著者:神谷 栄司
ページ数:225

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[商品について]
――遊びのルールに対する子どもの行為と意識とを実証的に研究し『子どもにおける道徳判断』を著した心理学者は、次の誰でしょうか。
1.フロイト、2.ピアジェ、3.ヴィゴツキー
正解は本書「第4章 遊びにおけるイメージとルールのパラドックス」をご覧ください。
本質的に「遊ぶ存在」である子供たちの中で、いま静かにある現象が生じている。遊びのルールに関わるその現象からは、単なる子供の気まぐれやわがままといった枠を超えた、「勝ち負け」を遊べない現代の子供たちの姿が見えてくる。では「生きづらさ」を感じ始めている子供たちの、この遊びにおける「負」の側面から脱却するにはどうすれば良いのだろうか。本書では子供たちの遊びの現場を調査・記録し、ピアジュ、ヴィゴツキー=スピノザの遊び理論を再考しながら、子ども達の自由で豊かな遊びを取り戻すための道すじを明らかにしてく。

[目次]
はじめに
幼児と小学生の「遊びにくさ」
四つの方法
ピアジェ理論とヴィゴツキー理論
第1章 勝ち負けを遊べない子ども
オニごっこが続かない
わがまま?
負けん気?
負けるのが怖い
「勝ち負け」を遊べない
勝つことにこだわる
大人の介入
消える「ごっこ遊び」
社会性と集団遊び
早期教育
子どものストレス
勉強と競い合い
受験戦争
子どもの心、親知らず
心の中の原風景
第2章 幼児のトラブルと人間関係 ―「荒れ」からの恢復と《イメージの遊び》の可能性―
1 子どもの遊びをめぐる二つのモメント
「現実の勝ち負け」と「虚構場面」が導いたもの
イメージの遊びに関する仮説
2 子どもの遊びと「荒れ」
遊びの競争的要素への過剰反応による「荒れ」―A児の事例から
遊びの変化が誘発する「荒れ」―B児の事例から
3 イメージの遊びによる「荒れ」からの恢復の姿
遊びモデルの実験から
「きんいろのしか」をめぐる冒険
第3章 「発達障害」のある幼児と《イメージの遊び》 ―一年間の保育の流れのなかで―
1 戸惑いの四月
新年度当初の保育の記録より
問題を抱える六人の子どもたち(四月の記録から)
トラブルの連続
要支援の子たちには独自の世界がある
2 模索の保育
一学期
方法を変えてみる
二学期
自由遊び
身ぶり表現
運動会
Aは、絵本室の整理
Bは、おしゃべりタイム
支援の保育者とBの二人での会話
集団ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
3 晩秋の保育
4 劇遊び(三学期)
「ピーターパン」
発表会当日(二月二三日)
5 おわりに
第4章 遊びにおけるイメージとルールのパラドックス
本質への手がかりとしてのパラドックス
遊びのパラドックス
表裏をなすイメージとルール
遊びのルールに関するピアジェとヴィゴツキー
遊びのルールの獲得・実行とルール意識の四段階(ピアジェ)
道徳実在論
ピアジェとデュルケーム
ルールの変更を受け入れる幼児の論理
ヴィゴツキーにおける遊びのルールと生活のルール
二羽のカナリアの唄
第5章 ヴィゴツキー=スピノザ遊び理論の原理的考察
はじめに
イメージの遊び
成熟しつつある過程
ルール
欲求・情動と〈内的ルール〉
最大の抵抗路線
最近接発達領域
おわりに
あとがき
執筆者紹介

[担当からのコメント]
子供は社会の縮図であるとよくいわれますが、その遊びの中にある問題は現代社会が抱える問題の最もシンプルな形であるといえるかも知れません。本書に収められたフィールドワークの記録から何が見えてくるのか、ぜひ手に取ってお確かめください。

[執筆者紹介]
神谷 栄司(かみや えいじ) 編者、第3章、第4章執筆
 
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学の後、大阪千代田短期大学、佛教大学を経て、
現在、京都橘大学人間発達学部教授、博士(人間文化学、滋賀県立大学)

主な著書・翻訳
 『未完のヴィゴツキー理論―甦る心理学のスピノザ』三学出版、2010年
 『保育のためのヴィゴツキー理論』三学出版、2007年
 ヴィゴツキー『情動の理論―心身をめぐるデカルト、スピノザとの対話』共訳、三学出版、2006年

麻生奈央子(あそう なおこ) 第1章執筆

読売新聞社編集局記者を経て、現在、お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科博士後期課程(人間発達科学専攻)に在学中。フリーライターとして、新聞・雑誌に心理学系の記事を掲載。

主な論文
 「潜在・顕在的なロマンティック幻想と結婚満足感」『パーソナリティ研究』第18巻第3号、2010年
 「母親のロマンティック幻想と娘のメディア接触 ―潜在測度と顕在測度を使用して―」『日本社会心理学会第51回大会発表論文集』、2010年

代田盛一郎(だいた せいいちろう) 第2章執筆

大阪市での学童保育指導員、佛教大学大学院社会福祉学研究科修士課程修了を経て、
現在、大阪健康福祉短期大学専任講師

主な論文
「学童保育における遊びとその指導に関する実践研究」大阪健康福祉短期大学紀要『創発』第9号、2010年
「『荒れ』からの恢復における虚構の遊びの可能性―個々の幼児と保育実践の分析」『佛教大学大学院紀要(社会福祉学研究科篇)』第38号、2010年

路端さゆり(みちはた さゆり) 第3章執筆

現在、幼稚園教諭

堀村志をり(ほりむら しをり) 第5章執筆

子どものその、あしたば学園にて幼稚園教諭としての勤務を経て、
現在、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在学中

主な論文
「ヴィゴツキーの遊び論における最近接発達領域―スピノザ哲学からの一考察」『ヴィゴツキー学』第9巻、2008年
「遊びのルールに見るヴィゴツキーの倫理(エチカ)―自由意志概念をめぐるデカルトとスピノザの議論を通じて」『ヴィゴツキー学』別巻第1号、2010年

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