著者:Saaslife
ページ数:100
¥1,250 → ¥0
みなさま、はじめまして。この本を手に取っていただきありがとうございます。筆者のSaaslife(サースライフ)と申します。普段私は都内某所のSaaS会社で勤務しながら、趣味でsaas.lifeというSaaSの企画職、具体的には経営企画・営業企画・プロダクト企画などで働く皆さん向けに日系企業を中心としたSaaS企業のMRR、ARRを中心としたKGI、各種KPI、プロダクトと価格を軸に解説するサイトを運営しています。
なお、SaaS企画職をターゲットとしたサイトとしているのは、私自身が詳細は明言しませんが、東京都内某所のSaaS企業にて企画職として現在働いており、普段から自分自身の企画立案のために、各種上場SaaS企業のIR情報を国内外問わず見ることが多いということが背景にあります。なお、ここで上場SaaS企業と限定しているのは、非上場SaaS企業は財務指標を公開する必要がなく、公開情報の正確性や横並びで各種比較する観点で不便なため扱っていません。このように上場SaaS企業の投資家向け情報を読み込む過程で得られた気づきを2019年ごろから少しづつ配信していたところ、一部のユーザーの皆さんに記事の内容が役に立ったと嬉しい報告を受けることがあり、今回まとめて白書のような形で外観することができれば私自身嬉しかったなと思って本書を上梓するに至りました。
ウェブサイトsaas.lifeを作ったきっかけ
はじめに私がウェブサイトsaas.lifeを運営するに至ったきっかけと、なぜ本書を執筆することになったかをご紹介します。大きな理由は「有価証券報告書・決算説明資料を読んでもSaaS企業は何をしているかがとにかく分かりづらい」という点と「SaaS関連のSNSに上がっている情報はあてにならない」の2つです。それぞれの理由について詳しく述べます。
有価証券報告書・決算説明資料を読んでもSaaS企業は何をしているか分かりづらい
初めに私の考える、有価証券報告書・決算説明資料を読んでもSaaS企業が何をしているか分かりづらい理由について3つ述べます。私が考える3つの理由は、
- toC(一般消費者向け)でないので、普段触って確かめることができないことが多い
- 多くのSaaSが料金表を公開していないことが多い
- 多くのIR(投資家向け情報)で、SaaSの主要KPIを公開していないケースが多い
です。
一つ目の「toC(一般消費者向け)でないので、普段触って確かめることができないことが多い」について述べます。SaaSの各種サービスは、その「ソフトウェアを法人に対して月額課金で提供する」という性質から、法人を前提としたサービスになっており、一般消費者向けでないことが多いです。なお、例えばネットフリックスや各種音楽サービスを中心に、月額課金によってサービスを受けられることが多いですが、本書の定義では、ネットフリックスなどのコンテンツ配信サービスをサブスクリプション、と呼ぶことにし、特に扱いません(これはこれでかなり面白い分野ではあるんですが、本書の性質上Software As A Serviceという語源にはこだわりたい、と思っています)。サブスクリプションサービスであれば、あなた自身が実際に契約して使ってみることができたり、あなたの友人で使っている方もいらっしゃるかもしれません。一方で、法人向けサービスの場合は、利用開始するに当たって契約が必要だったり、さらにはあなたの知り合いも特に利用していないなどの理由でサービスの内容を確かめることが実質的にできないことが多いでしょう。
二つ目の理由「多くのSaaSが料金表を公開していないことが多い」について述べます。多くのSaaS企業が料金表を公開していない(料金を知るためには問い合わせが必要な)ケースがあります。この主要理由はSaaS自身がそのソフトウェアをオンラインでクラウドに載せて提供する、という形式上、常にバージョンアップしているため、料金を固定で公開すると、さらに費用を取得することができる機会を逃してしまうことが挙げられます。さらに、料金の形態上、ある数以上のユーザーだったり、利用機能を使うとさらに課金が行われる形式があるでしょう。加えて、SaaSはその性質上、「独占」ということが起こしづらい市場ではあります。このため、常に競合を意識することが大切となり、場合によっては競合対策の観点から、料金表を公開しないほうが自社にとって有利である、という場合もあるでしょう。以上のような理由により、SaaSの企業各社は料金を公開しないこともあり、これによっていくらのものを提供しているのかが掴みづらく、その価値が比較しづらい、ということが挙げられます。
