるのじゃが、用明が死ぬと、蘇我馬子が軍隊を動かして穴穂部王子と物部守屋を殺し、穴穂部王子の同母弟の崇峻を大王位に即位させたのじゃ。
 用明が即位した587年に、蘇我馬子らの一派は、政敵物部守屋との間で内乱となり、結局は、物部本家は滅亡したのじゃが、そうしたなか、彦人大兄王も、馬子によって殺された可能性が強いと見られているのじゃ。

結語 物部氏らの敗北により神道=儒教国から仏教国へ転換

 今回の『小説日本書紀47用明 用明に百済琳聖太子のイメージ』では、用明は、熱心な仏教信仰派であるかのごとく論述されているのじゃが、実際は、仏法を信じ、神道を尊んだとあるように、熱心な崇仏派ではなかったことを明らかにしたのじゃ。それは、蘇我氏とは一定の距離を保っていたことを意味するのじゃ。
 蘇我氏は、自分の娘の王子がいずれも、大王に即位する近距離の位置にあるという地位を確保し、当時の朝廷に絶大な影響力があったと思われるのじゃ。それは、韓地の温祚百済の意を体得した蘇我氏の勝利ともいうべきもので、物部氏や中臣氏など倭=沸流百済の有力氏族は。滅亡というに近い状態に陥ったのじゃ。
 欽明の王子である穴穂部王子も、敏達正妃の穴穂部間人姫の実弟であり、大王位を窺える近い位置にあったと思われるのじゃ。その証拠に、穴穂部王子の実弟である泊瀬部王子(崇峻)が大王に即位しているからじゃ。穴穂部王子は、旧来の倭=沸流百済の有力氏族をバックにしたがゆえに、韓地の温祚百済をバックにした新興の蘇我氏に敗北し、消え去ったのじゃ。
 用明は在位2年で死去したということじゃが、用明の伝承が周防国にあることは、驚きというほかないのじゃ。その周防国に、琳聖太子の伝承が色濃く残っていることもさらに驚きの事態なのじゃ。両者は、その周防国で結びつく可能性があるからじゃ。

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