最後に「多くのIR(投資家向け情報)で、SaaSの主要KPIを公開していないケースが多い」について述べます。詳しくは次の章で解説しますが、SaaSを理解するために、必要な指標が何個かあります。一方で、上場企業に課せられている財務情報の開示義務において、これらの指標公開は義務化されていません。このため、競合対策と同様の理由により、最低限のSaaSKPIについてのみ公開する一方でそれ以外は公開していないケースもたくさんあります。 以上の3つの理由が私の考える、有価証券報告書・決算説明資料を読んでもSaaSのビジネス実態が分かりにくい理由です。
誰に向けて本書を書いたか
ウェブサイトsaas.lifeのコンセプトと同じく、本書はSaaSの企画職に向けて書いています。なぜ本書がSaaSの企画職をターゲットとしているかというと、SaaSは前述の通り、常に顧客に伴走し続ける必要がある性質から、基本的に年中忙しいことが多い業界となっています。そこで、普段私が働いている会社の中での同僚を見渡した際、 直接の競合や自社については詳しく知っているが、他社について全く調べる余裕がない ことを日々感じていました。 そこで、「この白書に使える情報が載ってたよ」という形で同僚に提供できる小冊子を作ることができれば、私が自分自身の調査で調べたことを同僚に還元でき、同僚に対しても役に立つことができるのではないか、もっというと、自社だけでなく他社にも貢献できるのではないかと考えたのが本書執筆の動機になります。
この本で学べること
2021年の第三四半期(7月~9月)の間に新規で上場した日系企業30社のうち、本書で定義するSaaS企業6社(上場日順にラキール、フューチャーリンクネットワーク、モビルス、ユミルリンク、ロボットペイメント、セーフィー)についてその
・定量面KGI(売上高推移)、KPI(MRR、ARPU、契約社数、従業員数)
・定性面(創業の母体、上場にかかった年数)
をグラフや各種資料からの抜粋、本書独自の図表を使ってまとめています。もしもあなたがSaaSの企画職である場合は、他のSaaSがどのような形態を取っているのかを俯瞰することで、企画のヒントを得ることができるでしょう(私にとってもその一助になることを目指して本書を書いています。ぜひコメントで感想を教えてください)。
この本に載っていないことは何か
本書は、SaaSの企画職についている方を主要な想定読者として書いています。従って、題材として扱うのは、あくまで単価・社数などのSaaSを構成する基礎的な情報(情報が非公開なものについては、計算・推計の根拠を述べた上での推定を行う)に留まります。このため、特定のSaaS銘柄について何らかの投資推奨をすることを意図した書籍ではありません。従って、個社の時価総額や株式に関して触れるものではございません。ご了承ください。 また、私自身の信条として、会社経営者の苦労については有価証券報告書や決算説明資料に現れない会社経営にまつわる各種労苦があるはずで、それらを加味せずに無責任な評論・批判をしないということを心がけています。従って、私自身の各社に対する感想も、ニュートラルなものとなっており、もしも特定企業の取り組みを否定するようなものを期待してこの書籍を読まれている場合は、本書ではその要望を満たすことはできません。
対象読者と本書の利用用途
本書は主要読者とその用途として以下の読者/用途を想定しています。
- いわゆるSaaSの企画職と呼ばれる方たち(経営企画・営業企画・プロダクト企画など)が直近IPOをした会社の事例を掴んでいただき、伸びているSaaSの概要を掴んでいただくために
- 今後SaaSによる新規事業を立案/起業したい方がプライシングの相場についての概略を掴んでいただくために
- SaaS企業に転職しようと考えている方がいわゆるSaaS企業の相場観を掴むための参考にしていただくために
さて、前置きがとても長くなってしまいました。前置きはこの辺にして、2021年第さん四半期のSaaS IPO各社のKGI/KPIを深掘りしていきましょう!
シリーズ一覧
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